第3話 豹変
その時だ。
頭上に設置されている十二個のモニターのうちの一つが突然激しい動きを見せ始める。
「おや、何だ?」
激しい動きを見せているのは、牢獄内を映し出しているモニターだった。映像でははっきりと分からないが、どうやら一人が横になり、その周りを三人が取り囲んでいるように見える。
「何やってんだあいつら? ちょっと見に行くぞ」
でぶっちょは気怠そうに立ち上がると、そそくさと監視室の外へ飛び出して行った。やれやれ......二人も重い体に鞭を打ち、後に続く。
「ちょっと大丈夫? どうしたっていうの!」
牢獄内での叫び声は廊下へも響き渡っていた。
「おい、何やってんだ!」
「この娘の様子がおかしいのよ。何だかすごい苦しそう」
「何だと?」
看守達は首を伸ばし、横たわるエマの様子を伺った。額には大粒の汗が吹き出し、顔は苦しみで歪んでいる。
これはただ事で無い! 異常な程の苦しみようだ。
「おいどうしたって言うんだ? 何があったんだ?」
「分かんないよ。うとうとしてたらうめき声が聞こえて......何かと思って起きたらこの有様だ。我々も何で苦しみ始めたのか検討がつかない」
山本は正直に有りのままを話した。
「ちょっとお前らは下がってろ!」
でぶっちょは牢獄内の三人にそう叫ぶと、腰にぶら下がった複数の鍵の中から一番大きい鍵を探り出し、鍵穴に差し込んだ。
「おい! 変なマネしたら撃ち殺せ。いいな」
「はいよ!」
マッチ棒は殺気を漲らせながら、銃口を牢獄内の三人に向けた。やがて鉄格子は開かれ、看守達は牢獄内へとなだれ込んだ。
近くで見れば、顔、首、手......露出している全ての皮膚が赤い発疹で覆われているのが分かる。全身から汗が吹き出し、痙攣まで引き起こしている有り様だ。看守は即座にエマの手首を持ち上げ脈を測った。
「脈が弱い。これは本当にまずいぞ!」
マッチ棒は後ろのポケットから手帳を出し、何やら調べ始めた。
「この女......よりによって君島造船の孫娘のドナーだ。他の三人はまだ暫く先だけど、この女は八日後だ。これは参ったな」
君島造船の孫娘!......エマは遠のく意識の中で、確かにその名を聞き取った。
小笠原丸で酔い止めの薬をくれた気のいい老人の顔が思い出される。悪いけどおじいちゃん。それは無理だ......エマは意識が遠のきそうになりながらも、必死になって苦痛に耐え続ける。
看守の三人の焦り方は尋常じゃ無い。揃って顔面蒼白だ。
「この女に何かあったら、全部うちらのせいにされるぞ」
いつの間にやら酔いもすっかり醒めているようだ。
「おい、お前。監視室から担架持って来い! 急げ」
「了解!」
マッチ棒はライフルを手渡し、無言で監視室へと走って行った。そしてすぐに担架を抱えて戻って来る。看守達は前と後ろからエマを持ち上げ、担架に乗せた。




