僕と大祓 巫と九尾
おはこんばんにちは!!
弟者の事が大好きな西です。
連日投稿間に合ってよかった~~
間違いがチョコチョコあるかもしれないけど、ご愛嬌ってことで!
是非楽しんで読んでください
明日も投稿するから見てね!
「なっんでこんなに長いんだよ!!」
七月二十六日の昼過ぎ
最高気温三十五度
つまり猛暑日
そんな日に僕はものすごく長い、まるで天国まで続いているのかと思えてしまうほど長い階段を登りながら、生まれて初めてと思えるほどのありえない階段の長さに湯水のように口から暴言を吐きちらかす。
思い返せば、今まで色んな暴言が出てきた。
「何でこんなところに来たんだよ!!俺!!」
果ては
「俺の声が神谷浩史さんだったらなぁっ!」
なんてものまで出てきた。果ての暴言は、よく思いついたなと一人でニヤニヤしてしまった。
この時、相当階段に生気を持っていかれている事が分かった。
これは何かのの試練なのか?もし、この階段が修行用の物だったとすれば、絶対エレベーターをつけた方がいいと思う!絶対に!!なんなら、今からでも戻りたい。クラーがガンガンに効いた部屋に閉じこもってアイスを食べ、ソファーでゴロゴロしながら、日中にやってるどうでもいいテレビをボ~~~ッと見ていたい!
しかし、止めたいがここまで来たら最後まで行くのが道理だし、あの目的を達成しなければ!
ていうか、ホントに、この階段作ったの誰なんだ!!
責任者はどこだっ!!!
この階段の先にあるのは『凹神社』である。この町の中心の山の上にひっそりと建っている。しかし、何を祭ってるかも何があるのかも全く分からない。この町中を探してもそのことについて知っている人はいないだろう。何故知られていないかはこの奇妙で、読み方がイマイチ分からない名前の神社の唯一と言ってもいいほどの有名所が関係している。今僕が登っている階段だ。この階段は実に一万段を有している。別名は『苦吐階段』。名前の由来は、一万段登っている間に出る小言や愚痴に乗せて苦しみが口から全て出てくるというものである。それを聞いたときは良くできた頓智だなぁと、思った。それが今、皮肉にも作ったヤツの思惑通りになっているのが、もどかしくてならないが、口からはダムが決壊したように暴言が出てくる。暴言で思い出したが、昔、両親と来たことがある、らしい。両親は、元旦に『凹神社』に行ったらしいが、登っている間、やはり暴言が垂れ流しになってしまって、夫婦喧嘩みたいになって険悪な雰囲気になって途中でやめて帰ってしまったらしい。そしてそれ以降訪れることはなかった。僕はその時小学校低学年だったらしいのだが、なぜかそこの記憶だけぽっかりと穴が開いたように、そこだけモンスターの尻尾みたいにバッサリと切り取られたかのように、消えてしまっていた。
結局、なんだかんだでブーブー言いながら最後の段にたどり着いた。
「あぁ、クソっ!」
最後まで暴言だった。
が、どことなく、なんとなくスッキリした気分だ。
ガツンと言って、スッキリ!!
ビールのCМみたいだ。
閑話休題
今日は真夏日で、僕の顔から汗が信じられないほど滴り落ちる。
僕は、それを拭い、顔を上げる。
僕の前には木々でうっそうとしている神社があった。その木々の隙間から零れ落ちてくる光がやけにキラキラ輝いており妖精たちが舞い踊っているかのようである。その中で、巫女姿の大祓 巫が竹ぼうきで石畳をはいている。それらが合わさって幻想的な雰囲気を醸し出しており、大祓 巫の巫女さん姿がその雰囲気の触媒となって、一層幻想的な雰囲気が強く感じられる。
まるで絵画の世界の中に入ってしまったみたいだ。
ん?アイツなんだ?まぁ大丈夫か、、、
この時僕は大祓 巫をジーーっと眺めてしまっていたらしく、大祓 巫がキョトンとした顔をしてこちらを眺めている。
(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)(焦)
顔が一瞬のうちに熱を発し、汗がじわじわと滲み出てくる。別に、女子が嫌いとか女子と話せないとかそんな最近のラノベの主人公じゃあるまいし、話せないことはないのだが、緊張してしまう。こういうことには、もう慣れたが、思春期真っただ中の僕にはこう言う事は、実にやめてほしいところだ。まぁ、僕が悪いのだが。
「、、、、、、猫飼、、、く、、、、ん、、、、?」
語尾に?が付いてはいるが、有名で眉目秀麗な大祓 巫に知ってもらえてるなんて恐縮だ。
「何か御用ですか?」
大祓 巫は高すぎず低すぎずの絶妙なバランスの透き通った声で話す。
今は静かな方の人格か?
「ごめん、景色が綺麗だったから」
我ながら良い言い訳だったと思う。嘘をつかないでいてホントのことを言っている。
まだ、大祓 巫はキョトンとしている。
僕は何がいけなかったか全力で分析してみる。が、何もわからない。
完璧な答えじゃなかったのか、、、
大祓 巫は、「あぁ」と何かを納得したような素振りをする。
「すいません、そっちの方じゃないです」
そう、大祓 巫は、気まずそうに言う。
僕はまた顔が熱をもって赤くなってしまう。
恥ずかしい。
「ただ放浪していただけだ!」
恥ずかしいので、素っ気なく答えてしまった。
また、大祓 巫が不思議そうな顔をする。なんでこいつは急に声を荒らげたのだろうか、情緒不安定なのか?ていうか、放浪してるってなんだ、やばい奴なのか?という顔だ。
「そういう癖なんだ」
「では、掃除を続けても?」
「あぁ、じゃあ僕は本殿の方に行くがいいか?」
「どうぞ」
僕はそんなこと聞かなくてもよかったな、と思いながら石田畳の上ををふらふらっと歩き本殿の方へ歩き始めた。
本殿に向かう過程で大祓 巫の横を通った瞬間。
その瞬間、大祓 巫の目の色が、いや、目、自体が変わった。
アイツ、こんなこと出来んのかっ!
それを視認し、理解する時には、僕は空を仰いでいた。
-数秒前-
大祓 巫が僕の頭を片手で持ち上げ、勢いに任せて僕の頭を石畳にたたきつけて、ドガガガッッ!!!と僕の頭をまるで大根をおろすかのごとく引きずる。
頭に激痛が走る。血は出てないか?何が起きたか分からない。空?
ーそして現在にいたるー
「おい、お主、ワシのこと見えておったじゃろ」
明らかに何かが違う大祓 巫は、僕に馬乗りになってそう言う。
こいつが二つ目の人格だったのか。
「なんのことd、、、っつ!!」
グッ
僕は大祓 巫に首を強く締められ、片手で持ち上げられる。
しかし、僕はその手を掴み拘束を解こうと試みる。
「ワシの問いだけに答えるのじゃ」
大祓 巫は僕をたしなめるように見る。
『~じゃ』って本当に言うんだ。ていうか、これどこかで聞いたような声だな?
「ああ、分かった。分かったから。ヒロインから抜けろ!」
大祓 巫の拘束が思いのほかきつかったため、抜け出すのは半ばあきらめ、手に力を入れるのを止める。
「はっ!人間ごときがワシに命令じゃと?」
大祓 巫がキッと僕を睨みつける。
僕は睨まれ、余りの迫力で少したどたどしくしてしまった。真夏日なのに、冷汗が出る。
「ああ」
僕は覚悟を決めて腹にぐっと力を入れてそう言うと、大祓 巫はニヤッと不気味な笑みを浮かべる。
「昔と変わらんの」
そういった後、大祓 巫は首を絞める手を緩め拘束を解く。
数分振りの地面だった。
解かれたので、首が安全かどうか確かめるため首を擦ったらズキリと痛かった。
「昔?大祓 巫とはほぼ一方的な顔見知りだけど、お前とあったのは初めてだぞ?いつかあったか?」
ほぼ一方的な とか、自分で言ってて空しくなった。
「は?」
大祓 巫が怒りと呆れが混ざったような顔をする。
「お前ここに両親と一緒に来たじゃろ?」
なぜそれを?知っているとしたら、、、
「、、、、地縛霊か」
「ち~が~う~じゃ~ろ!違うじゃろ!!お主が『ワシら』が見えて仕方ないから見えないようにしてやったじゃろ」
こいつ、、、、ネタが古い、、
「いや、申し訳ないが多分、人違いだ」
ギっと大祓 巫がその容姿からは思いもつかない形相で睨んでくる。
風が吹いていないのに木々がザワザワ騒ぎ始める。まるで大祓 巫の感情に合わせて動いているかのように。
「お主ら人間はそんなに『ワシら』に借りを作るのがそんなに嫌か!」
風がゴウッと主人公めがけて吹く。その風で僕は少しよろよろとしてしまう。
「いや、ちょっと待って!」
「人間の言い訳など信用に値しないわ!」
制止するが大祓 巫の怒りはさらに増してしまった。乙女心は難しいな。
大祓 巫が手を前に突き出すとゴゴウッ、とより一層強い風が僕を襲う。頬がピッと風で切れてしまう。
「お前さっき見えないようにしたって言ったよな?じゃあなんで俺はお前が見えるんだ!」
怒った大祓 巫の顔が段々と気まずそうになってきて手を下げるとスウっと風がやんで気持ちのいいそよ風が吹く。
気まずっ!
気まずいので回想。
僕は物心がつくかつかないかの頃から妖怪及び霊が見えてしまう体質だった。見えてしまうだけでなく喋れるし、念が強い奴だったら触れたりもできてしまう。それだけでなく、見た奴の全て(例えば妖怪又は霊になった経緯や名前とか、とにかく全て)が、頭の中にぼんやりと浮かんで分かってしまう。小さい頃はよく何もない空間に独り言をブツブツ言っていたらしい。だが、不幸中の幸いとでも言うべきか、僕はそこまで対人関係を気にしない感じの方なので対人関係は可もなく不可もなくだった。まぁ、周りからは、不思議ちゃん位にしか思われていなかっただろう。話はそれたが、両親とここ『凹神社』に行った後から妖怪や霊の詳細がもの凄くぼんやりにしか分からなくなってしまった。が、今もガッツリ見えてるし、目を細めればすべてが見えてしまう。だから、ちゃんちゃら大祓 巫が言う事はおかしいのだ。ま、僕的には能力が特別なものだとも周りより優れているものだとも思ったことないし、逆に勉強とか映画とか集中したい時に集中できないから、能力が落ち着いてよかったと思っている。
ー回想終了ー
そして、まぁまぁ重要なことなので、このことを知れたのはこの能力のおかげなのだが、先ほどからの大祓 巫の二重人格は僕から見れば大祓 巫が妖怪に乗っ取られているようにしか見えない。
因みに乗っ取っているのは『九尾』だ。乗っ取り始めたのは、目が変わった時からである。乗っ取るの前は、辺りをウロウロしながら、こっちをジーーーっと見たり、ウロウロしたり、まぁ、一言でいうとかかわりたくないやばい奴だった。
因みに、『九尾』は幼女姿だ。しかし、名前通りの立派な狐のしっぽが九本生えている。背は小学生ぐらいだろうか。何故か大祓 巫と同じ巫女姿をしていた。
『九尾』が乗っ取っている時の大祓 巫が言ったように、僕が『九尾』に会ったことは記憶の中ではない『九尾』とは、初対面だ。確かにここに来たはずの記憶が消えているのは不自然だが、記憶がないのはしょうがない。
少し前に歩いていたら酒盛りしていた妖怪たちが『九尾様はすごい』『九尾様すばらしい』等々褒めたたえる言葉が耳に入ってきたので会ってみたいな、と思っていた。が、そんな九尾がこんなしょんぼりしちゃって、、、
「す、、す、すす」
すすす?
「やっぱ無理じゃ!!あんなだったはなたれ小僧に謝るなんて嫌じゃ!!」
どこのツンピュアさんだよ。てか、誰と話してんだよ。
ガックゥッ、と大祓 巫が急にバランスを崩し倒れかけたが右足を前にダンと踏み出して持ちこたえた。それと同時に幼女九尾が大祓 巫の中からスポンと飛び出して顔から地面にぶつかる。
うわぁ痛そうと目をつむりたくなった。
「あ、戻ったな。もしかして、自分で憑依解けるのか?」
「はい、一応巫女ですから」
大祓 巫はケロッとした顔で答える。
巫女特有のスキルみたいなもんか?
「うわっ!」
凹神社の山頂から景色を見ながら食べたら美味しいだろうと主人公が家の冷蔵庫から持ってきたクレープ入りの箱に九尾が顔を突っ込んでいる。その光景はあまりにも異様だった。
「申し訳ございません。うちの九尾様はスイーツがお好きで、その中でも特にクレープがお好きなんです」→『おい!さっきのこと許してやるからワシにそのクレープをよこせ』
「いや、俺は何を許されなきゃいけないんだよ」
『ぐぬぅ、、』
だからどこのツンピュアさんだよ。ていうか、実際にぐぬぅっていう奴いるんだ、妖怪だけど。
『とにかく!それをワシによこせと言っておるだろう!』
何を言っても全く話が進まないこの感じまるで駄々こねる子供と喋ってるみたいだ。
子供は嫌いだ。
「これは俺のだぞ?頼み方g、、」
『いやじゃ~~いやじゃ~~大祓 巫はスイーツなる甘いものを全然買ってきてくれないのじゃ!だから頼む!』
九尾は目に涙を浮かべて僕に懇願する。
キュン
うかつにも、少し、ほんの少し、いやむしろ微塵もないかもしれないが、その微塵の削りカスぐらいはあるかないかぐらいだが可愛いと思ってしまった。
僕は対応に困り、助けてもらうため大祓 巫の方をちらりと見ると、申し訳ないと言わんばかりにぺこりとお辞儀をされた。
「はあ、しょうがないな。半分だぞ」
その後、九尾がスイーツを食べるならあそこだと言い神社の裏から階段を少し下がった開けた場所に僕と大祓 巫を連れていく。
『ほらここじゃ』
九尾に案内されてついた開けた場所には木製のテーブルと二組のベンチがぽつんと置いてあり、どことなく寂しげな雰囲気を出していた。そんな情緒あるテーブルの奥には凹町全体が見渡せる絶景が広がっていた。「っつ、、、!!」
こんなにきれいなところがあったなんてというものといつもの慣れ親しんで、見慣れ、つまらなくなってしまった町がこんなにきれいなんてということに僕は絶句してしまう。
『さあ、早う、供えの儀式を行うのじゃ』
「供え?それって神とか仏とかにやるやつだろ?」
「何でそんなこと知っているのですか?」
ビクッ!
全然喋んないからいなくなっていたと思っていたわ。
「いや、ちょっと知り合いがな」
「知り合い?」
「あぁ」
アイツ今どこにいるのかな、、、
『おい!』
九尾が顔をグイっと近付ける。
「近い近い、顔近い」
僕は九尾を押し戻す。
『なんじゃなんじゃ!ワシを見て照れおったか?思春期か?』
九尾はニヤニヤしながらこちらを見てくる。
「いや、俺幼女趣味無いから」
「そうですよ九尾様。幼女の時代はとっくに終わりました」
いや、何を言っているんだ大祓 巫は。
『まだじゃ!幼女の時代は終わらねぇのじゃ!!』
なに髭だよ。何の悪魔のみ食ったんだよ。
『むき~~~~!!!だったらどんな年頃の女がいいのじゃ!』
地団太地団駄!!(効果音)
「ハイハイ、早く食べましょうね」
大祓 巫が呆れながら、赤ちゃんをあやすように九尾をなだめる
「む、そうじゃな」
納得した!?ば、、、馬鹿だこいつ
主人公が箱を開けると中にはクレープが一個しか入っていなかった。あんなに暴れたのに偶然にも図らずも偶偶適適クレープは無事だった。
『ほれ、早く半分に割れい』
「おお」
仕方ないので九尾の言葉通り、クレープを割ろう。
グッ
クレープに力を入れる。
ヌ~~
クレープ内の生クリームがあふれ出る。
「あ~~~~~」
『あ~~~~~~』
「あ~~~~~~」
僕の手は生クリームでベチャベチャに汚れてしまった。
、、、、、、、、、ザアァァァ
そよ風が吹き、木々が揺れる。僕たちを、憐れんでいるようだった。
『うん、じゃあワシは本殿で休もうかなぁ~~』
すぅ、っと立ちそうになったところを主人公が九尾の腕をガっとつかんで椅子に戻す。
「さあ、儀式を始めよう」
その後も、九尾は無言のまま立ち去ろうとするがこちらも無言のまま腕をつかんで引き戻す。それが数回行われた後、僕は大祓 巫に儀式の方法を教えてもらう。
『儀式は、、、、、』
ゴクリ、、
儀式というほどなのだから大掛かりなものなのだろう。あいつのせいでこう言うオカルトめいた事が気になるようになってしまったんだ。
『大祓 巫伝いにワシにクレープ渡せばいいだけじゃ』
「、、、、、、、は?ほんとか?これ食うの嫌だからって嘘言ってるだろ!」
自分で言って自分で落ち込む
あの時慎重にやってれば。
『はっ!その手があったか!!』
あ、これホントのガチのリアクションだな、これ
「はい」
主人公が大祓 巫にベチャベチャになったクレープを渡そうとするがすごく嫌な顔をされた
「あからさますぎん?」
「あ、出てました?」
フフっと大祓 巫は笑う、がそれをされるとこっちはどんな顔をすればいいか分からなくなっちゃうな
「ンまあ」
「それはそれは」
大祓 巫がにっこりと微笑む
「まあとにかく」
ぐいっと大祓 巫の前にクレープを突き出す
「はぁ」
大祓 巫は深くため息をつく
「まあ、ため息なんてつくなよ。幸せが逃げちゃうぞ」
大祓 巫がその後主人公からベチャベチャになってしまったクレープを受け取る
「では、九尾様」
大祓 巫がそういうとうなだれていた九尾がピシッと姿勢を正す。
『あぁ』
雰囲気が一変し、辺りの温度が少し下がったように思えた。
ゾワゾワ、と身が震え、体中の毛が逆立った。
『《ワシの供物はどれじゃ》』
「《こちらに用意したものでございます》」
呪文?呪詛か?
ヒロインがドチャ、っとまるでごみを捨てるかのように九尾に手渡す。
『う~ん、普通なら嬉しいはずなのに。あんまり嬉しくないの~~』
九尾はまるで海で泳いでたら口の中に砂利が入ったときみたいな顔をする。
バクっともらった時の手のまんまクレープを口に運ぶ。
モクモクモクモク
九尾は喜んでいるのか悔やんでるのか微妙な顔をしながらクレープを租借する。
「んじゃ、俺も」
もう半分のクレープを口に運ぼうとしたとき視界によだれを垂らし物欲しそうな顔をする大祓 巫が映り込んだ
「、、、、欲しい?」
「いえいえ、そのようなことは」
「いや、よだれが垂れてるから」
大祓 巫は少し焦りグイっと垂れたよだれを拭う。
クレープをバッと上にあげると、大祓 巫も顔をバッと上にあげる。
クレープを横にバッと動かすと、大祓 巫も顔を横にバッと横に動かす。
猫かよっ!!
また分けたらさらにベチャベチャになるだろうな、、、
「やるよ」
「いいえ、大丈夫ですので」
「お腹いっぱいだから食べて」
さすがに気づくよな。
今は最悪な雰囲気だ。こういう雰囲気は思春期の僕には天敵と言ってもいいほどだ。今も息苦しくて死んでしまいそうだ。なのでこんな雰囲気を打開すべく僕は全力で雰囲気を変えられるジョークを考える。
「、、、、では、いただきます」
お辞儀をして大祓 巫がクレープをもらう。
「大祓には儀式はいらないよなw」
自分にしては出来たジョークだと思し、これは今僕が言える最高の言葉だった。
「はいそうですね」
だが、大祓 巫はガチガチの敬語で答える。
やはり、乙女心は一手先すら読めない。藤井聡太六段でも読めないだろう。
「プハッ!どんな形してても味は美味しいの」
どうやら九尾は食べ終わったようだ。
「さっき言ったけどお前って神なの?」
『ん~~~~~~なんて言ったら良いんじゃろか』
「私が説明します」
もう食べたの!?
けふっとゲップなのかガス抜けなのかよく分からない事を大祓 巫がする。
え?デジャビュ!?
「九尾様はこの神社の神でありこの凹町の土地神です。ですが、半神です。半神をご存知ですか?」
「いや、聞いたことないな」
大祓 巫が主人公に顔を近付ける。
僕の心臓がテンポよく鼓動を打つ。
「妖怪上がりの神です」
大祓 巫が耳打ちをする。
大祓 巫がチラリと九尾の方を見る。つられて主人公も見てしまう。九尾の表情は少しムスッとしていた。
なんで九尾はムスッとしているのか主人公は分からなかった。
なんでムスッとしてんだ?
「この話をすると九尾様は機嫌を悪くするので」
そういうことだったのか。
妖怪上がりの神『半神』はやはり馬鹿にされたりするのだろうか?
「それでも、九尾様は素晴らしい事をしたんですよね?」
『おお!!そうじゃそうじゃ!周りからはあれこれ言われたがの!全力でやったのじゃ!』
相当苦労したのだろう周りからの罵倒を乗り越えてきたのだろう鬼気がビリビリと感じた。
「何やったの?」
『この町の淵に結界を張り巡らせて怪異がこの町に入れなくしたり、人間側と和解したり色々したんじゃぞ!』
九尾は胸を張ってえばった口ぶりで喋る。
そう、この町は囲まれるようにある山の真ん中に存在している。この不自然な周りの山の出来方にはヒロインに説が色々あるのと同じで、『元々山だったが水蒸気爆発して窪んでしまった説』やふざけたものだと『宇宙人が来て壊した説』まあ、一番有力な説は『隕石が落ちて出来た窪み説』だ。書物があるのだという。隕石が落ちたとうなづける文書と絵が。内容は、『天と地の境がなくなり、世界が闇に包まれたとき神の裁きが下った』みたいな意味の分が達筆で書かれており、その文章の隣に真っ暗な中人々が上を見上げている。その目線の先には不気味に青白く光った球体の物が浮かんでいるそんな絵が描かれていた。だがそこには光る球体が隕石なのかも何なのかも書かれていないが、人間は理解できないものには理解が及ぶ範疇の物に解釈したがるからまあ、仕方ないっちゃ仕方ない。まあ、話はそれたがそういう場所そういう町なのだ。
「ていうか、怪異って何?」
『悪意を持ち人間に害をもたらす妖怪達じゃ』
そんな奴がいたなんて、、、やはり結界のおかげだろうか人間に悪意を向けるの妖怪に会ったことがない。「人間に悪意を向ける妖怪はいないはずです」
「うん、おとなしく過ごしてるな」
確かに、よく見るのは、酒盛りしてるやつらとか、日向ぼっこしてるやつらとかしか見ない。
「さすが九尾様です!」
九尾を煽ててるのが見え見えだ。
『じゃろ!』
ムフフフフフと口をゆるゆるにして九尾は笑う。
やはり九尾はバカだった。
僕はもう一度今いるベンチからの景色を見てはぁ、と軽いため息をつく。
少しだけだが日が暮れてきている。
「じゃ、僕はそろそろお暇するよ」
『おう、そうか、、、?』
九尾が少し寂しそうな顔をする。
よっこいせと僕が腰を少し上げた微妙な体制になった瞬間、『おっ!!』となにか閃いた時のような声を九尾が上げる。その声のせいで耳の奥がキーンとなってしまった
「なんだよ、声デカいな!」
『お前、スマホ持ってるか?』
「いや、何でスイーツは片言なのに、スマホはスラスラ言えるんだ?」
『さっきのは芝居じゃ、そんなのはいいから答えろ』
吐き捨てるように九尾は言う。
「そうか~、、芝居か~~」
!?ムッチャ策士じゃねえか!!
閑話休題
「ああ、持ってるぞ」
僕はポケットの中に入っていたスマートフォンを取り出し、見せつけるようにスマートフォンを手にする。すると、九尾がバッとひったくる様にして僕のスマートフォンを取り上げる。
「あ、おい!」
タプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプタプ
な、何ていう早打ちだ!片手しか使ってないのに、親指が二本、いや、五本あるように見える!!
『ほれ』
九尾が僕のスマートフォンをポイっとこちらに投げ渡す。
「わっ!わわっ!」
急にスマホを投げつけてくるから慌ててワタワタしてしまった。
「お前、この下ちょっとした崖なんだからな!?」
主人公はつい大声を出してしまう。
「はぁ、九尾様、、、」
大祓 巫が落胆するようなそぶりをする。
そうだよな!?こいつ神のくせして全然神っぽくねーもんな?
『ああ、すまんな』
その言葉にはまったく心が入っていなかった。
『まあ、そんなことは置いといて、お主スマホの中見てみよ』
そういわれて主人公はスッ、とスマートフォンの中身を見てみる。
「ほへ?」
口をついて出た声は自分でもびっくりするぐらいとても間抜けなものだった。
「お前これなんだよ!」
スマートフォンの画面の一番右上には得体の知れない気味の悪いアプリがそこにはいた。
『妖怪アプリじゃ』
九尾は真顔でいう。
「いや、それは見りゃ分かるよ」
『あ?なら説明はいいな?』
またも真顔で素っ頓狂な事を言う。
「九尾様しっかりと説明を」
大祓 巫がいう。あくまで厳かで畏まった雰囲気でしかし怒気を持って。
こんな奴に敬語使わなくてもいいだろ。
『全妖怪中の約90%が入っているアプリじゃ。要するに人間界で言う「ライン」じゃよ。それで友達登録した奴は召喚出来るみたいな感じじゃ』
「召喚?そんな便利なことできるわけないだろ」
九尾はニヤニヤとバカにするように笑う。
『出来るんじゃよ中身見てみるのじゃ』
「、、、、、お前これってウィルスとかなんじゃ、、、」
九尾は少しムッとする。
『人間はなぜ信じようとしないのかの』
大祓 巫は主人公にに目配せをした後に、にっこりと笑う。
「分かったよ。やるよ」
そういった後、主人公は妖怪アプリをタップしてみる。
[now loading,,,]
パッと画面が光る。
「眩しっ!」
目がちかちかし終わると画面が見えた。
友達申請欄一、十、百、千、万、十万!!?!?
え、やっぱりウイルスなんじゃ、、、
「こんなに妖怪の友達いないのだが?」
ピコンピコン
『友達がその友達の友達にお主のこと良い奴だから友達になってってその友達の友達に言ったんじゃろ』
??????
「お前わざとだろ」
『何のことじゃ?』
はて?、と九尾は首を傾げる
主人公が大祓 巫の方をちらりと見ると、どこから取り出したか分からない急須と茶碗をテーブルの上に出し一服していた。
僕も飲みたいな。
「で、どう使うんだよ」
『まあ、習うより慣れろで、申請欄にいる誰かと話してみるのじゃ』
僕は九尾の言うとおりに誰かに話しかけようとする。話しかけるんなら知っている奴の方がいいからスライドさせて、知っている奴を探す。
う~~ん、知っている奴は~~
「あ、こいつ懐かし」
『誰じゃ?』
「なまはげだよ」
『いつ、出会ったのじゃ!?』
とても、驚いた様子で九尾が聞いてくる。
ので、昔話をはじめる。
ー回想(小)ー
なまはげとの出会いは小学生の時だった。祖母の家に帰って、夜まですることもないし、歩くことになって、そこらへんの普通の畑沿いの道を歩いていたらなまはげと会った。それで、恐る恐る話しかけた。なまはげの方からである。そのなまはげの見た目は図鑑とかで見るのと一緒で激怒しているような顔していた。そんな顔とは裏腹に実に友好的で話しやすい奴だった。お前みたいに俺を見て逃げないのは初めてだぞ、と褒めてもらったりもした。それで僕らは日が暮れるまで話した後、友情の証に僕が持っていた知恵の輪となまはげがその場で作ってくれたちょっとした札とを交換し、帰宅した。
ー回想終了ー
『お主、、、人脈広いの、、』
九尾が口をあんぐりと開けて、驚愕する。
そんなに驚くことか?てか、妖怪の面識が広いことも人脈が広いって言うんだな。
「まあ、むこうから話しかけてきただけだからな」
『ほれ、追加してしゃべってみるのじゃ』
タプッタプタプタプタプタプタプタプタプ
[久しぶり、元気してる?]
ピコン
「はやっ」
[お前こそ元気してたか?ところで、お前最近おばあちゃん家に帰ってないだろ?ばち当たっちまうぞ]
『なまはげさんは、東北地方の管理者じゃぞ?お主、気づいておらんかもしれんがすごいことじゃぞ!?』
九尾は、驚きを隠せず我を失っているかのようだった。
「そう言われると、なんか照れるな」
『照れる?何故じゃ?』
「何でもねーよ!!」
察しが悪いなっ!こちとら思春期じゃ!
『急に叫ぶでない!うるさいわ!』
『はぁ、お前が来てからワシ叫びっぱなしじゃないかの?』
呆れるように九尾は言う。
僕も心の中で叫びっぱなしだわ。
『まあ、とにかくそこに召喚っていうボタンあるじゃろ?押してみるのじゃ』
パッと目の前が光に包まれる。
『よう』
目を開けると目の前には昔見た懐かしい激怒した顔があった。
『懐かしいな!』
なまはげは主人公の肩をバンバンと強く叩く。
「痛いですよ」
『そうだったか?すまんすまん』
親戚のおじさんと話してるみたいだ、別にいないけど。
なまはげがバッと振り向く。
『おお、お主か。息災か?』
なまはげが振り向いた方には平伏した九尾がそこにいた。
さっきまでの態度は!?
『はい、あなた様から頂いた命によ、、、』
さっきまでの威勢はどこへやら。
『良い良い!そんな堅苦しいことは止さんか!!お前とワシの仲だろう?』
相変わらずその顔は怒っているのに優しいね。
落差が激しいので、『暖簾に腕押し』という感じの言葉がピッタリだ。
『失礼いたしました』
『あ~~、ほらすぐそうなる』
九尾はなまはげにそんな事を言われて戸惑っている。
『お、大祓さん。そのお茶ワシにもくれんか?』
のしのしとテーブルの方へ歩いていく。
いや待て、大祓 巫に何でさん付け?
「おじさん、そのためにご用意していたんですよ」
『毎回思うのだが、お主未来が見えるのか?』
ほんのしばらくの沈黙の後、『ガハハハッ』「フフフフフフ」と、二人が笑い飛ばす。
主人公は何が何だか分からずポカーンとしてしまう。
『なに、ポカーンとしているんだ?こっち来て一緒に茶飲まないのか?』
「飲むよ、丁度のどが渇いてたんだ」
僕は数歩進んでハッと思い出して振り返ってみると九尾はさっきの姿勢のままでいた。
それを見たなまはげが
『おいおい、九尾。だからかしこまるなって』
という。
『いえ、師であり恩人であるなまはげ様の前で、そんな、畏まらないなんて考えられません』
なまはげは少しムッとする。
『おい、九尾こい』
声のトーンが、急激に下がる。声色も楽しげなものから、暗いものへと。空気がぴりつく。
『は、は、は、は、はい!!!!ただいまぁっ!!!!』
九尾は、ダダダダ、とものすごい勢いでテーブルの方へ走っていき、ものすごい勢いでベンチに座る。
その後、僕はゆっくりと座った。座った時にはもう茶碗にお茶が満杯に注がれていた。それを偶然四人全員同時にお茶を啜った。
『はぁ』
コトンとなまはげは茶碗を置く。
もう空!?
九尾は微弱に震えていて、大祓 巫は優雅なティータイムを楽しむ貴婦人みたいだった。
『さっきはすまなかったな、三人とも』
「いえいえ、今回は九尾様が悪いですから」
サバサバしているな。
『いいいえいえ、ななななまはげ様が温まることはないですよっ』
九尾がとてつもなく焦った様子で弁明する。
九尾どもりすぎだろ。温まるってなんだよ謝るじゃないのか?
「意外だな。あんたが怒るなんて」
『おいおい、俺だって怒るよ』
なまはげはそう言うと、ガハハハッ、っと笑い飛ばす。
「ですよね、怒ったら怖いですもんね」
大祓 巫、急に饒舌になったな。
『その話はするなって』
なまはげは少し照れ臭そうにいう。顔は怒っているのに。
実際にはちょっと話したそうみたいな感じに受け取れた。
「昔なんかしたの?」
『ん、まあ、ちょっとな』
少し恥ずかしそうに困ったようにまるで友達から好きな子誰?と聞かれた時みたいになまはげが焦る。
「教えてよ」
『う~~む、じゃあ大祓さんから聞いてくれ。俺から言うと皆ドン引きしてしまうからな』
僕が大祓 巫の方を向くと大祓 巫は話し始める。
ー回想(小)ー
昔、東北には怪異が跋扈していた。怪異たちは最初は農作業の邪魔するなど人間には実害のないことばかりやっていたが、ある日、人間の子供がさらわれてしまった。その時、今までのことなどもあり堪忍袋の緒が切れ、たかが外れたようになまはげは激怒し、その怪異を探し出し、追い詰め、その怪異を一刀両断するとその怪異の腹の中には攫われた子供が入っていた。それを見たなまはげは泣きに泣いた、一日中泣いた。泣き終わると、むくっと立ち上がり東北中のありとあらゆる怪異を殺しまくった。数は何千何万それ以上もいるのにかかわらず一日ですべて殺した。殺している最中はあの時の怒りを薄まらせずにいようという信念から、グッとこらえるような激怒している顔をしていたという。
ー回想終了ー
『それで、今もこんな顔ってわけだよ。あの時の怒りはまだ続いている、怪異が根絶されるまでこの怒りは収まらないし、この顔は戻らないだろうな』
なまはげは周りをキョロキョロと見渡しガハハハッと笑い飛ばす。
『すまんすまん、暗い話しちまったな』
『ズビッ、、、ズビッ』
九尾が泣いていた。しかも、号泣。
「え?」
驚いて声が出てしまう。
『こいつこの話聞くと絶対って言って言っていいほど泣くんだよな』
『いい話過ぎて、、、』
九尾がさらに涙をボロボロと流す
情緒不安定すぎやしないかい?
『む、こんなになっちゃったが、そろそろ、見回りの時間なんだ。じゃあな』
なまはげが来た時みたいにパッと目の前が光に包まれる。
その後スマホがピコンと音を立てたので見てみるとなまはげからメッセージが届いていた。
[また用があったり、もしも万が一にもないと思うがが怪異に襲われたら俺を呼ぶんだぞ]
タプタプタプタプタプタプタプタプ
[オーケー、ありがと]
「あいつ、やっぱり優しいよな」
僕は思わず微笑んでしまう。
『あぁ~~泣いた泣いた』
九尾は涙をぬぐいながら天を仰ぐ。
「九尾様これを」
大祓 巫から差し出されたタオルで顔をふく。
って、それどこから出したの!?
「お前四次元ポケットでも持ってるの?」
「何のことでしょう」
そういう微妙な態度とられるとほんとっぽく思えてしまうから不思議だ。
「いや、何でもない」
僕はもう一度景色を見渡す。
「じゃあ、今度こそ帰らせてもらうからな」
『おう、そうか』
またもや九尾が朝起きたら雨だったみたいな小不幸で少し寂しそうな顔をする。
「じゃあ、階段のところまでですが、お見送りします」
九尾は苦虫を嚙み潰したような顔をする。
だが結局、階段のところまで二人が来てくれた。
「じゃあな」
僕は振り返ってあいさつして、帰ろうとする。
が、大祓 巫が九尾に耳打ちをしている?
「、、、どうした?」
『お、お主、また来ても、、、いや、また来る権利を与えよう!』
九尾は赤面して早口で話す。
大祓 巫がはぁ、っとため息をつく。
「また、いらっしゃってください」
『そうじゃ!また来い!!』
「ツンデレって現実世界だとめんどくさいだけの奴だぞ」
『うるさいわ!』
自覚あるんかい!
「今度来るときはちゃんと三つスイーツ持ってきてやるよ」
僕の言葉に狂喜乱舞する九尾を背に、主人公は階段を下っていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ」
主人公は自宅の前で深いため息をつく。
一気に非日常から、日常に引きはがされたような気がして、アニメの最終回を見た後みたいな虚無感に襲われる。
「歩いて十分で非日常から日常に戻れるなんてな」
しかも、タダで。
ガチャ
僕の自宅の扉が開く。
ブゥーーーーーーン、バンッ!
自宅の前に赤塗りの車が止まる。
「あ、お兄ちゃん」
「おお、弟か」
また日常だ。
バタン
面白かったりしたらブクマください!
明日も投稿するから見てね!




