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 和泉坊ちゃんたちが夕食を食べている部屋の前にたつ。もう覚悟は決めたじゃないか。ハローワークにいく覚悟も決めたし。きっと何とかなる。拳を握りしめてゆっくりドアを開ける。


「たのもーーーーー!!!!」


 中に入ると和泉坊ちゃん含め旦那様の紅葉様啞然としていた。周りの家政婦さんたちも呆然とするなか私は真っ直ぐ和泉坊ちゃんのもとへ向かった。

 そして勢いよく頭を下げた。


「申し訳ございませんませんでした」


 部屋の中を沈黙が支配する。


「・・・なに?僕に雇ってもらうための最後のあがき?」

「違います」


 顔を上げると和泉坊ちゃんは怪訝な顔をしていた。


「和泉坊ちゃんは、本当は怒ってほしかったんですよね」


 膝を床につき坊ちゃんの手を握る。


「本当は普通の子どもみたいに、母親に叱られるみたいに怒られたっかんですよね」


 和泉坊ちゃんは誰も理解してもらえず一人だっただからあんないたずらをしてしまった。


「それでは少し失礼します・・・あんな矢を部屋に仕掛けたらあぶないでしょ!!当たったどうするの!?それにね触ってほしいなら、抱きしめてほしいならいくらでも言いなさい!私はいくらでも抱きしめるから」


「・・・」


 私の顔をみて大きな瞳を揺らす和泉坊ちゃんを抱きしめた。


「私は雇われたいばかりに、和泉坊ちゃんの想いを見ようともしませんでした。本当にすみません。私は他の方の様に紅葉様を、和泉坊ちゃんの大切で大好きなお兄さんのことを悪くなんて言いません。だから信じてください。私にいくらでも寄りかかってください」


 ダラーンとしていた腕は私の背中に回されて微かな泣き声が聞こえてくる。


「今までの、やづらは、ヒック、僕を褒めるだけで、ヒック、兄さんの悪口いって、どんなに兄さんが努力してるかなんて知らないくせに、なのに兄さんも、ヒック、ぼぐの味方してくれなくて」


 背中をポンポンとあやすように叩いていると紅葉様が立ち上がり泣き続ける和泉坊ちゃんもとへやって来ると私ごと抱きしめた。え?なんでわたしごと抱きしめてんの?なんか私まで家族みたいになってんだけど。


「すまなかった和泉」


 紅葉様には離れてほしかったが紅葉様まで泣き初めて、とてもどいてくれといえる雰囲気ではなかったので三人で抱きしめて続けた。チラリと見た旦那様は私たちを見て笑っていた。いや、ここ本来ならあなたの場所だから。


 その後泣き止んだ和泉坊ちゃんに無事サインをもらい私は雇ってもらえることになった。


「今日から千尋だけは僕の部屋入っていいから起こすのも掃除するのも千尋だからね」

「あれ、他の方は・・・」

「和泉は今まで自分と俺いがいの奴が部屋に入るの嫌がってたんだよ」

「明日から僕の世話は全部千尋がやってね」


 すっかり私に気を許して私の腕に甘えるように抱き着く和泉坊ちゃんに雇ってもらった安どと、絶対大変なやつだという冷汗が流れる。


「あ、そうだ。ようこそ滝谷家に」


 こうしてようやく私の就活は終わった。



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