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「なぜですか?」


 一瞬たじろいだがここで引き下がるわけにはいかない。引き下がってしまったら私にはbadendが待っている。


「とにかくあんたはいらない。出てって」

「だけど!「僕の命令聞くって言ったよね?」」


 何も言えなくなりすごすごと部屋を出た。本当に何あの子何が気に入らなかったの?俯き唇を噛む。可愛い女の子ならここで泣いたりするかもしれないが、あいにく私はそんなに可愛くない。あれ?20歳って女の子か?うん女の子!女の子!!セーフ!

 とにかくまずは情報収集だ。さっきも言ったが引き下がるわけにはいかない。なんで今までの人たちはクビになったのか、そのことが分かればまだチャンスはある。夕飯は19時から、今は11時。よしいける!




 とりあえず手当たり次第のお手伝いさんたちに聞いて今までの和泉坊ちゃん専属の家政婦たちについて集まった情報は、

 ・絶対服従だった

 ・とにかく和泉坊ちゃんをほめてた


 ぐらいだしな。でもみんなが口をそろえて言っていたこともあったな。

『和泉坊ちゃんは紅葉様より優秀』

 うーーん、なんだろう何かが引っかかる。みんな和泉坊ちゃんを若干怖がってる風だったきもするし。

 そんなことを思いながら広い屋敷を歩いていると、写真がたくさん飾られた部屋に出た。


「わあ」


 何枚もの家族写真や小さな子どもの写真が飾られていた。


「ん?」


 中央に飾ってある家族写真には男女が一組と子どもが一人写っていた。確かこの家は坊ちゃんが二人だったよな。それなら、何で子どもが一人?


「その写真は和泉が生まれる前の写真だ」


 突然の声に振り向くとそこには旦那様の若い頃はこんな感じだったんだろうなというイケメンがいた。和泉坊ちゃんを呼び捨てにしていることからおそらくこの方がこの家の長男紅葉様なんだろう。


「お、お、おはようございます!」

「おはようって、もうすぐ二時だよ」


 クスクスと笑う顔は優しくどことなく写真に写る女性の面影もあった。いまさらになるがこの家族は美形ぞろいだ。旦那様はもちろん、紅葉様は背が高く黒髪の短髪で全体的に優しそうなイメージがある。紅葉様が旦那様似なのに対して和泉坊ちゃんは奥様似だ。和泉坊ちゃんは髪を伸ばしているのか長い髪は触らなくてもサラサラだとわかる。一見少女の様にも見える姿だが、雰囲気は誰とも似ていない。


「そうですね、すみません。初めまして紅葉様」

「あれ?俺自分の名前言ったっけ?」

「いえ、見た目が旦那様に似ていたのと、和泉坊ちゃんを『和泉』と言っていたので」


 そう話すと紅葉様は少し驚いたような顔をしたあと、また笑顔に戻った。


「さすが和泉の世話役さん、頭が良いね」

「いえ、勘が良いだけです」


 マジで私は勘を頼りに生きてる。勘が良くなかったらとっくにbadendだった。とっさに足を止めて無かったら和泉坊ちゃんの部屋で頭に矢が刺さってたし。


「それに私はまだ雇っていただいてません」

「え?」


 簡単に今の状況を話すと、紅葉様も難しい顔をした。


「父も考えたね。和泉は気分屋だからなー」


 苦笑いを浮かべる紅葉様は考えてたかと思うと急に楽しそうな顔になった。


「今は俺和泉に嫌われてると思うけど、昔はあいつ俺が抱っこしないと泣き止まなかったんだぞ!それからな、初めての言葉は『にー』なんだ。ほんと可愛いよな!!」


 和泉坊ちゃんのことを話す紅葉様は本当に楽しそうで和泉坊ちゃんを心から好きなんだってことがわかった。でも、嫌われてるってどういうことだ?


「何故嫌われてると思うのですか?」


 紅葉様は困った顔をしたあと、ゆっくりと話し始めた。この人ころころ表情変わって面白いな。


「小学校にあがったぐらいから和泉は俺によそよそしいというか・・・」

「なるほど」


 何だ、何でよそよそしくなったんだ?もしかして和泉坊ちゃん専属の家政婦がついた時期と同じだったりして・・・。


「ちなみに和泉坊ちゃんに専属の家政婦がつきはじめたのって・・・」

「あー、たしか和泉が小学校にあがったぐらいか。それまではベビーシッターだったっけ」

「はいビンゴーーーーーー!!!!!!」

「なんだ!?」

「いえ、すみません」


 これ絶対家政婦の人が何か言ったやつだ。それで和泉坊ちゃんの心境に何かあったんだ。紅葉様ならなんで和泉坊ちゃんが家政婦をクビにしたのかわかるかもしれない。


「あの、なんで和泉坊ちゃんは今までの専属の家政婦さんたちをクビにしたんですか?」

「え、今までの人はなんでクビになったかって?」

「そうなんですよ」


 紅葉様はかなり気まずそうな様子になりばつがわるいように顔をそらした。


「俺もよくわからないんだ。ただ一度和泉をその件で怒ったらな・・・泣かれてしまった。声はあげず静かにないて、それからは俺にも無表情になってしまったんだ」

「なるほどありがとうございました」

 そう言って一礼しその場をはなれる。

 もしかしたらだけどわかってしまったかもしれない。和泉坊ちゃんが今までの家政婦さんたちをクビにしたのも、私を雇ってくれないのも、紅葉様によそよそしくなってしまったのも、全部つながってたんだ。

 廊下を歩きながら和泉坊ちゃんのことを考えると心が痛くなる。もし私の考えがあっていたらあの子はずっと苦しんでいたんだ。だとしたら私はなんてことをしてしまったんだ。

 廊下を歩きながら私は自分のやることを決めていた。多分私はここで雇ってもらえないだろうだけど、


「和泉坊ちゃん今度は私があなたをびっくりさせてみせますよ」





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