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「ここが和泉坊ちゃんの部屋だ」

「はい」


 執事らしき人に案内され私が面倒を見ることになった和泉坊ちゃんの部屋の前についた。


「和泉坊ちゃんはとても気まぐれで悪戯っ子だ」

「はい!」


 悪戯っ子かー。室内でも水風船でもくんのかなー。でも今日の夕食の食事会終了までに和泉坊ちゃんにサインもらわなきゃ私の研修期間終わんないしな。いや、クビという形で終わりを迎えるか。まぁ何とかなるでしょう!!相手は子供だ最悪いいくるめば!


「救急箱はここに置いておくからな」

「ちょっと待ってください、え?血でるかんじですか?」

「打ち身や捻挫の場合もある」

「いやいやそうじゃなくて」

「とにかく頑張れ!」


 そういうと執事さんは去っていった。


 頑張れじゃねーよ!!めっちゃ恐いんですけど!何私死ぬの死んじゃうの?

 回れ右をして帰ろうかとも思ったが、逃げたら待っているのは恐ろしい未来。


「ふーーーーーーーー」


 一度大きく息を吐きドアノブに手を置く、どうせここで逃げても恐ろしい未来が待っているなら恐ろしい今を生きよう!


 ノックを数回するが和泉坊ちゃんからの返事はない。しかしドアノブをひねった感じから鍵がかかっている感じではない。

 部屋にいないのか?いやでも鍵開いてるし一応見るだけ見てみるか。部屋の感じから和泉坊ちゃんの好きなものとか分かるかもしれないし!!

「失礼しま!!!!!!」


 私は半分開き直りドアを開け足を部屋に踏み込


 ガシュ


 めなかった。私がくぐろうとしたドア枠の上から勢い良き矢のようなものが落ちてきて私のおでこをかすり、それは床に刺さった。


「・・・は?」


 かすったおでこを触ると僅かに血が出ているのがわかった。完璧にあっけにとられているとパチパチという拍手の音が聞こえてきた。

 音がする方を見るとベッドの上で、胡坐をかいた少年が無表情で拍手をしていた。


「すごいね~。僕の仕掛けをよけるなんて~。」


 その少年はベッドから降りると私の方へ向かってきた。

 意識がだいぶ引き戻されてきたところで、とりあえず言いたいことはたくさんあるが今はこの子に笑みを浮かべて挨拶するのが先だ。第一印象はすっごく大事だし!!


「初めまして、私の名前は・・・」


 近づいてくる少年と同じぐらいの目線にかがみ挨拶をしようとしたが、


「うーーん、角度が悪かったのかな?」


 そういいながら私の目の前でしゃがみ床に刺さる矢を観察し始めた。ポケットからメモ帳とペンを取り出すとスラスラと何かをメモている。


「あのーーー」


 あまりの状況に動けずにいたが何とか声を出すとチラリともこっちを見ずに少年は口を開いた。


「どうせあんた、パパが雇った新しい僕の世話役でしょ。・・・あ、そういえば今回から雇うのに採用試験をやるって言ってたっけ」


 そこまで言うと少年はようやく顔を上げた。


「ねえ、採用試験の内容までは僕知らないんだ。どうせあんたが今持ってる紙になんか関係あるんでしょ。紙に書いてあること読んでよ 」


 なんだこの子どもは、私は子どもは好きだがここまで変わっているというかつかめない子どもは初めてだ。実習でいった学童や保育園ではうまくいったのに、こちらが笑顔を向けてもこの子はピクリとも表情は変わらない。


「・・・ねえ早く読んでくれないかな?それともあんたは字も読めないの?」


 私はその声に慌てて紙を広げた。音読した。


「[わたし滝谷和泉は、大谷千尋を専属の家政婦として認めます。]あとは和泉坊ちゃんのサインが必要です」


「なるほど~、お父さんも考えたね。僕が認めるような人以外は雇わないことにしたのか~」


 そういいながら立つとおそらく和泉坊ちゃんだと思われる少年は私の目を見て笑った。はじめて表情が変わった瞬間だった。


「あ、さすがにもう分かってると思うけど和泉ってぼくね。じゃあ今からいくつか命令ねーー。1、僕の言うことには絶対服従。2、僕の名前は呼ばない。3、僕を怒らない。4、僕に触れない。うーんパッと思いつくのはこんなもんかな。守れる」


 何じゃそりゃ!?こんなの許したらわがまま放題じゃん。絶対ろくな子に育たないよ。でもこれを拒否したらクビなんだろ!?背に腹は代えられない。


「はい」


 精一杯の作り笑顔で和泉坊ちゃんに返事を返すと、さっきまで笑顔だった和泉坊ちゃんの顔はみるみる無表情、いやまるで私を見下しているような顔になった。




「・・・絶対サインしない。あんた雇いたくない」




 そう冷たく吐き捨てた。







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