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「デカ!」
私は今日から住み込みで働かせていただく家の門を前に思わず尻込みをする。
え?何このデカイ家は?
と言うかこんなデカイ家なのに家政婦どんどん辞めるって、これ私1人で掃除とかするの?流石に無理だぞ。
しかし私に逃げ場などない!意を決してチャイムが鳴ると男の人の声がした。
「すみません大谷です。あの〜、新しい家政婦として「ああ新しい和泉坊ちゃんの生けに、じゃなくて家政婦さんですか」・・・」
今生け贄って言わなかった?
大きな門が開き中に通されるとおそらく同僚になるであろう方々がちらほらいた。あれ?普通に家政婦いる。
私が通されたのは部屋には穏やかな顔をした。初老の男性が座っていた。
「下がってくれ」
「失礼いたします」
そう言うと私をここまで案内した男性は下がり私と初老の男性の二人きりになった。
男性は一度下を向くと口を開いた。
「かけたまえ」
「失礼します」
これは明らかに上質なものだとわかる椅子に腰をかけ、内心そのふわふわ具合を楽しんでしまう。
「・・・大谷君を雇いたいのはね、子供たちのためなんだよ」
「はい?」
突然始まった話しに間抜けな声が出てしまった。
「うちの家内はね2人目の子供和泉を産んだときに死んでしまったんだ。僕はね、ずっとそのことから目をそらしてきた。それと同時に年々育つうちにどんどん家内に似ていく和泉からも目をそらしていた。あの子はね親の贔屓目を無しにしてもとても賢いだから私が自分を避けていることに気づいていたんだろうね。あるとき長男の紅葉に言われたよ『和泉をもっと見てやれ』と、それから和泉を少しずつ見るようになっていった。だけどね、親の愛を知らないあの子は人一倍愛情に臆病になってしまった。きっと私ではもう無理だろう、だから誰か和泉の心の壁を壊すような人を探していてね」
要するにこのオッさん兼私の雇い主は自分の失敗した育児を家政婦に押し付けたいのね。
はいはいハイハイ、綺麗事わらえるー。
今でも子どものこと見れてないやつでしょ。
ニコニコと話しを笑顔で聴きながら内心では超毒を吐いてます。
「和泉は何かが不満なようで次々と和泉専属の家政婦を辞めさせてね、ひどい時には自分の部屋にすら入れないぐらいなんだよ」
え?何それ?そこまで酷いって聞いてない!!
しかもこの流れって、
「そこで大谷君に試験だ、ここに紙がある。そこに和泉のサインをもらってきてもらおう」
ですよねーーーー!!!!!
なんか試験くると思ったーーーー!!!!!!
「でも試験があるなんて「時間は今日の19時、僕と紅葉、和泉がそろう夕食が終わるまでだ」・・・はい」
旦那様の威圧を込めた笑顔、恐いっす。