成果と天才
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次の日、カナエは訓練が行われる闘技場へと足早に向かっていた。
昨夜――否、先程まで団長の身動きを封じていた新魔法『魔波』の発動率の向上と解除法の模索のため、訓練が始まる前に少々自主練をしておこうと考えたためだ。
「よーし、頑張ろーっと!」
だが、魔法を受けてくれる人がそもそもいない。ならこれまで誰で練習していたのか。
それは――
「お待たせっす!」
「おはよう、悠貴。今日もよろしく、かませ犬役」
「なんか釈然としないし使い方違うと思うんっすけど!?」
カナエが珍しくからかう相手の名前は蒼士 悠貴。名前の通り愛と勇気とカナエだけが友達ないじられキャラだ。
未だに扱いが納得いかないのか、眉根を寄せてカナエを睨んでいる。
そんな悠貴を無視して、カナエは早速魔力を練り上げる。が、
「無視っすか!?酷くないっすか!?」
喋ってないと落ち着かないような性分らしい。
カナエは苦笑を浮かべつつ、一点に込めた魔力を放出する。
本来なら、その瞬間身動きが取れなくなり、その場で静止状態になるはずだが・・・。
「うおっわ!?」
「あれー?」
とてつもない衝撃をくらい、悠貴は弧を描かずに一直線にぶっ飛んだ。
常人ならこれで死ぬだろうと思わせるほどだ。
だが、異世界召喚された人間の1人である悠貴は目の前に近づく壁の前で身体の体制を立て直し、壁に足を向けて何事も無かったように壁に着地した。
「あー、ドンマイ!」
「謝意を向けるとかは考えないんっすか!?」
カナエがこの男の前でははキャラが狂う、と自分で考える程だった。
「それにしても、今のも魔法として使えそうだ...」
「その華麗な無視もういっそ感心っすよ!?」
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「お前達!!
昨夜、叶が私の元に新しい魔法を見せに来た!!!
とても素晴らしい出来だった!!
おかげで私は眠れていない!!」
訓練が始まり、目の下にクマが出来ている団長の発した言葉はそれだった。
やめてくれ! と思ったが時既に遅く、カナエの元にとてつもない量の視線が集まった。
その視線の一部には、「この無能が?」と訴えかけてくる敵意が宿っていた。
苦笑いするしか選択肢がなく、苦笑するカナエ。
そんな中、訓練は今日も始まった。
今日の訓練は火属性の初級魔法『ファイアーボール』だった。
カナエは適正こそないが、火が一番好きだった。理由は扱いやすいとか、威力が高いとか、そんなものではなく、ただ、何となくカッコいいと無意識のうちに錯覚しているだけだ。
カナエは適性がゼロなため、他の人より魔力消費量が多い。
それにカナエは魔力も高いことは無かった。
異世界召喚から8日、頑張った。おそらく誰よりも頑張ったが、カナエのステータスは――
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桐ケ谷叶:職業《???》Lv.6
筋力:205
魔力:125
俊敏:145
体力:150
魔耐:90
物耐:90
スキル:『「固有」捕食融合』『言語理解』
『魔力感知』
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変化という変化があまりなかった。
あまりに成長が小さいからほかの人はどうか...と1度は考えたものの、周りが急成長を遂げていると立ち直れなくなるかもと危惧し、誰のも見ていない。
カナエが詠唱をし、魔法を発動する。
勢いよくとても、とっても小さなピンポン玉の様な火の玉が速さだけは一丁前に飛んでいった。
それを見ていた針也が高笑いしながら「やっぱ無能か!きゃはは!」
とだけいって爆の方へと過ぎ去って行った。
爆の適性は火、水、闇の3つだ。
とてつもない才能だ。と国お抱えの魔法師が噂するほどだったが、爆自身は魔法より、剣の方が好ましく、魔法の訓練に力を入れてなかった。
模擬戦闘以来、爆はカナエに対しあまり話しかけなくなった。
彼が何を考えているか分からないが、僕は突き進むだけだ、とカナエはあまり気にしていない様子だ。
「ファイヤーウォール!!」
突如として響く声に、カナエだけでなく、周りの全ての人がその声の主を見た。
その魔法名は、火の上級魔法を指すからだ。
その優しい声を持つ、イケメン――桐ケ谷奏はとてつもない魔力を練り上げ、空気の流れを変動させるほどの力が集まり、膨大な火――否、炎の壁が現れた。
その壁は奏により操ることが可能で、すべてを焼き払う情景を思わず想像してしまうほどだった。
奏は全属性に適性を持っている。
彼の初期ステータスはこうだった。
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主人公の兄:職業《革命師》Lv.1
筋力:430
魔力:380
俊敏:375
体力:500
魔耐:500
物耐:500
スキル:『王』『革命家』『神代の加護』
『全属性適性』『全属性耐性』
『言語理解』
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国お抱えの魔法師でさえ、顔色を変え化け物だの一言だった。
こんな逸材は初めてだ、と誰もが口にした。
スキルの『王』『革命家』『全属性適性』『全属性耐性』。
職業の『革命師』。
ステータス。
どれも人の域を超えているらしい。
そして『神代の加護』は神が認めた者にしか与えないと伝えられる失われていた古代のスキルとの事だ。
個体値の異常な魔族でさえ1人で対応できる程だという。
そんな化け物級の兄、奏は魔法を解いた。
そして――柔らかな表情を浮かべ、革命師――基、死神は笑った。
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