ステータス
1.2.3話の方向修正を昨日の夕方6時位に行いました。
すみませんが、読み直して頂いた方が話がわかりやすいと思います。
本当に申し訳ありません。すみません!
なう(2017/12/18 17:12:58)
翌日、早朝からカナエ達は闘技場に集められた。
この世界には時間という概念がないらしいが、今がとてつもなく早いというのは身体の重さからわかる。
現にカナエの周りのほとんどの人が眠そうにしている。
(...はは...僕はこのくらいの時間には毎日起きて稽古してたからな...)
全員が集まると生徒は学年ごとに分けられ、3列の大行列ができた。
「ちゅぅぅうううもぉぉおおおく!!!!!!!!」
すると、向かい側にいた王宮騎士団のセンターに居た1人のごつい甲冑を身にまとった覇気がある顔立ちの男が図太い声で注目するよう指示をした。
あまりの声のデカさに先程まで眠そうにしていた人達は見事にそろってビクッとし、目を覚ました。
「私の名はグリシャ・ランドルフ!!
王宮騎士団の団長だ!
宜しく頼む!!!
これからお前達には稽古をしてもらうんだが!!その前に!!!ステータスカードを発行する!!!!名前の通りステータスを数値化してくれる代物だ!!!!!!
アーティファクトの1種だ!!
自分の順番が来たら目の前にある水晶の様なものに手をかざし、自分の名を名乗り、アクティベートと言え!!!
表示の説明は後でする!!!
それでは先頭から始めろ!!」
カナエが熱い人だなぁと苦笑いをする。
(まぁ、喋りやすくていいんだけども...)
10分ほどでカナエの順番が来た。前の人達が行っていたようにカナエも真似をし、手をかざして名前を言ってアクティベートと唱える。
すると、水晶の様なものが幻想的な色になり、輝き出す。
そして、光がプゥアンッと爆発したような音を出して飛散するとそこにカードが現れた。
カナエは自分の名前が書かれたカードを手に取り内容を見る。
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桐ケ谷叶:職業《???》Lv.1
筋力:150
魔力:90
俊敏:115
体力:105
魔耐:85
物耐:80
スキル:『「固有」捕食融合』『言語理解』
『魔力感知』
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スマートフォン程の大きさのカードにはこの様に記載されていた。
(...うわぁ...すごいな、ホントに数値化している...てか、何でこんなわけのわからない字が読めるんだろう...)
カナエはまず、数値を読みそしてスキルを見た。
(知らない言語を読めていたのは言語理解のおかげか!
周りの人も読めてるみたいだし、最低限のスキルなんだろう...)
そして、カナエは固有スキルと、職業を記された欄を見る。
(...職業...ないの?
...いや、後で設定するのかもしれないし...。
それにしてもこの固有スキルって何なんだ?
捕食って...何食べるの...?)
カナエが1人で頭を抱えて悩んでいると、優愛がニマニマした顔でカナエの元に来た。
「叶ー!ステータスどんな感じ~?」
そう言われたので互いのカードを交換して見せ合った。
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清水優愛:職業《白魔道士》Lv.1
筋力:55
魔力:380
俊敏:60
体力:60
魔耐:370
物耐:255
スキル:『回復強化』『治癒神の加護』『言語理解』
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カナエは言いたいことが2つ出てきた。
...1つ、職業欄に職業が記されている。
...2つ、魔力と魔耐が異常に高い。
(...え?...なにかの間違いかな?)
そう思い、数少ない友達である羽山翔のステータスを見ると、職業があり、俊敏が280もあった。彼は陸上部だった。
彼は、垂れ目で、その人の良さそうな顔で、相談に乗るのがうまい、カナエの中学時代からの友達だ。
2年前の悲劇の内容も知っている。
翔はカナエのステータスを見るとカナエに申し訳なさそうに、
「あ...叶?気にすんなよ?」
「そ、そうだよ!叶!」
苦笑いをしながら、2人の気遣いを快く受け入れる。
(...でもその優しさが今は辛いよ!)
「お前達!!
今から説明するぞ!!よく聞け!
まず、職業だが、それは天職がそのまま職業として記されている!誰もが1つは天職を持っているから空欄は無いはずだ!
そして、ステータス!それはあくまでも表面的なものだ!ステータスが高くても何が起こるかわからん!!!
気を抜くなよ!!
そして、スキルだ!
言語理解は全員が持っているはずだ!
それを入れて大体2、3個あるはずだ!
そして稀に!『固有スキル』を持っているものがいる!!
それはその人だけのスキルだ!!
他の人にはない!!
持っているやつは世界に1%もいないだろう!!」
そう聞くと、カナエは不思議に思った。
職業が無いのだから。
後で団長に質問しよう、と思うカナエ。
そして、ステータスは表面的なものだと聞き、少しホッとして、『固有スキル』の希少性を知ったカナエはとても嬉しい気持ちになった。
(...これも報告!)
「そしてレベルだが、それはそいつの成長限界にどれだけ近づいたかを表している!MAXが100だ!ステータスが上がる事によってレベルが上がる!!
ステータスは日々の特訓でも上がる!!
努力すればするほど上がるもんだ!!
私は努力する奴は大好きだ!
お前達!頑張れよ!!
そして、レベルが上がることでスキルポイントが手に入る!
それをスキルに振分けするとスキルの性能が上がる!!!」
(なるほど...努力すればするほど上がる...か。
この世界は元の世界より複雑じゃなくていいな...)
何故か悲しい顔をするカナエ。
「そうだ!ステータスについてだが、普通、平均は80前後だ!まぁ、お前達はそれより高いだろうがな!
それと、お前達がいた世界での身体能力、動体視力、反射神経などが1とするとこの世界では5、6くらいのもんだ!!
ざっと5、6倍という事だ!」
なるほどな、とその場のほぼ全員が頷く。
この世界に来てから身体がとても軽く感じるからだろう。
ステータスに突出した物がないカナエですら感じることができるのだから...いや、動体視力などは数値化されて無いからそのまま5、6倍したものか...とカナエは顎に手を当てて深く考察する。
すると、優愛はカナエがまだ落ち込んでると思ったのかカナエを元気づけようとしている。が、
「か、カナエ!ほら、私運動系しょぼいよ!
カナエは全部平均超してて凄いなぁ!
それに固有スキル!あるの凄いなぁ!!」
(...能力が無くても数値以外の部分で対応できるかもしれないな...)
優愛の声はカナエに届かなかった...。
それに優愛が頬を膨らましてムスっとする。
それを見て翔は苦笑いをするという、微笑ましい光景だ。
が、そこに天野が来て、
「なぁ桐ケ谷~?
お前、元気ないけどどうしたァ?
もしかして、雑魚かぁ~?ギャハハ!
なぁ?ステータス見せてみろよ」
(...はぁ。断っても見せろって言うだろうし...)
カナエは渋々ステータスカードを渡した。
すると、翔は大体予想がついていたのか、あるいは適当か、手に取った瞬間から笑いをこらえていた。
「ぷはっ!
職業がねーじゃん!
それにステータスがすんげぇのねぇし!
おい、爆これ見ろよ!
てか、見せてやれよお前の!!」
「アァ?」
そう言いながら爆は天野が見せたカードを見る。
すると、爆は当たり前だろ、といった顔で、
「...まぁ、お前じゃこんなだろうな」
とだけ言い、爆はカナエにカードを見せた。
意外な行動だったのでカナエは目を丸にして一時停止した。優愛は爆に怒った顔で何か言っている。爆はひたすら無視するが...。
そして、ずっとボーっとしているカナエに痺れを切らした爆が静かに喉を鳴らし、
「...おい、見る気あんのか?」
と言ってカナエは ハッ と行動を再開して爆のカードを見る。
ちなみに優愛と翔も両サイドから顔を覗かせている。
「うぁ!爆くん凄いなぁ!」
「......(なんて言ったらいいの?)」
「...爆くんは昔から...凄いな」
3人は目を丸くしている。
それもそのはずだ。爆のステータスカードにはこう表示されていた。
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桐ケ谷爆:職業《狂戦士》Lv.1
筋力:345
魔力:120
俊敏:295
体力:350
魔耐:90
物耐:90
スキル:『狂者』『覇気』『言語理解』
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(これ、チートでしょ!?)
3人は凄い凄いとしか言葉に出来なかった。
結局、天野は何も見せてこなかったけど。
すると、団長が久々に発言した。
その内容はカナエにとって最悪だったが...。
「今日の訓練は、お前達に運動能力の向上を体感してもらうのと、私達騎士団がある程度お前達の能力を知るために1 対1の模擬戦闘を行ってもらう!!!!
対戦相手はクラスの中の出席番号だ!!」
この言葉にカナエは嫌な汗をかいた。
一方で爆は闘志を剥き出して不敵に笑う。
それもそうだろう。
団長の言葉が示しているのは、出席番号9番のカナエと10番の爆が対戦するということなのだ。
急に爆が静かに語り出す。
────2年前の悲劇を──。
「...やっと...お前をぶっ潰せらァ...。
なぁ、お前がどれだけ罪の意識を持とうとなぁ、美羽は生き帰んねぇし俺はお前を許さねぇぞ...?」
「...ッ!!!!」
カナエは黙り込む。何も言い返すことが出来ないからだ。
「2年前!お前が弱いせいで美羽は殺されたんだ...お前が殺したようなもんだ...!!!!
...死ぬ手前くらいまでぶっ潰してやらァ...」
そしてカナエは2年前の悲劇を思い返す───。
次話は2年前の回想から入ります。