帰省(夜)
いつの間にか夜になっていた。
当たりは真っ暗で何も見えなくなっていて、ただ草原の匂いとフクロウの鳴き声だけが感じられた。
フワリフワリと漂うような、そんな気持ち。ただひたすらに終着駅を探してさ迷っている。
私が私でいる為に。私が私である為に。
有りもしない息を潜めて夜に潜る。
そして行く手に小さな光がちらつき始める。
よく見れば、それらは火だった。命の火が、この日ばかりは死の為に燃えている。死を迎え入れるために燃えている。
さあ、帰ろう。私の家に。
三途の川で濡れた足は既に乾いていた。