P3.初手、逃亡
「スキル技の使い方の説明するね!
使い方は簡単、技名を口に出すか念じれば発動するようになってるよ~。
中には特殊な条件をクリアしないと使えない技もあるらしいけどね。
それと、技の説明を見たかったら技名の前に『説明』って2文字を付け足して念じてね。
っと、最後に君達の見ているモノについて説明しておかないとね。
まず、左上にある青色のバーが君達の生命力、つまり”HP”を表すものさ。
それが尽きると死ぬから注意してね?
その下にある赤色のバーが技を発動するためのエネルギー、つまり”MP”だね。
こっちは無くなっても死なないけど、使い過ぎると意識が飛んでっちゃうから気を付けてね~。
ああそうそう、HPは減ってもある程度までは自動で回復するし、MPに至っては放っておいたらそのうち全回復するからね~」
説明を終えたのだろう、ギューイは首を動かして俺たちを一瞥すると、子供らしい笑顔を向けて選別の言葉を言い放った。
「じゃ、説明は終わりだからね。
質問は受け付けないから、後は勝手に頑張ってね~」
すうっと宙に浮かび上がるギューイ。
何人かが攻撃をしたそうな表情を浮かべてはいたが相手は実体のないホログラム、その感情を堪えて足元の石を蹴る事ぐらいが精一杯の行動だ。
結局元の世界に帰れるのか、という大事な話ははぐらかされ、勝手の分からない土地に放り出された皆は途方に暮れようとしていた。
そんな時、消えかかったホログラムから衝撃の一言が告げられた。
「ああ最後の最後に。
ここ周辺のモンスターのポップを解除したから、後5分ぐらいでモンスターが現れるから注意してね~」
冷たい風が背中を走った気がした。
丸腰の生徒数百人、それもモンスターとの戦闘はおろか本気で殴り合いをした事が無い奴が大半を占めると言うのにモンスターなんて現れたら間違いなく全滅する。
いや、それ以前に俺のこの異能、死神が一番ヤバい。
下手に知れ渡ったりなどしたら危険人物と判断されて殺されかねない。
…………………仕方ない、か。
「な、なあ之春。これからどうするよ?
ここに居てもモンスターとやらの餌食になるんじゃないか?
だったら早いうちに────」
「悪い、翔。…………雨を頼んだ。
『インビジブル』」
「は?何で逆撫先輩の名前が……………え?」
俺は、唯一使える技、『インビジブル』を唱えた。
そしてその瞬間から、翔の目の焦点が俺に合う事は無かった。
そこにいたほぼすべての人間が、俺の居場所を把握する事が出来なくなった。
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それからの俺は近くの森目掛けて走りに走った。
息がすぐに上がる、足場が悪くてすぐにこけそうになる。
それでも足を止める訳にはいかない、生きるためには仕方がない事だ、と自分に何度も言い聞かせた。
暫く道なき道を駆けていると、全身から何か抜けたような気がした。
先程習ったように自分のステータスを開き、『インビジブル』の説明を開く。
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技名:インビジブル
説明:15分間、周囲と自分を同化する。
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「多分、効果が切れたんだろうな。
……………翔と雨は無事かな」
今まで走って来た道の方を振り返えって、親しい友人達の事を心配する。
そんな事を考えていたせいで、俺は重大な事を見逃してしまっていた。
<残:571>
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