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堕落者の憂鬱軍師思考  作者: 淀水 敗生
気水奪還篇
20/27

国境壁8



▼▼▼


現在アスタンは帝国兵相手に籠城戦を行い時間を稼いでいる。栄水は気水と呼ばれる貴族を奪還するという無茶振りを受け、アスタン砦を出発し大きく迂回しながら帝国領を目指している。


アスタンを狙う帝国兵はアスタン正門をぶち破るため、巨大な投石器や魔術師達の一斉射撃を行うが、アスタン砦の持つ結界魔法『神聖バロヴァニア』により、その全てが弾かれており、致命的な一撃を与えられずにいる。


またワイバーンの襲撃により帝国兵は撤退させられ、軍師ジルドレの指示により被害は最小限に抑えられたが補給を待たなければならない状況へと追い込まれる。


そして現在、アスタン砦籠城戦の全体指揮官であるペール・ボアトルは地図を見つめながら満足そうに頷く。


「まだ耐えられますね」


謎のワイバーン襲撃があったが『神聖バロヴァニア』の結界と魔物避けの煙を焚く事によって帝国兵にだけダメージを与えることが出来た。


「ただ、物資の補給が無いのは厳しいですね。

アルフトル、王国からの反応はどうですか?」


「駄目ですね。まだ大戦から回復したとは言えない状況、物資を送る余裕も無さそうです。

商人から買おうにも今のアスタンには誰も寄り付きません。他から買おうにも兵士を食わすだけの食料を運ばなければなりませんし、送料を払う金もありません」


「やはり、一ヶ月、これが限界ですね」


ペールは苦い顔で地図を睨む。


『神聖バロヴァニア』はアスタン砦を建設する際、神代の遺物であるバロヴァニア国の城壁の残骸を集めて作り上げた砦であり、魔法陣だ。世界で唯一の神代魔法である。


「『神聖バロヴァニア』が崩れることなどありません。しかし、『神聖バロヴァニア』が発動されてから数百年、いくら神代の魔法だって劣化していてもおかしくはありません。

帝国兵だって打ち破る秘策の一つや二つ、用意していると想定するべきです」


ペールは部下に弓矢や槍の製造スピードを速めるように通達する。最悪、棒状で先が尖っているならば問題ないとして製造スピードを急激に速めるのだ。


「木材が足らないのなら家を壊しても構いません。

魔法が使える者は砦に集合させ、一斉射撃を行います。

また、兵士の中から監視兵として百人配置し、万全な連絡経路を確保しなさい。二十四時間少しの変化も見逃してはなりませんよ」


戦時中、情報は時として巨大な武器になる。


「しかし、相手は撤退したばかりです。惜しい人員を割いてまで必要なのですか?」


部下の意見もわからなくはない。しかし、戦争に絶対などない。


「もし、撤退したと見せ掛けて背後から現れたらどうしますか?もし、相手が超遠距離魔法の備えをしていたらどうしますか?

戦場に絶対など存在しません。常に幾億もの備えをしておかなくてはなりません。

予定通りの戦争なんて存在しません。重要なのはそれまでに何をするのかです」


これは数々の戦場で培った経験だ。


「報告します!!

夜空に赤色に光る魔力を確認!!魔術的なものだと断定」


部下からの報告により、ペールはすぐに部屋を飛び出して外壁上に登る。空を見上げれば小さく光る無数の点が真っ直ぐ、こちらに向かっていた。


「ペール司令官!魔法士ヤルガンが解析し、赤色の光が魔法名ノック・フィヴァルドであることが判明しました!」


「っ!ノック・フィヴァルド。ベヒモス級じゃない!

直ぐに神聖バロヴァニアを展開しなさい!!」



ノック・フィヴァルドが砦に直撃する寸前、半透明の膜がアスタンを取り囲み、流星のように落ちてくる赤色の光弾を弾き飛ばす。


「へっ!神聖バロヴァニアが崩れるもんかよ!!」


部下の一人がそう叫ぶ。

ペールは難なく弾き返す半透明の膜に安心感を覚えるが、直ぐに気合いを入れ直す。団長に任された仕事だ。


今はまだ大丈夫。


ペールがそう確信した瞬間。



巨大な光の柱が神聖バロヴァニアの結界を吹き飛ばした。

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