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STEP1「リアルラブを求めて」

「BURN UP NIGHT? 直訳すると“燃え上がる夜”だよね? これってもしかしてR指定?」

「とうとう陽菜多も大人のお勉強を始めたわけだ」

「ちっがいますぅ~、これにはR指定入っていません!」


 自分の部屋へと招いた親友の二人から言われ、私はパソコンの液晶画面を指しながら、断じて否定する。ゲームの注意事項には一言もR指定の記載はない。


 長閑な午後の昼下がり。今日は運が良いのか、大学の授業の休講が重なり、私は一人暮らしをしているアパートに親友の泉と葵を連れて来た。そもそも何をしに来たのかというと、そう、今目の前に映っている事をやる為だ。


 私は落ち着いた色調の(デスク)の前に座り、親友の二人に囲まれ、とあるゲームのサイトを開いていた。舞台は異国(ファンタジー)の世界であり、そこで出会ったイケメンと恋に落ちる、いわば「リアルシュミレーション乙女ゲーム」ってやつだ。


 以前から気になっていたゲームで何度か試みようと思っていたんだけど、一人だと手をつけられずにいた。今日は休講で時間も出来た事だし、泉と葵にゲームの話を出してみたら「じゃぁやってみよう!」という話の流れになり、今ここに至るってわけ。


 話は戻って目の前のこのゲームはオンラインだから、ネット上で他のユーザーとゲームの進行を共有する事が出来る。具体的に言うと、3Dで自分の分身を作り、他のユーザーとコミュニケーションを取りながら、恋へと進展させていくもの。


 場合によってはイケメンを取り合うバトルが繰り広げられたりするようで、それがけっこうリアルらしい。多少怖い気もあるけど、プログラムされた機械が相手じゃなくて、間接的でも生身の人間を相手にするわけだから、恋愛の練習をするにはいいよね?


 そもそもなんでこのゲームをプレイしてみようと思ったのか……それは単純に恋愛をしてみたかったから。私日向陽菜多(ひゅうがひなた)は女子大の国際学部に通う十九歳。今まで彼氏をもった事もなければ、ろくに恋愛すらした事もない。


 最後に恋をしたのは中学の頃、同じクラスだったジョニーだったかな。基本的に外人さんは得意ではないんだけど、ジョニーは別だった。黒人と日本人のハーフで、パンチパーマとつぶらな瞳とタラコ唇が印象的な子だった。


 とりわけイケメンでもなかったけど「ボ、ボ、ボ、ボクは……」って片言の日本語でよくどもっていた所や恥ずかしがり屋で、はにかむ姿がとても可愛かった。や、やだっ、ジョニーの事を思い出したら、また恋しくなってきちゃったよ。もういい思い出にした筈なのに、ダメダメ!


 私は顔をフルフルと横に振ってジョニーの姿を振り切る。中学の後は女子高に女子大と行ってしまったせいか、なかなか出会いに恵まれず。恋愛の仕方を忘れてしまいそうで、少しでもトキメキを求めていたところに、この乙女ゲームと出会ったってわけ。


 んで親友の二人はちゃっかしいるんだよね、彼氏が。見てくれが清楚なお嬢様系で、フリルやレースをあしらえた淡いパステル系の洋服が似合う泉はベンチャー企業に勤める年上ハイスペックの彼氏さんもち。


 もう一人の葵はお姉様系。ネイルや髪型が流行りに乗って常に大人っぽく、肩や美脚を露出しても、モデルのようにカッコ良い彼女はサークルを通じて知り合った他大学のイケメンくんが彼氏。というわけで彼氏のいない私は肩身が狭いわけで。


「こういうのって有料なんじゃないの?」


 私の右隣から顔を覗かせる泉が呟く。


「違うよ、無料でプレイ出来るみたい。良心的な会社で無料と有料とを分けているみたいだよ」

「へー。制作会社『恋する❤キューピッツ』だって! 超怪しいって! なにこの真ん中の(ハート)マーク!」


 今度は左隣から葵が口を挟んできた。


「怪しくないって! だって他のユーザーからコメント入ってるじゃん!」

「どれどれ? コメント一“腰が砕けそうな熱い視線と欲情させられそうな甘い言葉、そして燃え上がる夜のひと時に涙がちょちょ切れてしまいました。”は? なんかヤラシイよね? コメント二“今までの人生の中で最高の恋愛です! もう彼しか愛せません!” うわっ、現実逃避者まで出してるって! ヤバイヤバイ、これはやめた方がいいって~」

「うん、でもここまでユーザーを夢中(ゾッコン)にさせるって、ある意味天才的じゃない?」


 葵は危険性を訴えていたけど、それを覆して感心したのは泉だった。


「確かに……凄いよね?」


 思わず私も泉の意見に賛同する。


「あのね~、二人とも全然わかってない! そのコメントなんてサクラかステマだって! あとで絶対に課金させられるよ?」


 心底呆れたと言わんばかりに、葵は深い溜め息を吐いて言う。


「でもここのサイトって大手だし、怪しくないよ?」


 私は反抗するわけではないけど、事実を伝える。


「もうそこまで言うなら、試しにプレイしてみたら?」

「じゃぁ、早速登録してみるね」


 私は登録画面に入り、手順にそって進み必要な情報を入力した。このゲームの最大の売りにしている「容姿認識機能」というものがあり、なんでも画面上からセンサーでこちらの容姿を認識して、分身を作り出してくれるらしい。


 男性はこの識別で「上の中」以上の容姿をもっていないと登録が出来ない。けっこうシビアな世界だ。確かに設定上がイケメンだからね。女性は誰でもOK。誰が考えたのか知らないけど、けっこう凄いシステムだと思う。「容姿認識機能」画面に入り、センサーからピピピッと読み取られる。そして画面上には、


「貴方様の容姿レベルはかなりのオマケのオマケをして“(ちゅう)(ちゅう)”でございます!」


 ってメッセージが出ていた。おいおい、なんですか、このコメントは~!


「なにこれ? 人のコト馬鹿にしてんのかな?」

「ひゃぁ~、けっこうシビアなんだね、この容姿認識機能って」

「でも分身はちゃんと陽菜多そっくりじゃん! ウケる~」


 確かに私クリソツな3D顔が映し出されていた。サラサラのストレートの黒髪、人より少しだけ大きな瞳、筋は通っているけどちょっと低めな鼻、薄くもなく厚くもない唇。


 初期設定では決められたクリーム色の襟付きワンピースで、街に繰り出した際に洋服や靴、身に付けるアクセサリーを購入出来るみたい。アイテムは課金制っぽいよねー。


 とりあえず必要な情報は登録したし、早速ゲーム開始しよう。RPGのようにフィールドを散策して、出会った人とコミュニケーションをとるっていう流れが基本らしい。


 にしてもコメントにある「熱い視線」とか「燃え上がる夜」って、男性陣側にはそんな高機能なアクティビティーがあるのか? 考えるだけでも恥ずかしいけど!


 そもそも想像している通りの事があったら、それこそR指定ものだよね? 注意事項には年齢の記載はされてなかったし、大人の時間から課金制だったりして。多少不安が生じていたが、ここまでやっておいて今更だよね!


 いよいよゲームの世界へとエントランスボタンをクリックすると、最初に出てきたのは真っ暗な画面に浮かび上がったドピンクの文字だった!


『彼等と甘いひと時が過ごせるかどうかは貴女次第♪どうか密々な時間をお過ごし下さい❤』


「わお~、いっちいちイヤラシイね!」


 なんだかんだ一番気乗りなのは葵じゃない? あの凄んだ勢いは何処(いずこ)にいったのさ? そして画面は次へと進んでいき……。


「ん?」


足をお運び頂き、有難うございます。次話、ヒーローが登場します♪

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