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勇者、アコギな商売をする。

内容の中に男性同士の微妙な表現が出てきますので、苦手な方はスルーをお願いします。

――魔王城――


「魔王様ぁ~、報告ですぅ~」


薄暗く広い部屋に甘ったるい声が響く。

魔王様と呼ばれる者は、窓から外の景色を眺めていた。


血のように赤い空。赤黒くごつごつとした大地が広がる風景。

悪役がよく持っているお馴染みの胡桃を手でこりこりとやりながら、笑みを浮かべて見ている。


「メサイヤ、お帰り。・・・どうだ?勇者は」

「・・・それがぁ、地味な女の癖にイケメン2人蔓延らせて、ようやく旅を始めてましたぁ。ってゆーか、そのイケメン達女の趣味悪くてぇ、マジなんなの?って感じでぇ~」

「・・・ほお?・・・そうか」


浮かべていた笑みが消え、手の中で胡桃が割れる。



「相変わらず、前の勇者と変わらないな・・・気に入らんっ!!」


魔王の瞳が燃え盛る炎のように赤くなっていった。


「まおうさ・・・」

(はっ!?・・・まさか魔王様もあの地味な女を・・・!?マジで・・・!?)


―――嫌な予感。

メサイヤの額から一筋汗が流れる。


魔王の後ろ姿をみながら、歯をぎりりと鳴らした。


(なんなの・・・?あの女・・・!許さない・・・!!!)



そんなメサイヤをよそに、魔王は怒りに満ちた表情でただ外を見つめていたのだった。






---------






山越えは色々と大変でした。


襲ってくる魔物の数が格段に多く、そしてなかなかに強い。

しかしゼイファーは金槌を振り回して敵をなぎ倒し、それでも襲ってくる魔物にはリリックの攻撃魔法で一掃。私はお金とアイテムの回収に余念がありません。


今回はリムの町で買った食べ物を入れておいたゴミ袋を持ってきました。

なので取り残す心配はないでしょう。

多少食べ物の残り香が気になるところですが、気にしない事にします。



ようやく山越えを終え、次の町へと辿りつきました。


ここは港町グレモール。

漁業が盛んで、新鮮な魚介類が美味しいと有名な町です。


魔王は人が寄り付かない遥か北の地にいるらしく、この町から船に乗り海を越えて、次の王国ウエンディへと行く事になります。


実は「お前は勇者だ!」と言われた時に、王様から魔王がいる場所までの地図を頂いたのですが、これがまた簡単すぎる地図で。

大まかに大陸が書かれたものに、北に向かって矢印が書いてあり、北の一番端にある島に丸がしてあって「ココ」と書いてあるだけでした。


「適当な地図だな」


と、ゼイファーは笑って見ています。


王様はかなり気さくで適当なお方です。そんな所が国民には好かれてはいましたが。

今私達がいるメルク王国は、魔王がいるとされる場所より一番遠い南の国。あまり魔王の影響を受けておらず、比較的平和な国でもありました。


この国を離れ、海を越えて次の王国へと行くという事は、今よりも危険な場所に行くという事。

身近にも危険がいっぱいですが、気を引き締めていかねばなりません。

・・・ゴミ袋もいっぱい持っていかなくては。



「・・・は?1人10000ルン?」


船着場で、次の国へいくための船を見つけたのまでは良かったのですが、なんと私達を乗せて次の国に行く為にはぼったくりに近い値段を払わないと行けないそうです。


「仕方ないんだよ。最近海では凶暴な魔物が出るようになってね。こっちだってウエンディに行くのは命がけなんだ。そのくらい貰わないと割りに合わないんだよ」


船員は厳しい表情で私達に話しました。


「グリモア、今所持金は全部でいくらほどあるんですか?」

リリックに聞かれ、お金の入っている袋を確認します。


「えっと・・・今は・・・大体2000ルンほどですかね」

「1人分にも満たねぇじゃねえか!そんなんいつになったら30000ルンも集められるんだよ」


ゼイファーは頭を掻いて喚きました。

この国では月々の平均給料が3000ルンなので、30000ルンは相当な金額です。

10倍です、10倍。

3人で一生懸命バイトしても最低4ヶ月はかかる計算です。


「どうします・・・?一旦ルーンの町に戻って私のやってた残骸処理のバイトでもしますか?」

「はぁ?なんでそんな面倒な事すんだよ。誰か襲って金でも奪った方が簡単だろ」

「どうしてそんな横暴な考えしか出来ないんですか!私達は勇者一行ですよ!盗賊一行になったら魔王討伐どころじゃなくなります!!こうなったら山を行ったり来たりして、地道に稼ぐしかないんじゃないですか!?」

「それは私の体力が持ちません。お二人でお願いします。私は寝ていますから」

「「なんでだよ!!」」


・・・・・・。

まさかこんなところで行き詰まるとは。



とりあえず今後をどうするかを考える為に、一旦宿屋へ行く事としました。



宿屋へ向かう途中、私はなにやら視線を感じました。

周りを見ると、町を歩く女性達がリリックとゼイファーを見てはひそひそと話をしたり、見とれていたり。・・・中には男性も混ざっています。

やはり、顔だけはよろしいお二人です。この町でも人気があるようです。


人気があるようです。

人気が・・・・。



「あっ!!!!」


ついつい私は大きな声を出してしまいました。


「!?どうしたんですかグリモア」

「私、いい事を思いつきました!手っ取り早く稼げる方法が!!」

「ん!?なんだそれは!」


私は二人の顔をまじまじと見て、そして怪しい笑みを浮かべます。


「今日は疲れてますから、明日実行しましょう。何かってのは・・・明日のお楽しみです」


ふふふと笑うと、私は困惑した表情を浮かべる二人を置いて、さっさと宿屋へ向かいました。

奴らを使っての、金稼ぎ・・・。明日から忙しくなるぞ!

きっと成功する!!

いや必ず!!!






翌日。


「・・・・なんですか?これは・・・」


リリックは顔が引きつっています。

私は昨日寝ずに作った上り旗を立てて、町の一角に立っていました。

その旗には、


『イケメン!! リリック&ゼイファー レンタル彼氏 一時間500ルン~』


「なにって・・・この通りですよ。あなた達は顔だけ!はいいですから。デートしたい女性達と一時間500ルンからでデートしてもらおうかと」

「なんだそりゃ!!俺達を商売道具にしようってのか!?」

「だって、昨日そこらじゅうで女性達(男性も含む)があなた達を見て、見とれているのに気づかなかったんですか?少しでもそんな乙女の夢を叶えてあげようと思いまして!こちらも稼げますし!!ウインウインかなと!」


そんなやり取りをしている間にも、私の周りには旗を見た女性達(中には男性も)が集まってきます。


「ちょ・・・!!ちょっとグリモア!!」

「はい!!2時間ですか!?ありがとうございます!いいですよ!・・・リリック、ゼイファー!これは勇者からの命令です!船に乗る為です!やりなさい!!!!」

「なんつー奴だ!お前は!!」



喚く二人をよそにどんどんと予約を入れていく私!

二人は引きずられるように女性に連れて行かれます。


頑張れ!!イケメン二人!!

私もスケジュール調整頑張るから!!

これも、全ては魔王討伐の為!さあイケメンの底力を見せつけてやるのだ!!!!






・・・・・一週間後。


「お疲れ様でした!お二人とも!!!お陰様で30000ルンを貯める事ができました!!!」

30000ルンを見せながら満面の笑みで話す私をよそに、二人の顔はげっそりとやつれています。


特にゼイファー。

なぜかお尻を押さえて、涙目でぶつぶつと何かを言っていました。


「もう・・・もうやだ・・・。男はもうカンベン・・・。狙われるの怖い・・・」


「どうしました?ゼイファー。お尻に怪我でもしたんですか?」


私の問いかけに、リリックは何かを悟ったような表情で私の肩に手を置き、そして何も言ってくれるなと首を横に振ります。


ゼイファーはなぜか男性に人気でした。男性同士の恋愛はよくわかりませんが、何かあったんでしょう。

まあいいです。少しいい薬にはなったと思いますので。



「とりあえず、これで目標達成です!さあ行きましょう!!次の王国へ!!」



こうして私達は、ウエンディへと向かうのでした。

これぞイケメンのいい使い方

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