表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

勇者、また仲間が増える。

私達の前に立つ男。


頭に布を巻いて、日に焼けた肌。タンクトップから出る腕はとても太く筋肉隆々。

薄いタンクトップはパンパンで筋肉の線まで見えています。

ちょっと無精ヒゲを生やして、煙草を銜えているのがまたワイルド。

リリックもそれなりに背は高いのですが、この男は更に高く2メートル近くあるんじゃないでしょうか。


とにかくデカい。全てがデカい。


「俺はゼイファー。この町に住んでる荒くれ者だ。勇者、お前の名前はなんて言うんだ?少し俺ともお手並み拝見と行きたいんだが」

ポキポキと指を鳴らす音が聞こえます。

ゼイファーと名乗る男はこちらを見もせず、リリックに向けて話しています。


よしよし!リリック頼みましたよ!コテンパンにやっちゃって下さい!


「・・・勇者?わたしは勇者ではないよ。勇者はこちら」


とリリックは私を指して言いました。・・・ってヲイコラ!!そこは身代わりになるのが普通でしょうが!

突然の裏切り?に私は持っていた食料を落としそうになります。

せっかく3秒ルール発動したのに!


「・・・女?」

「あ、あわわわわ・・・!」

銜えていた煙草を投げ、のそりとゼイファーは至近距離まで来ると、まじまじと私を見ていました。


おおおお、デカい!至近距離は余計デカくて怖い!!


「・・・名前は?」

「ぐ・・・グリモアで・・・す」

「ふーん・・・」


くいっと私の顎を問答無用で上げ、ゼイファーの顔を見るように仕向けました。

更に近くなる顔。少し釣り上がった目。

その奥の明るい茶色の瞳がさらに威圧を与えます。

恐怖のあまりついに少し食料を落としてしまいました。


やられる!そう思いました。が・・・。


「お前、結構可愛い顔してるな。俺の好みだ。・・・気に入った」



・・・はあ?


ゼイファーから出た言葉は意外なものでした。つい呆気にとられます。


可愛い顔?私が?

こんな平凡な容姿の私が??


"俺の好み"に反応したのでしょうか。リリックがいきなり間に割って入って、ゼイファーの手を私の顎から引き離しました。


「離れて下さい。グリモアは私のものですよ?」

「・・・嫉妬か?小さいな」


リリックが間に入ってくれたお陰で少し離れることは出来ましたが、遅いよ!

もう少し早くに助けて。食料が落ちちゃったじゃないの。


ゼイファーはフンと笑うと、

「俺は女には手を上げない主義でね。グリモアが勇者ならば何もしない。ただお前は覚えとけよ。後で痛い目に合わせてやる」

とリリックに向け言い放ち、その場を離れ、倒れていた男達に蹴りを入れ起こします。


「「ぼ、ボスっ!!」」


「ザコ共が。行くぞオラ!てめえもいつまで水に浸かってんだボケ!」

そう男達に言い、去っていったのでした。



残される私達。


「あーあ・・・せっかく買った食糧が・・・。もっと早く助けて下さいよ」

落ちた食料をひろう私。

せっかく3秒ルール発動したのに。もう食べられないじゃない。


「グリモア、明日早くこの町を出ましょう。こんなところでゆっくりしている暇はない」

リリックの顔はいつになく真剣です。

どうしたんでしょう?やられるのが怖くなったんですかね。


「はぁ、わかりました。・・・でもどうして」

「駄目だ、ダメだ。グリモアに変な虫がついてはいけない。グリモアは私のなのに」

と独り言のようにぶつぶつ言っています。


変な虫?ああ、そういうことか・・・、ていうか・・・。


「あの、私リリックのものじゃないですからね。勝手に決めないでくださいよ」

「ええっ!?違うの?もう好きになったでしょ!?」

「どこで好きになる要素があったのか逆に知りたいです。全く好きじゃないです」


リリックは白目を向いて放心状態です。

ハッキリ言い過ぎましたか?いやいや、このくらい言っとかないと。

勘違いされても困りますしね。



次の日。

太陽が上がりきらないうちからたたき起こされ、この町を出ることになった私達。

リリックは早足で町の出口へ向かっていました。

とにかく早い。追いつくのがやっとです。


「ちょ・・・ちょっと待って下さい。早過ぎですって・・・」

「いいから早くこの町から出ますよ。タラタラ歩いている場合じゃない」


ようやく出口へ差し掛かった時でした。


「おい、待て」


また後ろからしゃがれた声。ゼイファーです。


「そんなことだろうと思ったぜ。やっぱり張り込んでて正解だったな」

私の背位はあろう大きな金槌を肩に乗せ、煙草をふかしてニヤついています。


「ストーカーですか、あなたは」

リリックはとても嫌そうに話すとゼイファーを睨んでいました。


「人聞き悪いこと言うなよ。坊ちゃん。俺はグリモアが気に入った。ついでに坊ちゃんにも俺の手下をやられた借りがあるからな。だから俺も付いて行くぜ、お前らに。魔王を倒しに行くんだろ?きっと俺も役に立つだろうよ」


「「は!?」」


ええええ??

まさかここでも仲間が増えるのですか!!

しかもこんないかつい荒くれ者が!?


「お断りします!魔王を倒すのはこの私だけで十分です。いりません!!」

「へへっ、そんな事言ってお前この旅でいつかグリモアをものにしようと考えてるだろ?読めるぞ、お前の心が。つり橋効果って危険な目にあった時に恋に落ちやすいってな。それ狙ってるだろ。そんで上手くいったらグリモアとピー(自主規制)やピー(自主規制)なんて出来ればと考えてるな、さては」



・・・ゲスい。ゲス過ぎるよ・・。

まさかリリックはそんなことまで考えていないでしょ・・・。


と、チラリとリリックを見ました。


そこには顔を赤くし、明らかに動揺しているリリックの姿が。


「リリック・・・あんたまさか」

「いっ、いいや!決してそんなことは!そんなピー(自主規制)やピー(自主規制)をグリモアとなんて考えていない!!いや、違う!!いずれはとは思っているけれど、今ではない!!」


・・・・考えていたな。

このムッツリスケベが。


私は思いっきりリリックを睨みつけました。

リリックはその睨みに少しすくみ上がっています。

私は決心がつきました。


「ゼイファーさん、いいでしょう。一緒に行きましょう。私をこのムッツリスケベから守ってください」

「グリモア!!!」


リリックは納得がいかないようでしたが、このままリリックのいいようにやられちゃたまりません!

なんせ貞操の危機だったわけですからね。その事実を知った以上2人で旅をするのは非常に怖い。

若干この荒くれも難アリですが、2人で旅をするよりは何倍もいいでしょう!

もしかしたらゼイファーが邪魔をして結婚しなくても済むかもしれないし!


「ムッツリスケベか。いいねその名前。よっしゃ、じゃあ決まりだな。さん付けはいらないぜ。よろしくグリモア」


ニッと笑顔を見せ、大きな手を差し出しました。私はそれに応えるようにその手をとり握手をします。




こうしてまた仲間が増えました。

ゼイファー(25)あらくれもの。

曲者の多いパーティーです・・・・。




まさにゲスの極み

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ