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プロローグ
「こうならなきゃよかったって思ってる?」
吹きすさぶ風が美恵の体を絶え間なく斬りつけていく。
寒さの中で、嘲け笑うように満天の星空が美恵達に軽蔑を向ける。
「そんな事、ない」
本心を口にすると、桧並はその答えが当たり前のように笑顔を見せた。
「私も一緒」
ほんの少しだけ、体温が上がった。
ほのかに、微かに。桧並でしかあげる事の出来ない、美恵の温度。
その暖かさが欲しくて、美恵は桧並と一緒にいる事を選んだ。
沈黙。
一際強く、風が吹いた。
それを合図に、桧並の口が開く。
薄く整った唇が冷気でかさついていた。
「死んでくれるよな、美恵」