第四話「形だけの入学式」
レファイン女学園、全国から魔法の適性のある者を集め保護し教育する学園の一つで、生徒、教師、用務員、全員魔女である
学園の広さは東京と同じ程度(広いがその七割は森)あり、学園内で法が定められており、もはや一つの独立国家と言われている
女しかいないとか楽園だぜヒャッホーイと馬鹿な男がたまに侵入を試みて行方不明になると噂があるが大体真実だ
政府も法律の外にあるレファイン女学園には手が出せないため身を隠すのには絶好な場所と指名手配犯が逃げ込む
それを潰し政府に首を送りつけることが多々あることを知っている
そして魔法の適性のある者は拒否権なく学園に入れさせられることから『魔女の檻』とも呼ばれている
学園の中がどうなっているのか普通の人間は知らない
卒業してレファイン女学園を出た魔女も決して口外にしない
レファイン女学園に足を踏み入れるとき強制的に『他言無用の約束』という魔法で口にすることはおろか書くことも出来なくなる
『第一世代』の魔女の魔法だけあってレジスト出来ない
その魔女の顔を見たことはない
噂では童話に出てくる感じの老婆だとか
理事長である祖母が知らないのはどういうことなのか……
※※※
と、読者に説明をゴホンゴホン考え事に耽っている間にレファイン女学園の体育館に着いた
咲き乱れる桜が素敵だなんてベタなことは思わない
毎年毎年見てたら流石に飽きると思うのだけど、どうだろう?
それより問題は人混みだ
私は人混みが嫌いだ
台所などに出現する黒き鎧の迅速の騎士Gより嫌いだ
今、頭おかしいんじゃないかと思うほど大きな体育館には妹が用意した軍勢(見送り)を簡単に上回る人が覆いつくしているのだ
どこから入れと?
「…………よし、帰ろう」
祖母には寝坊したとかなんか適当に言い訳すればいいだろう
そうと決まれば善は急げだ
踵を返して帰ろうとしたとき
「どこに行くさね?」
ラスボスに回り込まれた
魔鬼菜は逃げられない!
「ちょっと、お花を摘みに参ろうとしただけですわー」
チッ、このババアいつの間に私の後ろを取った……!?
「動揺しすぎて口調と表情が噛み合ってないさね」
そんなに顔に出ていただろうか?
妹にも「お姉ちゃん、わかりやすくて素敵だよ!」と言われたけど身内にはポーカーフェイスが通用しないの?
私は祖母の顔から何も読み取れないというのに
「さぁ、そろそろ時間さ。早く入んな」
襟を掴んで私を軽々しく持ち上げて体育館に入る祖母
嫌だー人混みは嫌だー
あ、人混みが割れていく
奇跡だわー
流石、B.M.B(婆ちゃんマジ便利)
「あんたはこの列さね。適当な椅子に座るといいさ」
ひょいと投げられる私
レファイン女学園でも入学式はパイプ椅子なんだーと現実逃避していた
だって、そうだろう?
今、多く生徒の注目が私に集まっているのだ
レファイン女学園はその性質故に編入生は珍しい
ある程度、注目が集まるのは予想内だったが祖母のせいで余計に目立ってしまった
もっと早く引き返すべきだった……!
後悔先に立たず、この状況に甘んじるしかないか
「…………。婆ちゃん」
「何さね?」
「なんで私の隣に座ってるのかな?」
興味の視線が一向に収まらないのは祖母が今も私の隣にいるからだろう
「暇だからさね」
何を馬鹿なことをみたいな顔で言うなよ
「暇なら仕事しなさい」
「仕事より孫をおちょくるゴホン……昔も今も未来も友達がいない魔鬼菜が可哀想だからね時間があるときくらい一緒にいてやりたいのさ……」
おい、本音ほとんど出てたよ?
今は友達いないけど昔(小学校時代)はいたし、馬鹿ばっかりだったけど未来は知らないわ
「可哀想と思うなら早くここから離れてほしいなーと婆ちゃんのようなボケ老人には出来ないことを言ってみたり」
皮肉を言うと
「ふ、わかってるなら言うんじゃないよ」
サムズアップして返された
おのれボケ老人……!
「はぁ、落ち着け私、汚物を視界に入れては駄目よ……」
目を閉じ深呼吸する
「じゃあ、二度と汚物を見ないように眼球を抉るさね」
あれ?婆ちゃんが怒ってる……
本気で眼球が抉られる……意識を逸らさなくては
「そーいえば、……この列の人は変わったが多いのね」
白衣、猫耳カチューシャ、改造制服、メイド服、割烹着、クマの着ぐるみ
レファイン女学園が服装に対して緩いってレベルじゃないでしょ……
白衣と猫耳カチューシャは百歩譲って許容範囲として、それ以降はアウトだよ……
あの人達より私のほうが注目集めてるって、こんなの絶対におかしいよ!
「あぁ、あの小娘共はあんたのクラスメイトだよ」
「I beg your pardon.」
思わず英語が出るのはお約束
合ってるかどうかは知らない
「あぁ、あの小娘共はあんたのクラスメイトだよ」
あんな個性が強そうな連中と一年共にしろと言うのかこのババアは
まぁ、関わらなければ問題ないかな
「魔鬼菜に引けも劣らずの変人が多いのさ。退屈せずに済むよ……私が」
私があれらと同じ扱いなのに文句を言おうとして
「マキナちゃん」
鈴の鳴るような妖精さんの声で何を言おうとしていたか忘れた
※※※
後ろに誰かが立っている気配は感じていたけど、それが昨日森で会った妖精さんだったとは驚きだ
「妖せ……立花さん」
おっと、あまりの可愛さに思考を放棄するところだった危ない危ない
会うのは二回目なんだから耐性は付いたわ
私に弱点なんてあんまりない!
「また会えて嬉しいです」
私はニコッと微笑む立花さん
ひゃあー眩しい眩しい眩し眩し眩し眩し眩し
「これ、戻ってくるさね」
ショートした私をビンタで蘇生した祖母
ふ、普通に揺するとかでもよかったんじゃないかな?
『怪力乱神の魔女』は手加減を覚えるべきだ
脳が、震える……
しかし、祖母の醜い顔が視覚に入ってるおかげで立花さんの眩しさが相殺される
B.M.O(婆ちゃんマジ汚物)
誉め言葉よ?
改めて彼女を見る
森で会ったとき彼女が制服を着ていたことからレファイン女学園の生徒であることはわかっていたが小柄なことから年下だと思っていた
同じ学年とはラッキーだ
頬が弛むのも仕方ないことだろう
「あの魔鬼菜が……火燐以外の女に微笑んだ……!?」
祖母が馬鹿なことで驚いているが些事だ
私だって笑うのだ
……その顔が悪いこと企んでそうと言われるだけで
「あ、理事長先生、おはようごさいます」
汚物(祖母)に微笑みながら挨拶する立花さん
ええ子や……
私の隣に座るといいよ?
「あぁ、おはよう立花。私の孫と仲が良いみたいだね」
意思が通じたのか私の隣の椅子に腰を落とす立花さん
「はい、私とマキナちゃんは友達同士なんです」
昨日少し話をしただけの相手を友達とは……これが火燐の言ってた女子力なの?
「そりゃ、ちょうど良い。魔鬼菜は今日から学園に入るさね。立花がこの子の面倒を見てくれないかい?一人だと迷子になってしまいそうだからね」
祖母の言葉にドキリとした
言えない
昨日の時点で迷子になったなんて
「喜んでお受けします」
この子の笑顔、癒されるわ
「そうかい受けてくれるかい。じゃあ、魔鬼菜は立花と同じ部屋にしておくよ」
ナイスババア!
何企んでるババア!
頭の中でどちらの言葉が勝ったかは永遠の謎である
どっちもとか言ったらあかん
「同じ部屋ってことは魔鬼菜ちゃんもGクラスなんですか?」
驚いたと口を手で覆う立花さん可愛い
Gクラスかー
グレートなクラス?
それもと対テラフォ○マークラス?
でも、立花さんが、も、と言っていたから彼女もGクラスということに……わかった!神がかったクラスだ!頭悪いこと考えてるな私!
「そうさね。この子は頭の構造が一般のそれと大きく乖離してるからね」
こいつ、いつか、絶対、絞める……!
ちょっとおかしいのは否定はしないけど
私が睨んでいることに気付いた祖母はハッと笑う
「Gクラスは変人奇人怪人、問題児の溜まり場さ。あんたにはピッタリだろ?」
ピッタリじゃない
「確かに白衣、猫耳カチューシャ、改造制服、メイド服、割烹着、着ぐるみの人なんてこのクラス以外いなさそうね……」
Gクラス以外の列にはパッと見、個性が強そうなのはいない
パッと見で個性強そうとわかるのがGクラスに集中しているからだろう
「私は他人に干渉せず干渉されず怠惰に過ごせるならどこでもいいわ」
それを聞いてやれやれと肩を竦める祖母
入学式が始まる前から船を漕いでる立花さん
『はいはーい!皆ー!入学式始めるよー!』
合法ロリな学園長(66歳)の一声で漸く入学式が始まった
※※※
入学式は普通の学校と然程変わりはなく退屈なものですでに地平線の彼方まで記憶が飛んでいる
覚えているのは立花さんのキュートな寝顔とババアの耳障りな鼾と機械的に言葉を発する生徒会長がこちらを凍えさせるような絶対零度の眼差しを向けてきていたことだ
あれは私の隣で口を大きく開け涎を垂らしてる老害に対してに違いない……はず
入学式が終わり、祖母は理事長室に帰り、私は寝起きの立花さん(可愛い)に手を引かれてGクラスに向かった
何故か他の教室のより分厚いGクラスの扉を開けてまず目に入ったのは
淡藤色のポニーテールの子と緋色のセミロングのメイドが睨み合っている図だった
睨み合ってるだけなら可愛いものでポニーテールは拳銃、メイドは小太刀を構えて相対していた
こうして普通ではないレファイン女学園の普通ではないクラスで普通ではない高校生活の火蓋が切って落とされた
読んでいただきありがとうございます!
はいはーい!天の邪鬼でーす!
怠惰であることに誇りを持つ天の邪鬼でーす!
やっと学園生活始まるぜー!
設定考えるの面倒ですねー
設定作り終わって気付いたんだけど……戦闘がメインになるような気がするぇ
まぁ、いいか
バトル書くの面倒だけど頑張るよ!
プロットはまだ完璧じゃないけどアドリブでいいよね!