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第二話「運命的出会いってやつ?」



魔鬼菜は魂の限りを尽くし叫んだ後、クソババアともい祖母と一言、二言交わし理事長室をあとにした


魔法の適性のある者はレファイン女学園などの魔女を養成する学園に通わなければならない

拒否権は当然ないのだ



※※※



《魔法》


それは科学では証明出来ない奇跡の業である

今でこそ魔法の存在を否定する者はいないが魔鬼菜の母、雪菜が産まれる前は存在していなかったと聞かされている

祖母曰く、「クリスマスの夜、急に世界中で現れたのさ。

イブの夜に夢の中で『メリークリスマス、貴女達に素敵な《魔法》がありますように……』って誰かに言われたのが始まりだったのさね。私はそこで目が醒めたけど、その夢には続きがあるそうでね。

それより、あの頃の私は若くてね。その美貌は世界に轟くほ(etc」らしい

長いよ途中からありもしない自慢話に摩り替わってるし

ボケ老婆の戯言だとあまり信用はしていない


要約すると、ある日ラノベのような素敵な魔法がもたされたという

その素敵な力を使えるのが女性のみなので魔法を使える者を《魔女》と呼んでいる


今は《魔法》も《魔女》も当たり前のように社会に受け入れられているが昔は大変だったそうだ

魔女は多くの血を流し、数多の屍を重ねることで社会に受け入れられた

人間は多大な犠牲を払って魔女を根絶やしにするよりも取り入れて利用してやろうと考えたからだ

これは学校で誰もが習う一般常識だ


受け入れられるまでの魔女と人間の戦いを祖母は話したがらない

別に魔鬼菜も終わったことに興味はないので問いただすことはしなかった

祖母の渋い顔を見ればわかるのだ

学校で習う内容は虚偽と欺瞞に塗り固められていることが、真実はもっと凄惨で残酷で闇の深いものだということが

魔鬼菜は真実を知ろうとは思わない

興味がないから

ただただ目を逸らす

それが最善であるから


――魔女と人間が互いの存亡を賭け争ったというのに、その爪跡が世界のどこにも残っていないという矛盾からも目を逸らす


※※※



「と、黄昏て現実逃避していた訳だけど……」


魔鬼菜は森の中にいた


「迷ったわ」


自分が魔法の適性があると衝撃の事実を聞かされた後、これで勉強しなくても高校行けるという喜びと全寮制なため妹に会えなくなるという悲しみの間でゆらりゆらりと揺らされて現実逃避していると森の中にいた

更に現実逃避をして歩いていたら森は余計に深さを増し、日光がささらなくなっていた

で、現在に至る


「私は方向音痴じゃない。

考え事してたせいよ。

大体この学園の敷地が広すぎるのが悪いのよ!

なんで森なんかあるの!?」


魔鬼菜は安っぽいプライドを保つ言い訳をする

言い訳をしながら内心の焦りを誤魔化す

魔鬼菜は祖母に聞いたことがあった

このレファイン女学園は年に数人は行方不明になることがあると


私はこのまま森から出ることが叶わず、白骨化するまで見付からないんじゃないだろうか?


焦燥感が魔鬼菜を駆け足にさせる

駆け足から全力の走りへと変わる

走る走る走る走る

それでも光が見えない光が見えな……あ、見えた


「しゃあ!帰れる!」


横腹が悲鳴を上げるのを無視してラストスパートをかける


私、無事に帰れたら妹と結婚するんだ……!


「抜けた!…………。」


暗い森を抜けたと思ったら、息をするのを忘れてしまうほど神秘的な光景が広がっていた


そこは一面光輝く花が咲き誇り幻想的な雰囲気を醸し出している

更に圧倒的存在感を放つ大樹があった

それが森の中心なのだと魔鬼菜は理解する

悠然と立つ大樹に感動の念を覚え、無意識に歩を進める



そして、大樹に寄り添って寝ている妖精を見付けた



魔鬼菜は息どころか心の臓すら止まった

それほどに美しく可憐な少女だった

ギリギリうなじが隠れる程度に短い菫色の髪の妖精はあまりにも無防備、そして触れれば壊れてしまうのではないかと危惧を抱くほどの儚い存在に見える


「……さん」


妖精は小さな呻き声を出し目を覚ます


華奢な体を大きく伸ばし、くあーっ、と欠伸をこぼす

目尻の涙を拭い、初めて魔鬼菜の存在に気付いた


「おはようごさいます」


まだ少し寝ぼけている様子だ

だが、その様子すら愛しい


「……こんにちは」


これが魔鬼菜と菫色の少女の運命の出会いだった


菫色の髪の少女が意識を完全に覚醒させるまで二人は無言で見つめあっていた


「あのこの森は関係者以外立ち入り禁止なんですけど?」


どうしてここに?と鈴のような声で純粋な疑問をぶつけてきた


「簡単なことよ――道に迷ったの」


迷子になったことを魔鬼菜は別に恥ずかしいとは思わない

寧ろ意味もなく決め顔である

アホなところは祖母譲りだ


「迷った?それは大変ですね!もし宜しければ私が森の外まで案内しますよ」


どうします?と小首を傾げて提案してくる姿も絵になる

写真にとって永久に保存した……はっ!私は今何を考えていた……?


「悪いけどお願いするわ。私は島津 魔鬼菜よ」


内心の考えをおくびにも出さないでポーカーフェイスの魔鬼菜


「島津……マキナちゃんですね。良い名前ですね」


彼女が魔鬼菜を魔鬼菜と知らないからこそ好意的に捉えれる社交辞令だ

知れば轢きつった笑みで社交辞令を言いそうだ

それすらも可愛いのだろう


「私は立花 愛香と言います。よろしくお願いしますねマキナちゃん」


笑顔で握手を求めてくる妖精さんもとい立花さん

いきなり下の名前で呼んでくる上に握手を求めるとは、これがコミュ力の高い人間の出来る芸当なのか

私とは格が違うな

妹も初対面の相手によくやっていたのを思い出し、動揺を最小限に抑えた

……?なんで私は動揺した?

いつも通り思考の海に沈もうとした時


「いけません!もうこんな時間!急ぎましょうマキナちゃん!」


立花さんに腕を引かれて戻ってくる

私の手よりやや小さく温かく柔らかい手に引かれて森を進む

顔に血が集まるのを感じた

妹以外と手を繋ぐのは何年ぶりだろうか?


「そういえば島津ってどこかで聞いたことあるなーと思ったら理事長先生も島津ですね」


不意にこちらを振り向く立花さん


「あ……私、その人の孫なの」


至近に立花さんの顔が近付いたせいで思考が鈍った


「そうなんですか!理事長先生のお孫さんってことはマキナちゃんは凄い魔女なんですね」


その称賛に顔をしかめそうになるのを必死に抑えた


「……そんなことはないよ」


私の態度を立花さんは謙遜だと思ったようだ


「《怪力乱神の魔女》のお孫さんだから、身体強化系の魔法かな?どうマキナちゃん?」


私は立花さんの期待の眼差しが眩しすぎて目を逸らす


「秘密よ」


辛うじてそれだけ言えた


「そうですか。なら仕方ありませんね」


立花さんが食い下がらなかったことに安堵する


二人は他愛ない会話をしながら森を抜けた





読んでいただきありがとうございます!




魔鬼菜「魔鬼菜と」


愛香「愛香の」


二人「「裏劇場コーナー」」


愛香「パチパチパチパチ」


魔鬼菜「てか、何これ?」


愛香「ここは本編で説明してなかったことや作者さんの代わりにあとがきをするコーナーなんです!」


魔鬼菜「なんてベタな……。

てか作者の代わりって、怠惰な奴ね」


愛香「ま、魔鬼菜ちゃん。そんなことないですよ作者さんだって頑張ってるんだから」


魔鬼菜「立花さんが言うならそういうことにしておくわ。さて、張り切ってやりましょう?」


愛香「そうですね。今回は《魔女》について少し説明を付け加えますよ」


魔鬼菜「了解。魔女は魔法を使える者の総称ってことはOKね」


愛香「はいです。クリスマスに夢を見て魔法を使えるようになった人達のことを《第一世代》と言い、それ以降の人達を《第二世代》と言います」


魔鬼菜「《第二世代》の人達は基本生まれつき魔法が使えるのよね」


愛香「はいです。女の子の赤ちゃんは産まれた時に魔法の適性があるか検査するんです」


魔鬼菜「私はその時、魔法の適性はないって判断されたんだけどね」


愛香「極々稀に成長してから魔法が発現することがあるんですよ」


魔鬼菜「それが私ってことね」


愛香「そういうことです」


魔鬼菜「今日はこれくらいにして帰ろうか火燐が待ってるし」


愛香「そうですね。ではまた次回お会いしましょう」





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