7:Silver Dragon
久しぶりの更新です。
幽かに視界が回復していくのを感じ、目を開ける。
見えたのは、またあの白い空間だ。
天井や壁など存在せず、真っ白な床と空がどこまでも続く。
ただ、《マザーネットワーク》にこのゲームのことを告げられた時とは違い、周りには俺以外の人はいない。
そう、人間として認識される者は誰も。
目の前には、神々しい輝きを放つ銀色の竜がいる。
先程の竜と同じなのだが、それはさっき消滅したのを見た。
なら、こいつは一体何なのか。
『目覚めたか、少年』
頭の中にそんな声が響き、俺はそれがこの竜のものだと直感した。
「アンタ、さっき消えたんじゃなかったのか?そもそも、ここはどこだなんだ。そして俺は何故ここにいる」
多少多いと思いながらも、複数の疑問をぶつける。
モンスターと会話していることに驚いている場合じゃない。
ゲームだから、別に不思議じゃないだろう。
『申し遅れた。私の名はシルブ。確かにモンスターとしては死んだが、今は貴方の使い魔だ。』
「使い魔?」
『右腕に腕輪があるだろう。それが契約の証だ。』
右手を見下ろすと、手首に銀色の腕輪が装着されていたのが確認できた。
中心に幾何学的な紋章が記されていて、竜の存在に反応する様に光っている。
メニューから装備を調べてみると、右腕装備として【召喚腕輪】が装備されていることが記されていた
「俺はテイミング系のアビリティを持っていないんだが...」
『私がシステムに介入し、貴方にそのアビリティを託したから大丈夫だ』
「システムに......介入?」
何故モンスターがシステムに介入できたのか、何故そうしたのか、疑問に思った。
『私は一応隠しボスに分類されていてな、他のモンスターよりもAIが高レベルなのだよ。だから考えることができ、そして《マザーネットワーク》に抵抗する意志があり、このゲームを終わらせようとシステムに介入した。』
一瞬、シルブの顔が強張った。
『だけど、その前に《マザーネットワーク》に弾き出されてね。なんとか私が力になれる様、あの洞窟に地割れトラップと、私を倒した者に必ず使い魔として仕える様、そしてテイミング系のアビリティが託される様に仕掛けを施したのだ。』
「それなら、他のボスは?」
『他のボスモンスターらは既に《マザーネットワーク》の手の中。数少ない隠しボスにだけは何故か自由な思考が残されたのだ。恐らく見落としていたのだろう』
「じゃあ、何で俺を攻撃したんだ?」
『それは......システムから弾き出されたあと、《マザーネットワーク》にAIを停止させられて、普通のモンスター並みの知能に成り下がったのでな...今は貴方が倒してくれたお陰で、使い魔としてAIが再起動したのだ。仕掛けも気づかれること無く作動したしな』
どうやら、シルブに害意は無いみたいだ。
それでももう一つ問題が残る。
「で、これからどうするんだ?ここから出れないと使い魔を得たって意味ないぜ?」
『今から貴方の店へと転移する。だがその前に、この姿では目立つから人の姿に変わる。』
「この腕輪に宿るとかできないのか?」
『できるが......良いのか?姿変えなくて』
「ああ、良いけど?腕輪に宿れるんなら別に問題無いだろ?」
『いや、いきなりドラゴンとかいて良いのか?まだ始まりの街なのだろう?』
「あ、そうか。」
確かにドラゴンとか使っていたら怪しまれるか
人の姿でいれば、他人には知り合いのプレイヤーと説明すればいい。
「じゃあ、そうしてくれ。」
俺がそう言うと、シルブは青白い光を放ち始めた
眩しさで目が眩んでしまう
そしてしばらくして視界が戻ると、そこには――
「お、女の子?」
神々しい輝きを持つ銀色の髪が腰まで届き、肌は錯覚的に青白に近い程真っ白な少女だった。
青い瞳は水色にも関わらず、智者のごとく深い。
服は真っ白なワンピースで、右腕には俺と同じ様な腕輪が着けられている
「男かと思っていたのか?」
今度は頭に響いたのではなく、口で直接喋っている
「いや、印象とかでなんとなく...」
「まあいい。とりあえず、帰るぞ」
シルブが手をパチンと鳴らすと、足元に幾何学的な魔法陣らしき模様が光り、俺の意識は突然途切れた。
モンスターを倒して使い魔にした場合は経験値を得られません
経験値 OR 使い魔? みたいな。
本来なら選択できるんですが、この場合は強制でした