6:The Day When Everything Changed
サブタイの意味は「全てが変わった日」
急展開です
久しぶりに鍛冶作業をした翌日。
「それじゃ、採取しにフィールドに行って来る。」
「あ、お兄ちゃん気をつけてね」
「おう、勿論。」
俺は今日、採取をしに第一フィールド〈ビギニングフォレスト〉へ向かった。
〈ビギニングフォレスト〉は翻訳すると『始まりの森』らしい。
俺がいつも採取をするのは森の入り口の所。
それ以上進んでしまうと必ずと言っていい程モンスターに出くわしてしまう。
ただでさえ難易度が上がっているのに、こっちは初期装備なので勝てる訳が無い。
「お、今日は素材多いな~」
俺は鼻歌を歌いながら、森の入り口で薬草を見つけては、それをタップして採取をしている。
順調にインベントリが素材で埋まっていく。
因みに洞窟は森の入り口から近い。
走れば、モンスターに遭遇しても逃げ切れる
「久しぶりに採掘にでも行くかな」
ふと、そんな考えが浮かんでしまった。
俺は今まで一度も危険な目に会わずに森・洞窟で安全な入り口の所で採取・採掘をしていて、ゲームに対して危機感というモノが薄れていたのかもしれない。
だから俺は「今まで一度も危険なんて無かったんだから、大丈夫だろう」と思いながら洞窟を目指して走った。
洞窟付近では、何匹かモンスターを発見した。
視界にさえ入らなければ大丈夫なので、俺は茂みに隠れながら洞窟を目指して行った。
かなり緊張するが、案外見つからないものなのだ。
「ふぅ、やっと着いた...」
俺は独り言を漏らしつつ、洞窟の入り口の部分の石壁をツルハシで叩いた。
すると、システムメッセージが現れる。
『何も採掘できませんでした』
大抵はこの様に何も出ないのだが、たまに鉄鋼石に当たり、こんな風に入手できる
『鉄鉱石x1を採掘しました。』
いつもならこの調子で採掘を続け、一日の終わりには鉄鋼石を20個くらい採掘し終える。
そう、いつもなら、だ。
今日で、全てが変わった。
「ていや!」
気合を声と腕に込めてツルハシを振ると、石壁にヒビが入った。
システムメッセージなどは何も表示されない。
「何だコレ......うぉっ!?」
ヒビに触れてみると、壁が崩れ始めた。
しばらくして砂煙が消えると、さっきまで壁のあった所には俺の身長と同じくらいの穴が開いていた。
中はトンネルの様だ。
「壁に、穴が開いた......?」
俺は興味本意で穴を通り、トンネルの中に入った。
今思い返せば、それは最悪であり、最良の判断だったと思う。
トンネルを歩き続けると、かなり広い空洞に辿り着いた。
所々に様々な色の水晶が埋まっている。
壁には僅かな隙間があり、そこから太陽の光が差し込んでいる
水晶はそれを反射し、七色に輝いていた
そして、空洞の中心には巨大な何かが眠っていた。
「ド、ドラゴン......?」
眠っていたのは、一匹の竜だった。
その銀色の鱗は眩しい輝きを放ち、その翼は身を覆う程大きい。
水晶の七色の輝きに銀色の輝きが加わり、ドラゴンの眠るこの空洞は神秘的な場所に見えた。
だが、神秘的なのは外見的な意味で、決してドラゴン自体が神秘的だったということではなかった。
俺が緊張で足を震わせながらも、好奇心から空洞に一歩踏み込んだ。
俺が空洞の中を進んでいくと、
ドラゴンの眼は――開かれた。
『GUOOOOOOOOOOOO!!!』
生存本能が瞬時に俺の体に命令を下した。
今すぐ飛び退け、と――
俺は咄嗟に足を地面に叩きつける様に蹴り、後ろに飛び退いた。
が、地面を蹴った直後、突然身体が後方に吹き飛ばされた。
「ぐあッ」
俺は硬い石の床の上を吹き飛ばされた勢いのまま転がった。
俺を押し飛ばす風圧はまだ止まない。
十数秒程してやっと風が止み、立ち上がった。
何とか立ち上がっても、俺はフラついて膝をつく。
俺が元いた場所を見ると、そこには小さめのクレーターができていた。
クレーターの中心にはドラゴンの尻尾がめり込んでいる。
どうやら、俺はその衝撃波によってできた風圧で吹っ飛ばされた様だ。
HPも残り二割くらいしか残ってない。
人を容易く転がし、殺しかける程の衝撃波を生み出す攻撃。
そんなのを食らったら、確実に死ぬ。
死ぬ。
死ヌ。
シヌ。
しぬ。
まだ、死にたくない。
採掘しにきただけなのに、何故死ななければならないんだ。
まだ、死にたくない。
記憶を、失いたくない。
俺は上を見上げ、これ以上に無い命の危機を察した
ドラゴンの大きく開かれた、光っている様にも見える水色の瞳はしっかりと俺を捕らえている。
俺とドラゴンとの距離。目測でおよそ5メートル。
今も尚、ゆっくりと縮まっている。
今の出来事は、一瞬と言って良い程の世界で起こったことだ。
未だに、「どうしてこうなった」「何がどうなっているんだ」と混乱している。
状況に、追いつけない。
俺は、無駄だと分かりながら抵抗した。
「【サンダー】ァアアアア!!」
悲鳴にも聞こえる声で、苦し紛れに魔法を発動した。
電撃を飛ばす下級の雷属性魔法だ。
ドラゴンに向かってジグザグと動きながら直進している。
直後、俺の死に対して必死な抗いは通じた
ドラゴンには当たらなかったが、その後ろにある水色の水晶に命中したのだ。
カチッ、と何かのスイッチが作動する様な音が鳴り、地面が揺れる。
何かの仕掛けが施されていたらしい。
ドラゴンの足元に亀裂が走り、地盤が崩れ始めた
地盤の下には、底の見えない闇が広がっていた。
俺も、重力に引っ張られて落ちる。
必死になって地盤を掴んでも、一緒に落ちるだけだった。
「うわああああああああああ!!!」
地盤の塊の一つは飛び去ろうとしたドラゴンの頭に命中し、光の粒子と化して消え去った。
が、例えそれに気づいても喜ぶ猶予など全く無かった。
俺は吸い込まれる様に、底無しの闇へと堕ちていった。
お知らせ:一週間程旅行で更新できません。
帰ってきたら挽回するためにすぐに更新します。
電波さえあれば、感想などをチェックできると思います。
感想や評価を頂ければ嬉しいです。
※3/30/13、勝手にランキングタグを追加