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5:One Month Later

サブタイは「一ヶ月後」という意味。

生産仕事を含む平和で日常的な一日です


因みにタイトルを若干変えました

生まれ変わった《CFO》のサービス開始からおよそ一ヶ月。

人々は未だに始まりの町から出ることすら敵わなかった。


主な理由は二つ。

先ず、攻略に出る人が少ないこと

そして、ベータテストに比べて敵の難易度がかなり上がっていることだ。


これら二つが組み合わさると状況はかなり悪化する。


最近ではゲームに知識を持っていた人が団結し、本格的に攻略を始めたそうだが、やはり難易度がキツイらしい。

何でも、一番弱い筈のスライムが何故かフィールドボスと同じくらいまでステータスが上がっていたり、知能が上がっているとか。


勿論当のフィールドボスはもっと強くなっている。

フィールドボスを倒さないと次の街へ進めないため、この巨大な始まりの街以外に拠点は無い。




その情報で戦う人も更に少なくなっていった。





遂には「この世界でのんびり暮らす」と言う奴らも出てくる始末だ。

なんとも情けない話だと思った。





まあ、戦えない俺の言うことではないが。



俺はフィールドに出て素材を採取し、生産でポーションなどを作ってシュウヤ達をサポートしている。

モンスターに出くわしたらすぐに逃げなきゃいかないが、それ以外ではそんなに危険は無い。

収入もそれなりにある


たまに〈ビギニングフォレスト〉の中で発見された洞窟を訪れては、鍛冶に使うために採掘をしている。

こちらの方がモンスターに出くわす可能性が大きいが、今の所危険な状況になったことはまだない。

剣や鎧を売った方が儲かったしな


ユウリはと言うと、料理アビリティを入手したあとは料理しまくって露店で稼いでいる。

お陰で宿代も簡単に払うことができ、安定した生活を送っている。









そんな現在、俺はいつも採取をする筈の時間帯に、町の工房で《鍛冶》を使う武器作成をしている。


理由は、久しぶりに鉄鋼石を入手したからだ。

久しぶりと言っても、数日ぶりだが。



熱して真っ赤になった金属を、何度も何度も槌で叩く。

現れる赤い丸が叩くべき場所を示し、俺はリズムゲームの様な感覚で現れる赤丸を次々に叩いていく



「お兄ちゃん、依頼入ったよ~」



工房の扉の隙間からユウリが顔を出す。




因みにここは俺の店だが、店の裏に今俺がいる工房が設置されている構造だ。

この間、鍛冶で作った武器・防具を露店で売ったらかなりの金になったから買った。




依頼というのは、俺の店の方で作って欲しい武具があるのだろう。

最近では戦う人もいないため、客が少ないが


「ちょい待ち。今行くよ」



俺は一旦作業をウィンドウから中断し、額の汗を拭う。

そして、台の上に置いてある鉄の塊を見る。


何とか刃物と呼べる形にはなったが、まだまだ鍛えが必要だ。

《鍛冶》のアビリティレベルが上がれば、速度とクオリティが上がる筈。


とまあ、余談は置いといて。





「いらっしゃーい。何を作って欲しいんだ?」



俺は工房から出て、お客さんに営業スマイルを向けた。

だが俺の店にとって久しぶりのお客さんは、俺の店の常連だった。



シュウヤだ。



「おう、さっきフィールドで狩ってたら剣が折れちまってさ。新しいのを頼むぜ」


そう言って彼は背中の長剣を抜き、カウンターに置いた。

剣の先っちょが折れ、刃の部分に亀裂が走っていた。



「じゃあ代金は1200Gな。にしても、どうやったらこんなになるんだよコレ。」


「耐久値が下がってるのに気づかなくってさ。弱った状態で思いっきり叩き斬ったからそれで折れたと思う」


「ったく、大事に扱えよ。じゃ、しばらく待っててくれ」



俺は溜め息を吐きながら工房に戻った。



さっきまで作っていた剣を使うか、と判断し、俺は槌を握り直した。





台の上にある金属の塊に集中し、槌を全力で振り落とす。


「せいやっ」


カンッ、と鈍い金属音が工房に響く。


次に赤い丸が金属の上に表示される。

長剣の形をイメージすると、自動的に表示されるのだ。



俺はしばらくリズムゲームの様な鍛冶を続け、ようやく鉄の塊を剣の形に仕上げる。


そして《細工》アビリティを使って革細工をし、剣の柄を革で巻いて持ち易くする。




これで、簡単な長剣の出来上がりだ。

意外に時間もあまり掛からず、作るのも難しくはない。


まあ、今回は作りかけのお陰でいつもの半分くらいしか時間が掛からなかったが。



「おーい、できたぞー」


俺は営業スマイルを完全に捨て、出来上がった長剣を工房からシュウヤに見せる。

そしてトレードを送る。


「ありがとうございました、と。」


シュウヤが代金を入力し、俺は長剣を入力する。

すると、長剣は向こうの方のインベントリに移動し、代金は俺の残金に加わった。


「それじゃ、気をつけて狩りをして来いよー。戦闘したことの無い俺が言うモンじゃないが。」


「おう。また武具が壊れたらここ来るわ。」


「そんなしょっちゅう壊されてたまるかっての」


そんなやり取りを終え、俺とユウリはシュウヤを見送った。



さて、空腹ゲージも減ってきたし、ユウリのご飯でも食べるか。



そんなことを考えながら、俺はユウリの頭に手を置いた



「お兄ちゃん、最近私の頭撫でることが多いよね...」



別に良いじゃないか。


減るモンじゃないし。







こうして、俺にとって平和と言える一日を、生産もしながらのんびりと過ごした。


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