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3:Reunion

四年前、俺がまだ十歳の時、俺の両親は仕事の都合で俺と妹を置いて外国へ行った。

親戚の家に置いておくと言われたので、俺は何の反対もしなかった。

今思えば、何故反対しなかったのか、俺にはわからない。


親戚の家に預けられたのは俺と、妹の悠里だ。

彼女は俺より一つ年下だが、俺より早く親戚の叔父さんの家での生活に慣れていた。

俺達は当番制で家事をこなし、叔父さんに迷惑の掛からない様にしていた。


そんなこんなで、俺達は叔父さんの家でこの四年間を過ごしてきた。

両親もたまには俺達と会いに帰ってくるが、直ぐにアメリカに戻って行く。


そして先週、悠里は両親に誘われてアメリカに行っていた筈。

日本にいる筈が無いのだ。




「何で...ここにいるんだ、悠里」

「お兄ちゃんこそ...」



《CFO》開始から約一時間。

始まりの町の道端で、俺はアメリカにいる筈の妹と出会ってしまった。


「久しぶり、だな」

「……うん」


こんな状況で、会いたくはなかった。




悠里の外見は現実と殆ど変わってない。

肩くらいまで届くくらいのショートボブの黒髪に、深く黒い瞳、そして綺麗なくらい白い肌。


俺と同じで、変える余裕なんて無かったんだろうか。

そのお陰ですぐに悠里だということが分かったのだが。


「アメリカからダイブインしてたんだけど、突然地震が起きて、あんなことになって......」


(ってことは、全世界でも同じことが起こってるのか......)


俺は悠里の話に相槌を打ちながら情報を整理した。




悠里の話から得た情報を纏めるとこうだ。


一つはやはり、《CFO》のソフトを持っていなくとも、《電脳世界》にいた人達は皆ここに来てしまったということ。

次に、《CFO》のソフトを持っていなかった場合はキャラメイクが発生しなかったこと。

悠里の頭の上には【ユウリ】と表示されているが、電脳世界のアバター名と同じだ。

そして最後に、アメリカはまだ朝なのでダイブインしている人が比較的少なく、あとから入ってくるかもしれないことだ。

勿論それは日本でもまだダイブインしていない人達も含む。


「とりあえず、今はじっとしていた方が良いな」

「そうだね...私、ゲームのことなんてあまり知らないし...」

「それなら俺だってそうだけど、詳しいことは集弥に聞けば良い」


俺はユウリの頭に手をポンと乗せて撫でた。


今は焦ることが何より致命的だ。

冷静に情報を分析し、安全を優先して行動した方が良い。

少し場を和やかにした方が効果的だと俺は思った。


「お兄ちゃん、私もう子供じゃないのに...ふぁ...」


ユウリが先程の緊張振りからは考えられない様な緩んだ笑顔になる。

俺は彼女の笑顔に少し救われた気がした。


それからしばらく俺は、ユウリの緩んだ笑顔に癒され続けたのだった。

現実逃避の一種かもしれないけど、今くらいは良いだろう。






◇~◆~◇~◆







「...で、それを報告しに戻ってきた訳か。あんな別れ方したのに、格好良いのが無駄になったじゃねーか」

「知ったことか。こっちは情報が必要なんだ」


俺はシュウヤにコールし、先程の噴水で再会した。

シュウヤは何やら文句を言っていたが、俺は気にしない。


「お久しぶりですシュウヤさん」

「あ、久しぶりだねユウリちゃん!」


シュウヤはユウリを見てすぐに表情を明るくした。


「で、お兄さんはどんな情報が必要なんだい?」

「キモッ、急にどうしたんだお前」

「まーた何を、いつも通りじゃないか」




シュウヤの信条その一:女子の前では必ず紳士に成る。


顔は一応イケメンだそうで、そうなると女子にはかなりモテるらしい。


うん、とても腹が立つな。

爆ぜろリア充。



悠里は死んでも渡さん。



「おーい、ナギサ君?殺気を抑えて貰えないかな?というか何でそもそも殺気なんか放ってるんだい?」

「良いからそのキモいキャラ止めろ」

「お兄ちゃん、そろそろ本題に...」



おっと、そうだったな。

絶望のゲームだというのを忘れかけていたよ。


『イヤ、忘レルナヨ......』


何か聞こえた気がしたが、多分気のせいだ、気のせい。



「コホン、本題に入ろう」

「おお、助かったぁ。ありがとうユウリちゃん、この僕のために...!すいません何でもありません」


俺はシュウヤを睨みつけ、無理矢理話を続けた。


「このゲーム、現在は何人いる?」

「確か、メニューから調べたら8万人弱って表示されていたぜ」


8万人...世界中から《電脳世界》にダイブインした人数にしちゃ少なくないか?


「8万人?アメリカでそんな少ない時なんて無いよ、例え朝でも」

「じゃあ平均的に言えばどれくらい?」

「大体15万人は行くと思うけど」


流石アメリカ、多いな。

それ程《電脳世界》が使われているということか。


にしても、これだと数が合わない。

どういうことなんだ?





アメリカだと平均は10万人くらい、そして俺達の使っている日本サーバーの平均ダイブイン人数も大体8万人前後。

ってことはサーバーごとに別なのか?

いや、なら何で日本サーバーにいる筈の俺達といるんだ?


「なあ悠里?」

「ん?」

「お前、アメリカから日本サーバーに入ったのか?」

「へ?そうだけど......」


やっぱりか……。

早くそれを言って欲しかった。

が、それをどうこう言ったところで何かが解決する訳じゃない。



となると、やはりこんな状態になったのは日本サーバーだけなのか?

いや、《マザーネットワーク》のAIは世界各国も共通だから世界中がこの状態っていう可能性の方が高いかもな。



「お、ナギサ君は何やら考え事で忙しいみたいだね。じゃあユウリちゃん僕とお茶でもすr――ゴハァッ!?」



空気を全く読めてない馬鹿の横っ腹は、俺が蹴り飛ばしてやった。

こいつ、今ここがどこで、誰の妹に手を出しているんだかわかってるんだろうか。

あれ?意識しなくても後半からギャグペースに変わってる...


5/4/13:悠里の髪型変更

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