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2:Game Start

お気に入り件数が50件を越えていました!

本当にありがとうございます!

次に目が覚めると、俺はまた真っ白な空間にいた。

だがさっきと違い、今度は俺一人しかいない。


『作成の間へようこそ。これから貴方のキャラクターを作成します。先ずは種族を選んで下さい』


システムメッセージが俺の目の前に開いた。


だが俺は何もしない。

何もする気が起きない。


俺はまだ、この状況を理解し切れていなかった。



《マザーネットワーク》のAIが暴走したこと。

《電脳世界》そのものがVRMMO《Cyber Fantasy Online》になったこと。

《CFO》がログアウト不能となったこと。

そして、《CFO》で死亡すればステータスと記憶が失われること。



《マザーネットワーク》が嘘を吐いているという可能性がある。

なら、まだ完全に信用しなくていいのかもしれない。



――いや、違う。俺はただ怖いだけだ。

あれは決して冗談などでは無いと、俺は分かっている筈なのだから。



もし俺がゲーム内で死んだら、記憶が消えてしまう。

例え現実で死ななくても、それは死と同等だろう。



俺は震える指で種族リストを殆ど見もせず、一番上に表示されていた《人間(ヒューマン)》を選択した。


『貴方のキャラクターの容姿を決めて下さい』


目の前に現実の俺の姿が現れた。

黒髪に黒い瞳で、特にこれと言った印象の無い地味な顔だ。

身長は平均より少し高いくらい。


恐らくこれを基準として容姿を変えるのだろう。

自分の姿をこんな風に見たことはないのだが、新鮮に感じる余裕もなかった。


俺は何も弄らず、そのまま『決定』を押した。

《電脳世界》のアバターとも、現実世界の自分と殆ど変わりは無い。

多少の修正が掛かるだけだ。



『次は初期アビリティを十個まで選んで下さい。』



俺はこれから何をすべきか。

それを決めてからアビリティを選ばなくてはならない。


数分程考えたあと、俺は何の躊躇も無くアビリティを選び始めた。



――俺は、臆病者だな。



そんなことを思いながら、俺はアビリティ十個を選択し終えた。


『最後に、貴方のキャラクター名を入力して下さい』


俺は目の前に現れた半透明なキーボードに【Nagisa】と入力し、『決定』を押した。



『それではどうぞ、生マレ変ワッタ《電脳世界》ヲ、《Cyber Fantasy Online》ヲ、ドウゾオ楽シミ下サイ。』


システムメッセージと共に()の声が響き渡り、俺の視界は光に覆われた。










気がつくと、俺は広場の様な場所で立っていた。

広場は大きな円形で、足場には石畳が敷かれている。

中心に大きめの噴水が設置されていた。


俺は噴水のすぐ傍にいた。

周りには、多くの人が溢れかえっている。

皆、現代日本では絶対に見ない服装をしていた。

ある人は黒くてボロいローブを羽織り、ある人は革でできた胸当てを着けている。

またある人はただの長い木の棒を持ち、ある人は長剣を腰にぶら下げている。



殆ど皆どうすれば良いのか分からない顔をしていた。


先程の白い空間で見かけた人もいたが、人数が全然足りない。

人数が多すぎるから、幾つかに割って別の場所に飛ばされたのだろう。



「あ、渚!」


「集弥...なのか?」


集弥になんとなく似ていた男が手を振りながら近づいてきた。


いや、確かに集弥なのだが、容姿が少し変わっていたので認識するのに時間が掛かった。


髪と瞳の色が赤に変わっていた。

服装は焦げ茶色の胸当て、その下には青いTシャツに茶色いズボンを履いていた。


彼の頭の上には【Shuya(シュウヤ)】と表示されていた。

電脳世界のと同じか。



「お前、姿は何も変えなかったのか?」


「変える余裕なんて無かったよ。あんなことが起こったあとじゃあね。」


俺は泣き崩れている人や、混乱して他の人に状況を確認している人達を指差した。


「確かにそうけど......やっぱゲームだから、姿くらいは変えたかったんだ」


流石はゲーム廃人。と言いたかったが俺は黙り込んだ。





「で、これからどうするんだ?」


シュウヤが何気なく尋ねた。

だが俺は、すぐには答えられずに俯く。


「俺は、生産で攻略を手伝うよ。」

「へ?でも、お前なら普通に戦える筈だろ?VRなら尚更...」

「――いんだ」

「え?」


「怖いんだよ。もしものことがあったら、と考えると。今戦おうとしてる人には悪いけど、戦意の無い俺には何もできやしない」


「...そうか」


シュウヤは頷き、それ以上は何も言わなかった。



「じゃあ、せめてフレンド登録でもしようぜ」

「ああ、そういえばそんなのもあったっけ」


フレンド登録とは携帯番号の登録の様なモノだ。

相手との通話が可能となり、いつでも連絡できる様になるからだ。


フレンド登録をした後、攻略に参加すると言ったシュウヤとは別行動となった。













この《始まりの町》は、教科書で見たことがある中世ヨーロッパの街並に近い。

建物はレンガでできていて、教会なども町に存在している。


そんな町の中、明らかにプレイヤーと認識できる人達はほぼ全員混乱していた。

泣き崩れたり、叫んだり、暴れたり、自分の頬をつねっている人達は数えてもキリが無い。

中には狂ってしまって他の人に暴力を振るうことでストレスを発散している奴もいる。



だから例え道端で人が泣いていたとしても、普通なら気にはしなかっただろう。

そう、普通なら。


その相手がもし、俺の妹だったら、俺はどうすればいいのだろうか。



「……え?お、お兄、ちゃん……?」


「お前...悠里...?」



歩道の真ん中で、顔を涙でぐちゃぐちゃにしていたのは俺の妹、宇原(うはら)悠里(ゆうり)だった。

5/4/13:シュウヤの容姿変更

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