25:Determination
ホントごめんなさい。
更新するたびに謝ってる気がしますがごめんなさい。
あまりにも執筆する時間が途切れ途切れなので自分の設定すら忘れている場合が多く、前回を少し改稿しました。
他にも矛盾点はたくさんあるかもしれないので、見つけたときは知らせてください。
「……誰だ、お前」
辛うじて声を出すことができたのは、俺だけだった。
灰色――――いや、砂埃で灰色に見えていた『白色』の髪は、大モグラを吹っ飛ばした衝撃で激しく揺れていた。
突如現れた謎の少女。
砂埃の中、注意して観察してわかったのが、彼女が所謂『アルビノ』であることだ。
色素の無い白い髪に、血の様な赤色の瞳を持つ人間。
正確に言うとアルビノとは、メラニンの生合成に係わる遺伝情報の欠損により 先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患、あるいはその症状を伴った生物。
しかしこれくらいなら、アバター作成でも十分再現できることだ。
「貴方こそ誰?」
少女は少し困惑したような、しかし決心は固まっている目でこちらを見た。
そして砂埃も消えて、彼女が右手だけで振り回していた武器は、金色に輝く巨大な槌だった。
柄の部分だけでも彼女の背丈を越えていた。
『オオオオオオオーーーーッッ!!』
飛ばされたボスフィールドの中心で、まだ正式名ディグリグこと、大モグラが咆哮を上げた。
たったの一撃で10メートルほど飛ばせたのだ、このプレイヤーが只者じゃないのは確かである。
しかし、乱入のおかげで検証ができなかった。
「――邪魔」
その一言は少女がシュウヤに向けて言ったのか、モグラに向けて言ったのかはわからない。
ただ一つわかったのは、次の瞬間、大モグラがダンジョンの壁にめりこんでいたことだけだった。
「……【ガイアブレイク】ッ!」
ドゴォォッ!と大地を揺さぶる様な轟音が洞窟内で木霊し、振動で俺達はバランスを崩しかける。
「な、なんだこの馬鹿げた力は……」
覇牙さんが目を丸くしながら呟いていた。
シュウヤは口をあんぐりと開けていて、クレナさんはその場で固まってしまっている。
『なんて奴だこいつ、ゲームバランスが崩壊してしまうじゃないか』
「いや、それお前が言えることじゃないよな…… 俺もだけどさ」
「なあナギサ。 これ、どうする?」
シルブにツッコミを入れていた俺に覇牙さんが問いかける。
「一応、シュウヤを一人にするのも危険だから全員で行くしかないだろ。 乱入者さんはどうやらかなり強いみたいだし、な」
「そうね、何やら事情もありそうだし」
「検証も終わってないし」
全員納得し、ボスフィールドに足を踏み入れる俺達。
しかし、大モグラのHPはまだ8割以上残っていた。
「思ったよりしぶとい……あれ、貴方達、悪いけど、ボスフィールドの端っこにでも行っててくれない?戦闘の邪魔だから」
アルビノの少女が再びこちらに気がつき、忠告する様に言った。
「そう言われても、この獲物は俺達が最初に見つけたから、横取りされる訳にはいかない」
俺はなるべく冷静に答える。
へぇ、と面白そうに口端を上げる少女。
「じゃあ、狩れるものならやってみてよ。私は貴方達じゃ倒せなさそうだから助けてあげただけなのにね」
明らかな挑発だ。
だけど、乗ってやろうじゃないか。
「……そうさせてもらう」
「あ、おい、ナギサ!?」
硬直から解けたシュウヤの驚きの声に構わず、俺は大モグラを目掛けて全力疾走を開始した。
そして右手に持った長剣を左手に持ち替え、空いた右手で腰の毒鉄砲を掴む。
「毒でも食っていろ」
俺は毒鉄砲で大モグラの口を狙い撃つ。
アルビノの少女に気を取られていた奴は突然口に当たる紫色の液体に驚き、俺を睨む。
だが、もう遅い。
『オ、オオオオォォォ…………ッ!?』
奴は迫力の失った唸りを上げ、動きが止まる。
しかしそれは一瞬だけの出来事だった。
『オオオオオオオオオオオオ!』
大モグラの身体が赤い光を放ち、先ほどの弱体化も解けた。
どうやら、状態異常は効かないらしい。
仕方なく、銃をインベントリに仕舞った俺は再び走る。
――――大モグラとは逆方向へと。
咆哮を背後に聞きながら、俺は皆のいる位置、扉の前にかけよる。
「……何のつもり?」
同じく扉の前にいたアルビノの少女の質問に、当初の作戦を試すだけだ、と返す。
「悪い、皆、一旦散ってくれ!」
「了解だ!」
「……なんだかわからないけど、そうするしかなさそうね」
扉の前から4人とも散らばり、扉の前で構える俺と、それを目掛けて突進する大モグラ。
大モグラの突進を避けると、何の問題もなくボスフィールドの張られた部屋から飛び出した。
つまり検証の結果、ボスモンスターはボスの部屋、あるいは出現した位置から出て、新たにボスフィールドを生成できることができることがわかった。
――――良い情報を入手できた。
「【アビリティゲイン】」
アビリティ名を呟きながら、再び武器を持ち替え、モグラの顔に向かって”飛翔”する。
「【シルバーソード】!」
横に振った剣は微量の銀色の光を纏い、モグラの両目を斬った。
『オオオオオオ!?』
痛みで唸るモグラを横目に、俺は他の3人に向かって叫ぶ。
「皆!早く攻撃をコイツの頭にぶち込め!」
「……ッ!?そ、そうだ!俺達も行かねぇと!」
シュウヤがハッと気がつき、長剣と銃を構えて走り出した。
覇牙さん、クレナさんもシュウヤのあとに続く。
「【スパイラルスラッシュ】!」
長剣を片手に回転しながら大モグラに高速で斬りかかるシュウヤ。
その斬撃を大モグラの両腕に一回ずつ当て、シュウヤは急いで後ろへ下がる。
次の攻撃の道を作るため、防御に使われそうな腕にダメージを与えてくれたのだ。
「【ウィンドアロー!】」
次にクレナさんが防御のできない大モグラの目を狙って、風のごとく吹き抜ける弓アビリティを放った。
二度も目を攻撃されたモグラは悲痛の叫びを上げ、動きが鈍った。
そして、その隙にとびかかる影があった。
「【フレイム・ディバイド】!」
炎を纏った大剣を大きく振りかぶった覇牙さんの渾身の一撃は、モグラの脳天に叩き込まれた。
「うぉぉぉぉぉ!」
『オオオオオオオオオオオ!!』
バキンッ、と何かが弾かれる様な音が響き、覇牙さんの身体は折れた大剣とともに飛ばされた。
「覇牙ぁぁぁ!」
起き上がったシュウヤが覇牙さんの名を叫ぶ。
彼のHPは……まだある程度は残ってるみたいだ。
全員、戦闘は続けられる状態だ。
モグラのHPはまだ5割ほど残っている。
「そろそろ、私が動いていい?」
アルビノの少女がうずうずとハンマーを振っていた。
そして、再び大モグラが突進する。
『私を召喚してくれ、ナギサ』
「……目撃者が多すぎる、だめだ」
『いずれは攻略に役立てなければならない。 早く決着を着けるためにも、やるべきだ』
「…………」
そもそも、俺は何故シルブの存在を知られるのが嫌だったんだ。
面倒くさいから?
いいや、違う。
俺はこの重い責任から逃れたかっただけだ。
何人もの『記憶』を救う役なんて、俺には重いと思っていたんだ。
だけど、そんなのもうごめんだ。
だって、見殺しと大して変わらないじゃないか。
『オオオオオオオォォォ!!』
「【召喚:シルブ】【モード:ドラゴネス】!【召喚:ノワール】【モード:ブラックナイト】!」
眩い光の球が俺達の目の前に出現した。
俺はただの一般人。
だけど今は違う。
この世界を終わらせることのできる力を持ってしまったからには、それに伴う責任を果たさないといけない。
俺は、『覚悟を決めた』。
シリアス苦手だ←←




