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23: Dungeon Hunting

「「そぉぉりゃあああああッ!」」

『オオオオオオオオッッ!!』


まずは前衛の二人、シュウヤと覇牙さんが前方へと駆けた。

正確には、オークを回り込む様に曲線を描いて走ったのだ。


二人のおかげでオークの気が散っている内に、俺はインベントリから取り出していた水鉄砲を構えた。

この前のものを今回の作戦に合うように改造したものだ。


当然、中に入っているのはただの水ではない。


「これでも食らえ」


水鉄砲の銃口から勢いよく射出されたのは、毒々しい紫色の液体だった。

それはオークの大きく開いた口にぴしゃりと当たり、跳ねた。


しかし、奴の舌に当てたからか、液体の効果は出ていた。


『麻痺』と『弱体化』だ。


オークは身体の動きが鈍りはじめ、苦痛に歪んだ顔で膝をついた。


「クレナさん!」

「任せて!」


そして俺はクレナさんに合図を出し、彼女は弓を構えた。


「【スナイプアロー】!」


ビュン、と弓の弦が跳ねると同時に矢は飛び出し、見事オークの左目に命中した。

所謂、部位破壊を狙ってやったのだ。

どんな動物でも、大抵は眼を潰せば視界も封じられるしダメージも大きい。

それに、硬度もない。


ただ、狙うのがかなり難しいため、膝をついて動きを止める瞬間を待っていたのだ。

弱体化で奴のステータス全体を一瞬だけ大幅に下げ、麻痺でそのまま動きを封じる。

『己を支える筋力』や防御も低くなるのでオークをまともに立てなくできるという考えだ。


この毒ポーション水鉄砲は俺とリビアさんで考案した合作だ。


『弱体化』のポーションは、簡単に作れるが効果が数秒以上は持たないのと、口の中に入れなければポーションは意味を成さないことであまり使われていなかった。。


だから麻痺で弱った体制を持続させること、そして水鉄砲でそれを口に当てるというのを考えた。

命中と飛距離を伸ばすため、改造によって少し大きめな拳銃型の水鉄砲になった。


さしずめ、『毒鉄砲』といったところか。


もうこれチート武器でいいんじゃないか?

元は水鉄砲だけど。


『オオオオオオオオオッッ!?』


何が起こっているのがわからないのか、オークは驚きと怒りと恐怖の混ざった表情で吠えた。


「「さっさと、倒れろぉぉぉぉ!」」


そして、シュウヤと覇牙さんが弱って麻痺したオークを全力で剣で叩きつけ、オークが前へ倒れ込む。


「よし、今だ!」


俺の止めの合図とともに、全員が自分の持つもっとも高威力のスキルを発動し、狙いをオークの後頭部へと定めた。

もっとも高威力、つまり多少の溜めは必要な様だけど、麻痺で任意では動けないオークが相手ではそれも関係ない。


「【チャージブレイド】!」

「【メテオクラッシュ】!」

「【豪速風矢ウィンドブロー・アロー】!」


三つの光がオークの脳天に突き刺さり、その巨体は光の粒子になって飛び散った。


流石にオーバーキルなのではないかという気がしてきたが、思ったより早く倒せたからよしとする。


「皆、MP消費は?」


シュウヤの問いに、全員自分のMPを確認した。

俺は毒鉄砲を撃つことくらいしかやっていないので何も減っていない。


「最後ので結構取られたけど、まだ余裕だぜ」

「同じく」


覇牙さんもクレナさんもどうやら問題ないようだ。


「ねぇ。 今の感じからしたら、高威力スキルじゃなくても全員で後頭部を攻撃しまくれば勝てるんじゃない?」

「ああ、次からはそれで十分だということがわかったから、成果としては良かった」


クレナさんの最もな提案に、「俺もオーバーキルだったと思ってた」などとは言えず、とりあえず適当(、、)に返しておいた。


「じゃあ、アビリティの成長はどれくらい?」


シュウヤのその一言で全員ハッとし、ステータスを確認し始めた。


「すげぇ……【大剣】のアビリティLvが2つは上がったぜ……」

「俺は【長剣】のLvが1上がった」

「私は【弓矢】が3上がったわ……」


三人が顔を見合わせた。


「「「何コレ超おいしいじゃん」」」


いや、俺はよくわからないのだが。

だってゲーム初心者だし。


『主が初心者といってもきっと笑われるだけだと思うぞ……』


シルブが念話でそう呟いていた。

たぶん勝手に俺の思考を読んだのだろう。


「(はあ? 何でだ?)」

『……いや、わからないのならいい』


なんだそれ、気になるじゃないか。










「よし!これで5体目!」

「ステータス上げも順調だな」


30分ほど経過したが、俺達の狩りは順調だった。


俺には新たに「【射的】Lv1」というアビリティが追加されていた。

何度か毒鉄砲で討伐補佐をしたからだろう。


これを成長させると「銃】のアビリティ辺りに進化するのだと思う。



「おーい、次行くぞ」

「……待って」


何時の間にか仕切っていたシュウヤの掛け声に、そう返すクレナさん。


「どうした?」

「あれ」


俺の問いに、彼女は指でその理由を示した。

彼女が指していたのは、少し遠い位置に見える何かだった。


扉だ。

遠いから正確にはわからないが、少なくとも5mはありそうな鉄製の扉が、俺達の視線の先にあった。


それの纏う雰囲気は、どちらかというと門だったが。


迷宮並みに入り混じったこの中でよく何か見つけたものだ。



「あー、明らかにボスっぽいんだが」


シュウヤがそう指摘する。

だが、不思議と俺は動じない。


「慣れてるから大丈夫だ」

「いや、慣れるものなのか、これ」


まあ、ボス2体も倒したわけだし。


3体目は果たしてどんなのか。


「これからボスが相手だというのに全く表情変わってねえしこいつ……」

「慣れてるって一体どういうことよ……」


覇牙さんとクレナさんまでもが呆れた感じの視線を俺に向けていた。




はて、俺はこいつら全員が呆れる様なことを何かしたんだろうか。


勿論ボス倒して終わり、ではないですね。

ダンジョンなめんなよナギサ。

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