15:Departure
久しぶりの更新。
今回かなり短いです
「お兄ちゃん?」
「はい!何でしょうかっ!」
「反省、してる?」
「はい!当然でございます!」
ユウリの冷ややかな視線が俺に突き刺さる。
冷や汗がダラダラと額や頬をつたる。
正座をしている足が痺れてくるのが感じられるが、立ち上がるつもりは微塵も無い。
ユウリが怒っているからだ。
町に辿り着き、家もとい俺の店に入った瞬間、俺はユウリの部屋に引きずられ正座をさせられた。
ノワールとシルブは俺の腕輪の中だ。
ユウリは怒ると怖い。
めちゃくちゃ怖いのだ。
今まで、ユウリが切れたことはほんの数回しかない。
だけどその度、必ずと言っていいほど俺は彼女に負けている。
「本当に、後悔してる?」
「はいぃ!」
汗を拭いながらそう言うと、ユウリがしゃがむ。
そして、何故か抱きついてきた。
「はい?」
「心配・・・・・・したんだよ」
何かが彼女の頬をつたった。
それは、涙だった。
泣いていたのだ、彼女は。
「・・・・・・ごめん」
俺には、そう言うことしかできなかった。
朝8:26分。
目が覚めると、窓から大勢の人が見えた。
恐らく、次の町に行く人達だろう。
次に行く町として、解放された幾つもの街の内、テンプレートな選択肢は4つ。
都市ルインス、剣の里ベルク、魔法街マギカ、そして職人の里アールだ。
都市ルインスは大きめの都市であり、この大陸の攻略の拠点となるだろう場所だ。
剣の里ベルクは剣専用のアビリティやスキルを教え、その周辺のモンスターは剣で鍛えるのに向いている。
魔法街マギカは魔法を教え、その周辺のモンスターは魔法で修行するのに向いている。
職人の里アールはその名通りNPCの職人達が集まり、生産を教えてくれる。
「じゃあ、出発しようか」
「うん!」
店の荷物をインベントリに放り込み、ユウリと店を出る。
そして〈ビギニングフォレスト〉の入り口まで、人混みの中を歩いた。
幾ら8万人が分割されて別の〈始まりの町〉にいるとしても、やはり人が多い。
とりあえず、俺達は森を10分ほどかけて抜けた。
意外に早かった。
ただ次の町に行きたい場合は、モンスターを無視して移動すれば良いからなのだろう。
そこまで大きい森でもないし。
森を抜けると、今度は草原に出た。
四つの分かれ道があり、それぞれの道に町の名前の書かれた看板が立っていた。
「君達はどこの町に行くんだい?」
分かれ道で俺達を待っていたのは、ユウリがいるため発動したと思われる紳士モードになっていた、シュウヤだった。
どうやらずっと待ってくれていたらしい。
「うん、まずその気持ち悪い口調をやめろ」
「えー」
女性の前でだけ態度を変えているのもかなり寒気や違和感が発生する。
「えーと、気を取り直して。お前らはどこの町に?」
「職人の里アール。」
俺とユウリが行くと決めたのは、職人の里アールだ。
恐らく、そこがルインズの次に人気のある場所だろう。
何せ、攻略に参加しているプレイヤーに比べて、戦わないプレイヤーの方が圧倒的に多いのだから。
この進展を期に、攻略に参加してくれるプレイヤーが増える可能性もあるが。
「俺は剣の里ベルクかな、俺も一応剣士だし。銃剣士だけど」
「正直どうでもいい。」
「酷っ!?」
そして、俺は手を差し出す。
だがシュウヤは、俺の手を見てキョトンとしていた。
「え?何だ?」
「握手だっての。また会ったら、俺の進化した生産技術で作った武器、売ってやるぜ」
そう言うと、シュウヤもニヤリと笑った。
「おうよ。俺も、その凄い武器とやらを完璧に扱えるほど強くなってやんよ」
俺達はがっしりと手を握り、そのまま別れてそれぞれの目的地へと向かった。
(なんだかんだでこいつは、俺の店に一番多く通ってくれた奴なんだよな・・・)
シュウヤが常連として来なくなるのを、少し寂しく思いながら。
1ミリくらい。




