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13:A Battle without Silve

二日連続更新~!

『ォォォォォオオオオ!!』


人ならざる雄叫びを上げながら、黒騎士が大剣を両手に駆け出した。


「シュウヤ、二人掛かりでやるぞ!」


「っておい!俺まだ状況に追いついてないんだけど!」


俺とシュウヤは前方へと駆け出した。



俺は【アビリティゲイン】を発動させたまま。

シュウヤは長剣と銃を装備している。


考えてみれば、シルブがいてもこの黒騎士に勝つのは難しいだろう。


いくら隠しボスとはいえ、シルブは俺の使い魔として、俺のステータスに合わせて弱体化していたのだ。

弱体化してない隠しボスだと苦戦するのは当然だろう

さっきの落雷も、俺の十倍以上はあるMPを一気に消費してやっとの威力だったのかもしれない。


『それは違うぞ。腕輪に帰還したのは主のMPが切れたからだ。あの魔法は確かに威力が異常だが、使うのは200MPくらいだ。冷却時間がその分異常に長いがな』


やりすぎたに越したことはないが。

シルブとしては確実に仕留めたかったのだろう



シルブは俺のステータスと共に強くなる。

そしてそのステータスは俺の十倍はある。

人の姿になると二倍くらいだが、それでも十分強い。

見た目は小さいのに。



『余計なお世話だ。さっさと攻撃せんと先にやられるぞ』



そんな声にはっとし、俺は走りながらスキルを発動させた。


「【サンクチュアリ】」


それは俺のMP値150中、30MPを消費してやっと使える光魔法。

シルブの使える魔法から選んだものだ。

因みにシルブは全属性アビリティを習得しているから、自分のMPの範囲内ならどの属性魔法も使える。


この魔法は一定の範囲に、闇属性モンスターのステータスを大きく低下させる結界を張る魔法だ。

一応高位の光魔法だから、MPの消費量も高い。

黒騎士は外見とか雰囲気が明らかに闇属性だから、効果的だとは思う。


『グ......ォォォ...オオオオ...』


黒騎士が何かに縛られるかの様に動きが鈍り、足を止めた。

それでも前進しようと足を引きずるが、のろのろとした足取りでかなり遅い。


どうやら予想は的中した様だ。


「シュウヤ!この魔法は効果が高いだけに2分しか持たないから一気に畳み掛けるぞ!」


「了解!」


シュウヤが剣と銃を使って、殆ど動けない黒騎士を好き放題に攻撃している中、俺は急いでマナ草を何本か飲み込む。

視界の端に見えるMPは全開となった。


「【ホワイトショット】」


俺が右手を上げてそう唱えると、光の球が右手から発射され、そのまま黒騎士へと向かっていった。



幾らこのゲームで魔法のMP消費量が威力に比例するとはいえ、俺の様によっぽど高位の魔法を使いたくなければ、MPが足りなくなることはない。

よって、今の俺でもただの高位魔法くらいなら1回くらいは使ってMPが尽きる。

今使った、この時点ではそれなりに高威力な光魔法なら20回くらいは連発できる。


普通のネットゲームなら、高威力な魔法でも30回くらいは連発できるのは普通らしい。

このゲームはVRなので、そう簡単に連発できるとVRらしい現実性の欠片すらも無くなってしまう。

だから魔法のMP消費量は他のネットゲームより高いそうだ。



「【ホワイトショット】」


連発、と念じながら放つ。

そして、MPがみるみる減っていくのを視認しながら、複数の光球を発射するのに成功した。

この魔法の特徴は、冷却時間が延びる代わりに連発ができることだ。

延ばされる時間もほんの数秒単位なので、遠距離からだと大してデメリットにならない。


「全然動かないから怖くないぜ!【チャージブレイド】!」


シュウヤものろのろと動く黒騎士を弄ぶ様に囲んで移動しながら、剣で攻撃している。

俺はマナ草を口に咥えながら【ホワイトショット】を連発している。


黒騎士のHPはまだ10分の1も減っていない。

まだまだ時間が掛かりそうだ


「【サンクチュアリ】が解ける!シュウヤは早く退け!」


「分かった!」


シュウヤが後退し、黒騎士が何かから解き放たれる様に素早く前進した。

間に合った様だ。


「【サンクチュアリ】の冷却時間はまだ終わってないから......【ホーリーバインド】!」


そう唱えると、シュウヤ目掛けて駆け出していた黒騎士は突如前進を止めた。

そして、白く光る縄が出現し、黒騎士を文字通り、縛り始めたのだ。


『オオオォォォォ―――!』


黒騎士は必死にもがき始めるが、剣を持った手も縛られているので縄を切ることはできず、抜け出せない。

ステータスなどは影響してないが、これで動きを拘束できた。


最後に残ったマナ草を頬張り、しゃがんでマナ草を採取しながら【ホワイトショット】を打ち続けた。



拘束が解けたら【サンクチュアリ】で動きを大きく鈍らせる。

【サンクチュアリ】が解けたら再び【ホーリーバインド】で拘束する。

【アビリティゲイン】も解ける度に少し待って再使用する。


俺はマナ草を採取しながらだが、まさにリンチのごとくだ。



これもシルブのチートの様な力があってこそだが。











それを幾度も繰り返し、およそ一時間近くが過ぎる。


現在、午前2時14分。


こちらのHPなどは問題無いが、精神的に疲れてくる。

黒騎士のHPはあと残り僅か。



この調子なら確実に行ける。






そう思った瞬間だった。







『そう簡単に終わると思うかい?』





()の声が聞こえ、黒騎士の全身から溢れる黒い靄が、一気に噴き出し始めたのは。





『オオオオオオオォォォォォ――――――ッ!!!』





大剣は黒い靄を纏い、黒騎士は雄叫びを上げながらそれを振るう。



「な、何だ!?」


シュウヤはそれに動揺し、後退する。

俺はそれに合わせて魔法を放った。


「【ホーリーバインド】!」


そう唱え、見慣れた光の縄が黒騎士に襲い掛かる。



が、それはどういう訳か、容易く弾かれてしまう。



『主、私を召喚してくれ!』


「さっきからやっている!でもエラー表示が出るんだ!冷却時間は過ぎてんのに!」


これも恐らく、奴の仕業なのだろう。

俺達を嘲笑うための仕掛け。

俺達を殺すための、何気無い仕掛け。



「こンのォォォォォ―――ッ!!」


シュウヤが長剣を片手で振り下ろす。

それと同時に、俺も【ホワイトショット】を3発連続で放つ。



が、



黒い靄が、まるで生きているかの様に大剣から伸び、シュウヤごと【ホワイトショット】3発を弾いた。


「のわぁっ!?」


シュウヤは後方へと吹き飛ばされ、地面を転がった。

現実なら病院送りのものだが、HPは大丈夫だから平気だと思う。



『主よ、どうやら奴は防御系の魔法を使っているみたいだ。弱点はあるが、それが―――』



「......やってみる」



俺は前へと飛び出した。

黒騎士は大剣を振るが、咄嗟に【フォーカスブースト】で足を強化し、横っ飛びで避けた。


攻撃はまだ止まない。

右、左、後ろへと跳んで回避していく。

その度、黒い靄が届きそうになるから更に跳び退かないと当たってしまうため、中々近づけない。



一瞬でも、隙を作るため。



俺は【フォーカスブースト】で強化された右足で、黒騎士の大剣の腹を全力で蹴った。

その衝撃で大剣は大きく横へ逸れ、懐が空いた。


俺はそれを見逃さなかった。



その強化された脚力で黒騎士の懐へと飛び込む。

黒い靄に拒まれるが、近づけばこちらのもの。



「【ホーリースピアー】」



黒騎士の懐へ向けられた俺の右手から、光の槍が飛び出す。

それを黒い靄が塊となり、妨げる。


が、そのすぐ後に、何かが割れる音がする。




ガラスが割れたかの様な音と共に、光の槍は黒騎士の鎧ごと貫いた。




『グオ......ォォォォ』




黒騎士はガシャンと膝から崩れ落ち、鎧の隙間から黒い煙を噴きだす。

黒い靄は消えている。





この黒い靄を破る方法の一つ。


それは、零距離から光魔法を当てることだった。

シルブがその魔法のエフェクトを分析した結果、どうやらマザーネットワークが後から書き足したものらしい。

わざとらしく抜けてあったのが、近距離用の光魔法への防御だったそうだ。




黒騎士が光の粒子として散り始める。




シュウヤは横で「疲れたァ――!」とか言いながら背伸びをしている

俺はただ、散っていく光を見つめていた。



そして、一つのウィンドウが開いた。




『【絶望の黒騎士(ナイトメアナイト)】を使い魔にしますか?』




表示された文章を見て、時が止まったかと思った。

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