第5章 宣言
商館につくと、装甲車に乗り換えてすぐに向かう。
〝これより道案内を開始します〟
「ああ、してくれ」
高速道路を1時間走ると、何もない倉庫街にたどり着く。
〝倉庫番号E-897です〟
「ああ」
目的の倉庫につくと、そのまま装甲車でシャッターを突き破り中に入る。
倉庫のだいたい中心に倒れてる、伊月が目に入る。
大丈夫か、伊月。と叫んで近寄る。
〝大丈夫です。身体には問題ありません〟
……また貴様か。と起き上がる伊月。
「少し疲れただけだ」
「そうか」
〝対象の保護をお伝えしますか〟
「否」
〝了解しました〟
「しかし、どうなってるんだ伊月さん」
ちょっと無理しただけだ。と彼女は、顔を伏せてそう小さく言った。
「肩を貸せ」
わかった。と言ってしゃがみこむと、肩に腕をかけられた時に「軽い」と小さくつぶやいてしまった。
「……うるさい」
装甲車に乗せると彼女は「少し任せた」と。言って静かになった。
「商館に連絡してくれ、目標は確保したと」
〝了解しました〟
「四主権帝の動きはどうだ」
〝漆黒姫から、何か発表があるようです〟
「なんだと」
円柱が取り囲みそこにログインしてる人が表示されるいわゆるロビーの奥に、聖域と呼ばれる一般人は見物のみとなるが、四主権帝と呼ばれるある一定条件を満たす人々が参加できる特殊な会議場がある。
そこは現実世界の国会議事堂を、コピーした小さな場所。
そこの中心に、漆黒の髪にゴシックアンドロリータの伊月のアバターが立ち口を開いた。
「われは、漆黒姫。四主権帝の欠番5主権目の姫だ」
会場がざわつきだすと、それに応じて四主権帝が姿を現す。
「四主権帝の王や姫、そしてその眷属達よ。平和な時代は終わった、政府はこの〝領域〟に手を出そうと画策している」
「ばかげてる」や「ほんとうか」という声が、会場のあちらこちらから聞こえてくるが、耳を傾けずに話を続ける。
「今こそ、政府の人間をこの領域に侵入させず。再び平和な時代を迎えよう、そして四主権帝の実質的排除、このゲームの初期化を行う。したがってゲーム作成者には、悪いと思うがこのゲームは欠陥品だ」
これが私の真の姿だ。と言ってアバターに背中から黒い六枚の羽根が生え左手には巨大な剣があらわれ、腰のまわりにはの大な10枚の棺型の装飾。
「諸君らよ、これが私の真の姿。〝ワルキューレ〟だあの時とらえることのできなった、姿であろうな」
赤いアバターが、斬りかかってくる。
「愚かな紅蓮王」
紅蓮王は一瞬にして、木端微塵になり真っ逆さまに落下する。
「あの時みたいに、同時にかかってきてもいい」
装甲車を停止して、漆黒姫の演説を見ていると
「どういうことだ」
〝宣戦布告だと思います〟
「そういうことじゃない、あの技だ」
〝空間割断能力だと思われますが、特定は不能です〟
「あいつが、ひとりでに入手した能力だからか?」
〝はい、そう断定されます〟
「じゃ、戻るぞ」
車を走らせて、商館につく。