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僕と時間

作者: 谷 義弘

家の1階の方からドアの開く音がする。時刻を確かめると午後10時過ぎ。

父親が帰ってくる時間にあまり変わりはないので、いつもこの時間に僕は居間に下りて父親に「おかえりなさい」と一言かける。

それはたいした意味があるわけではないが、単純に母が喜ぶので小6の終わり頃から一種の日課になっている。

薬を飲み、歯を磨き寝る準備をし始める。

ここで本来ならばTVをつけたいが、ぐっと我慢する。

そもそも僕は両親の前でTVやPCに触れることはまず無い。

家族の為に夜遅くまで働く父親、僕らの為に家事をする母親の前でそれらをやるのは少し気が引ける。なにか僕が怠けているみたいで。

そして自分の部屋に戻り11時過ぎに就寝。

これが僕の夜。


次の朝、4時半に起床。

友達には早すぎると言われるけど、あまり寝ていて母親に起こされるのも嫌なのだ。

筋トレとストレッチをして、数学の勉強をする。

6時ぐらいになると母親が食卓で朝ごはんを作る音が聞こえ始める。

それを合図に洗面台に向かう。

髪の毛を整える。小さい頃から睡眠中に動いているらしく、天パのせいもあり鏡を見ると毎朝少し恥ずかしい。ただ気にっている。

朝は忙しいって言われるけど、それは僕の家族の中においては妹のみだ。

姉も父親も会社にはある程度余裕を持って家を出る。

制服を着て食卓に座ってニュースを見るのも日課。

朝6時45分のニュースを母親、妹、僕で見る。

僕と比べ家族は基本あまりミーハーではない。

年頃の妹だとアイドルが好きなのに、見向きもしない。

母親も韓国の俳優に見向きもしない。

僕は実はほんの少し好き。

ただ母親がいわゆる「オタク」に対して反対運動家の一員であるので口が裂けても言えない。

一度「自分のこの性質は父親譲りでは」と考えたことがあるが、今となっては笑い話でしかない。

父親が7時に起床する。相変わらず時間に厳格な人である。

「おはようございます」と一言声をかけて家を出る。

もちろん母親が送りだすのをしっかり待って。


7時15分、急行電車の2号車の一番後ろに乗り込む。

ここは目的地で降りやすく、尚且つ人が少ない。

学校は8時15分にHRが始まるが、その前にいってクラスの知人と世間話をするのが生徒の間では義務である。


話を聞いている途中で先生が入ってくる。

時刻は8時23分・・・。

気がつかなかったがもうHRの時間が8分も過ぎていた。

遅れたことより、先生のネクタイがいつもより落ち着いている色に違和感を感じた。

挨拶をして、黒板にいきなり名前を書きはじめた。

書いている途中で外にいる少年に声をかけ教室内に入れる。

名前を書き終わり、先生から転校生の紹介がされる。

みんなの異様なざわつきより、その少年の名前と雰囲気に違和感を感じた。

ここは転校生の紹介に耳を傾けなければいけないのに、さっきの違和感に押され鞄を開け次の授業の準備の為に手を入れた。

「あ、筆箱忘れた」


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