21曲目
-起動実験当日-
俺は、不安を抱えていた。勢いよく啖呵を切ったはいいものの、本当に上手くいくのだろうか。それに、ミクにだって大きな負担をかけるのは間違いないだろう。下手をしたらミク自体が消えてしまうかもしれない。そんな俺の顔を察し、ミクが話しかける。
「そんな顔しないでも大丈夫だよ。ボクはマスターを信じてる。だから、マスターもボクを信じて」
「すまない、顔に出ちまってたか」
「例えどんな結果になったとしても、ボクは後悔はしないよ。マスターがボクの為に頑張ってくれてる事、知っているから」
「……ありがとうな」
ミクに励まされ、意志を固めた俺は、初音と悠也を連れ第零研究室へと向かった。
SE○A本社へ着くと、俺は受付の麻衣さんに二人を見学させたい旨を伝え、本来は地下施設への一般人の見学は出来ないと言われたのだが、そこを何とかと、特別に許可を貰った。
「ほら、これがIDだ。無くすなよ」
「さっすが社長息子」
「茶化すな初音。それと、これから行く所は撮影、録音、電子機器の持込み禁止だからな」
「わーってるよ」
ロッカーに荷物を預けた後、二人を連れ第零研究室へと向かう。途中俺の白衣姿を見て二人が後ろでクスクスと笑っていた。
「……お前らな」
『さーせーん(笑)』
第零研究室へ着き、扉を開け中へと入る。するとそこには藤原以外のメンバーが揃っていた。
「お待たせしました」
「おっ来たな」
「おっせーんだよ」
「仕方ないじゃない、彼はまだ学生なんだから」
「後ろの子達は?? 」
「邪魔はしませんので、見学させてください」
「女の子の方、何処かで見た事あるような…… 」
小春が初音をジロジロと見つめる
「んなこたどーでもいいんだよ。それよりも早くお前の持ってきたプログラムを披露しやがれ」
「……わかりました」
隼人に急かされ、俺はロボットの設置してあるステージへと上がり、後頭部にあるUSB端子とミクのいるタブレットをケーブルで繋いだ。
「どうだミク、行けそうか? 」
「うーん、どうだろう……。容量的には問題なさそうだけど」
「ヤバいと思ったらすぐに戻ってくるんだぞ」
「分かった」
そう言うとタブレットの画面上からミクの姿が消え、変わりにプログレスバーが現れた。
「頼んだぞ…… 」
インストールをしている間、初音と悠也にゴーグルを渡し、装着するよう促した。ステージ上をゴーグル越しに見る二人。そこにはARで表現されたミクが映し出されていた。
「凄い!!……けどあれって」
「ああ、そうだな」
「どうかしました? 」
そこに映し出されているミクの姿に不満そうな二人に小春が問いかける。
「アンタ、神Pのミク見た事ないだろ」
「???」
「ええ、あそこに映し出されているのは初期型のアバターですよね」
「あっ……!! 」
しまったという表情をする小春。すると後ろからの視線にビクッと体が反応し、恐る恐る振り向くと、鬼の様な形相で隼人が睨み付けていた。
「小春ぅ。テメェ、手ぇ抜いたな!! 」
「ひいぃぃ! ちちちち違うよ隼人くん!! 」
「ああぁん? なぁにが違うってんだ? 言ってみろ」
「あの、その……内部のプログラムを組むので手一杯で……アバターまで気が回らなかった……みたいな」
「っざっけんな! 」
「ひいぃぃ! ごごごごめんなさい! これが終わったらすぐに修正します…… 」
「ったりめーだ! 大体テメェはいっつも…… 」
隼人が小春への説教を始めようとした時だった。研究室のドアが開き、慌ただしく藤原が入ってきた。
「直ぐに実験を中止するんだ!! 」
『!!!』
「どうしたんだ藤原、そんなに慌てて」
「悠麻君!ミクちゃんは今何処に? 」
「今、インストール中ですが…… 」
「クソ、遅かったか……。直ぐに外部ネットワークとの通信を遮断するんだ! 」
藤原の指示にいち早く小春と隼人が反応し、パソコンを操作する。
「藤原さん、言われた通り回線は切ったぜ」
「こっちもこの研究室と外部とのアクセスを完全に遮断しました」
「……そろそろ、教えてくれてもいいんじゃあないか」
問い詰める司に対し、俺の顔を伺う藤原。俺はコクリと頷き、皆にミクの正体を明かした。
「自我を持ったAI……だと」
「信じられない…… 」
「何で今まで黙ってた」
「…… 」
「暴走する可能性を考えなかったのか」
「ミクはそんな事しない!! 」
「何故そう言い切れる? 」
「そ、それは…… 」
立て続けに問い詰める司に言葉が詰まる。すると藤原が俺の肩に手を置き、話し出した。
「もし、ミクちゃんが暴走する様な事があっても、俺達なら対処出来るだろ? 」
「……まあ、手段を選ばなければな」
「なら、悠麻君のやりたい事を、最後まで見届けてあげようじゃないか」
「ででででも、き、危険過ぎませんか」
「そうよ!!いきなり襲いかかってきたりでもしたら…… 」
「……そんな事言ってる場合じゃないみたいだぜ」
全員の意見が定まらないままでいる中、プログレスバーが遂に100%に達し、ロボットが再起動をした。研究室内に緊張が走る。
「何が起きるか分からない。皆、気を抜くなよ」
「ああ」
「さあて、鬼が出るか蛇が出るか」
「ひいぃ」
「ミク…… 」




