15曲目
-翌日-
学校へ着くなり悠也に捕まり、昨日の事についてまるで取り調べかの如く質問攻めにあった。それも休み時間の度に。昼休みに入り俺は悠也から逃げ出す様に教室から飛び出すと、教室前の廊下には初音の姿があった。
「みーつけた♪ 」
「初音っ?! どうしてここに? 」
「あら、私だってここの生徒よ。学校に来るのは当たり前じゃない」
「そうゆう事じゃなくて…… 」
「待てぇぇい悠麻!捕まえたぞ、さあたっぷりと話を聞かせ……!! 」
後ろから追いかけてきた悠也に捕まり、首をがっちりとホールドされるが、目の前にいる初音の存在に気付くと慌てた様子で直ぐに解放した。周りも初音の存在に気付きはじめ、徐々に人が集まりだす。
「ししし初音未来さん!? ……おい悠麻!これはどうゆう事だ」
「……まずいな、人が集まってきた。取り敢えずここを離れよう」
俺達は人集りを掻き分け、二人を連れいつもの屋上へとやってきた。俺は小夜子さんに作って貰った弁当を広げながら初音に問いただす。
「さて、どうゆう事か説明してもらおうか」
「あなたにお願いがあるの!! 」
「お願い? 」
「昨日あなたの正体を知り、同級生って事も分かったから、学校へ行けば会えると思ったの。それでいざ学校へ来てみたら、昔仲の良かった子が『神城君に続いて初音さんも学校来てくれるようになって嬉しい』って喋ってくれたわ」
「同じ学校で同級生って所まではいい。だが、なんで俺の名前が『神城』だって分かった? 」
「そんなの簡単よ。どこのレーベルとも契約していない神Pが、唯一楽曲を提供している大手ゲーム会社S○GA。そこの社長の名前が『神城春樹』、神城なんて苗字そうそういるもんじゃないわ。あの会社がなんで神Pの曲の使用権を持っているのかずっと謎だったんだけど、息子が神Pなら納得だわ」
「……なるほど、名推理だ。それで、お願いってのは? 」
「……私の為に、曲を作って欲しいの」
「曲を?? 」
「ええ、あなたも私の事調べたなら分かると思うけど、私にはオリジナルの曲が一曲もないの」
「そう言われれば確かに初音未来さんのライブはいつも全部カバー曲だな。あ、申し遅れました。わたくし神Pこと神城君の『親友』の菊池です、以後よろしく」
「菊池……君……あっ!! アナタいつも私がライブやる時最前列で応援してくれてる人よね。あなたも神城君が神Pって事知ってたの? 」
「うおぉぉぉぉまさかの認知キタァァァー!! もちろん!むしろ神Pは俺が育てたようなもんっすよ」
「うるさいぞ悠也、あまり調子に乗るな。まあ作る事は出来るだろうが…… 」
「ホント?! ありがとう!! 」
「まだ作ってやるとは言ってない。俺からも条件がある」
「条……件?? 」
「ああ、丁度いい機会だから皆も聞いて欲しい」
屋上の少し人気のない所へと移動し、鉄格子を背に座った俺の前に悠也と初音を座らせ真ん中にケータイを置いた。画面にはミクの姿が映っている。
「俺は近いうちにライブをしようと思ってる」
『ライブ?! 』
「ああ、それも生半可なやつじゃない。世界中を巻き込むような規模のやつだ。これは誰の為でもない、ミク、キミの為のライブだ」
「えぇ?!ボ、ボクの為……? 」
「そうだ。お前の歌声を世界中に届かせてやる」
「そんな事できるの?? 」
「出来る出来ないじゃない、やるんだ。その為には初音、悠也、二人のチカラが必要だ」
「ええー!おっ俺も?! 」
「悠也は昔から俺の曲を評価してくれた。俺が神Pとして有名になれたのは、お前が広報をしてくれたからだ」
「なんだよ急に、照れるじゃんか」
「初音の容姿と歌声はまさに3次元のミクそのものだ」
「で、でも私なんか…… 」
「俺達が出会ったのは、決して偶然なんかじゃないと思ってる」
俺は両手をつき、頭を下げた。
「頼む、俺に力を貸してくれ」
「……私はあなたに救われた。私なんかで良ければ力になるわ」
「ったく、俺が居ないとまともに宣伝も出来ないだろ」
「ありがとう二人とも」
「ありがとね、マスター」
「ああ、絶対成功させてやるからな」
-放課後-
初音に曲を作る事を約束し、家へと帰る。部屋に戻り、パソコンにケータイを繋ぐと、パソコンの画面に警告を示すアイコンが表示された。
(まただ、最近ケータイとパソコンを繋ぐとセキュリティソフトが反応するな)
「おいミク、お前最近変なソフト入れたり使ったりしてないよな?? ……ミク?? 」
「……ん? ご、ごめん聞いてなかった。何だっけ」
「おい、大丈夫か?? 」
「ちょっと、疲れちゃったかな、少し……眠るね…… 」
(疲れただと?今までそんな事言った事なかったのに。ましてやプログラムだぞ、疲れるなんて事あるのか??)
「あ、ああ。ゆっくり休め」
「ごめんね…… 」
明らかに様子のおかしいミクに、言い知れぬ不安を抱きながらも俺はパソコンをスリープにした。しばらくデスクの椅子に天を仰ぎながらもたれ掛かり、目を瞑り大きくため息をつく。そして決心し、ケータイを手に取った。
「ふぅ…… なりふり構ってられないな」
そう言って俺は一本の電話を掛けた。
『お前の方から電話を掛けてくるなど一体どういう風の吹き回しだ』
「親父……取り引きだ」




