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ボカロト  作者: まと。
13/24

12曲目

-翌日-


 今日は教室中が何だか騒がしい。俺は初音(しおん)の事を訪ねようと悠也を探すが、どうやらまだ来ていないようだ。予鈴がなり、担任が教室へ入ってくると同時に後ろのドアが勢いよく開き、悠也が滑り込んできた。


「せ、セーフ」

「アウトだ馬鹿者、早く席に着け」

「(クラス一同)ハハハ」


-昼休み-


 屋上で弁当を広げていると悠也が話しかけてきた。


「おまえ、やってくれたな」

「何が? 」

「何がってお前、ニュース見てないのか?お前の上げた曲、大変な事になってるぞ」


 タブレットで何やら検索をして俺に見せる。ネットのニュース記事の様だ。なにやら俺(神P)の事が色々と書かれているが、どうやら昨日ミクに歌わせてアップロードした曲が記録的大ヒットを飛ばしたらしい。今まで一度も休むことなく週一で新曲を出してた神P(おれ)が、急に1ヶ月近くも音信不通になったかと思いきや、あんな曲をリリースしたもんだから、そりゃあ騒ぎにもなるわな。クラス中がザワついていたのはこのせいか。まあ俺にとっては別にどうでもいい事だが。


「ふ〜ん。それよりもお前に聞きたい事があるんだ」

「……お前、少しは驚けよ。で、話ってのは? 」


 俺はこの間拾った生徒手帳を見せた。


「この子、うちの生徒っぽいんだけど何か知らないか」

「どれどれ、ははーん中々可愛い子じゃねーか。ついこないだから登校始めたばっかだってのにやるねぇ」

「ちゃかすな。学年も同じなんだ、何か知ってたら教えてくれ」

「ええとなになに、初音(しおん)……未来(みらい)……!! 」


 何かに気付いたのかおもむろに生徒手帳を奪い、俺の方を睨み付けた。


「お前、これ何処で手に入れた」

「何処って、街の電気屋だけど」

「会ったのか? 」

「ああ、会った」

「話したのか? 」

「ああ、少しな。話したと言うかぶつかったんだ」

「接触……した……のか?」

「不可抗力だ! てかなんなんだよさっきから」


 再びタブレットで検索を始める悠也。今度は1つの動画を無言で見せてきた。動画の中ではミクの格好をして歌う女の子の姿があった。


「あ、ミクだ」

「そうだ! この子はな、リアルミクとして今話題に上がってる地下アイドル、初音未来(しおんみらい)ちゃんだ!! 」

「そ、そうなのか」

「俺はな、未来(みらい)ちゃんの大ファンなんだ。1度はお目に掛かりたいと思っていたのにお前と言う奴は」

「仕方ないだろ、知らなかったんだ」

「しかし驚いたぜ、顔写真だけじゃ全く分からなかった」

「うちの学生じゃないのか? 」

初音未来(しおんみらい)は確かにうちの生徒だ。だがな、あの子も不登校なんだ」


 そう言って悠也は初音未来(しおんみらい)について熱く語り出した。


初音未来(しおんみらい)


 彼女は自分のその容姿と、無機質な歌声によりリアルボカロと言われている。彼女は神Pの事を崇拝しており、神Pの使うボカロの姿を真似て、地下アイドルとして日々ライブや配信を行っている。うちの高校に在籍してはいるものの、1度も登校した事はない。ちなみに悠也の推しである。


「……とまあこんな所かな」

「つまりお前は素顔を見た事がないって訳だな」

「ああ、だからお前が羨ましいぜ」


 タブレットでは彼女のライブ映像が流れている。なるほど、中々盛り上がってるじゃないか。しかし、ふと聞き覚えのある曲が耳に入ってきた。


「あれ、この曲……俺の曲じゃね? 」

「ん、ああそうだぜ。未来ちゃんはオリジナルも数曲あるけど、主にお前(神P)のカバーを歌ってんだ。なんだ、許可してたんじゃないのか」

「俺は許可なんてした覚えはないぞ!! 百歩譲ってミクの姿はまだしも、曲まで勝手に使われてたまるか!」


 そう言って悠也の手から生徒手帳を奪い返し、残りの弁当をかき込んだ。人の曲を使って有名になるなんて言語道断、一言言ってやらないと気が済まない。幸い、生徒手帳には連絡先と住所が記載されていた為、初音(しおん)の家を探すのは容易だった。

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