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ボカロト  作者: まと。
12/24

11曲目

-9月3日-日曜-am10:00-天気-晴-


 今日は約束通り新しい機材を揃える為、バスに乗り街の電気屋へとやってきた。


「さあ着いたぞ、まずはPC関連の機材からだな」

「ボク、あれが欲しい! 」

「わかったわかった」


 現在のパソコンは恐らく奇跡的にバランスを保っているのだろう。下手にバラしたり、パーツを交換して動かなくなっては元も子もないので、全て外付けで対応するしかない。ミクと相談しながら店内をぐるりと周り、一通り目を通して必要な物を揃えていく。


「あとは…… 」


 他に買う物が無いか辺りを見回していると、正面から顔が見えなくなるほどの荷物を抱えてフラフラとこちらへ歩いて来る人物がいた。俺もケータイ片手に余所見をしていて、その近づいて来る人物に気付くのが遅れた。先に気付いたミクが咄嗟に叫ぶ。


「マスター危ないっ! 」

「えっ?! 」


-ドンッ-


「きゃっ!! 」

「うわっ!! 」


 バタバタと積まれていた荷物が降り注ぎ、俺達はバランスを崩して地面に倒れた。手にしていたケータイはその弾みで落とし、地面を回転しながら滑り、棚の下へ潜り込んでいった。ミクの悲痛な叫び声がイヤホン内に響く。


「うわあああぁぁぁ目が回るうぅぅぅ…… 」


 崩れた荷物の後ろに居たのは同い年くらいの女の子だった。その子は慌てた様子ですぐに起き上がり、地面に散らばった荷物をかき集めた。俺も一緒に落ちた書類を拾い集める。


「いててて」

「ご、ごめんなさい気が付かなくて」

「いや、俺の方こそ気付かなくて……!! 」


 話の途中、俺はその声に驚き顔を上げるとその少女と目が合った。そしてその容姿を見て更に驚き呆然とした。目と髪の色こそ違うが、その容姿はまるでミクそのもので、声色に至っては画面の中のミクと間違う程である。


「うぅ、気持ち悪い……マスター、大丈夫ー? 」


 その余りにもそっくりな姿にじっとその子を見つめていると、徐々に彼女の顔と耳が赤くなっていく。イヤホンからミクが呼び掛けているが、完全に上の空だった。


「……マスター? 」

「キミは…… 」

「ごごごごめんなさい、いいい急いでるので、し、失礼します」

「あ、待って! 」


 急いでその場を去ろうとする彼女を呼び止めるが、彼女は慌てた様子で雑に荷物を拾い上げ、深く一礼をした後、逃げる様に去っていってしまった。


「あの声……それにあの姿……。あれ、ミク?どこ行った? 」

「暗いよぉ、怖いよぉ。マスタ〜どこぉ? 」

「情けない声を出すな、今助けてやる。何処だ」

「ここだよぉ」


 地面にかがみ、陳列棚の隙間を探す。暗がりの中チカチカとライトを光らせているケータイを見つけ、腕を伸ばして何とか取り出した。その際、ケータイの近くに手帳の様な物を見つけたので一緒に拾い上げた。どうやら先程ぶつかった時に彼女が落としたのだろう。手帳の表面には『○○高校』と書かれていた。


「これ、うちの生徒手帳じゃないか」


 確認する為中を開くと、そこには先程の少女と同じ顔写真があった。名前の欄を見てさらに驚く。


初音(しおん)……未来(みらい)…… 」

「ボクにも見せて!!……あっ」

「どうした、何か知っているのか? 」

「えっ?! う、ううん、し、知らない」


 少し不審な返事をしたミクだったが、この時は特に深く問うことはしなかった。


「まあ、明日悠也に聞いてみるか」


 会計をカードで済ませ、持ち帰れる荷物は両手に持ち、残りは配達する様に依頼し、帰路へと着いた。


-帰宅後-


「次、これな」

「はいはーい、えっとこのドライバは…… 」


 持ち帰った機材やソフトをパソコンに次々に接続し、インストールしていく。いちいち設定やダウンロードしなくても全部ミクがやってくれるから大分時間の短縮になった。


「よし、コレで大体の接続は終わったぞ。どうだ、少しは快適になったか」

「うんっ! 増設したHDDとメモリのおかげで大分ゆったり出来るようになったよ」

「ありがと、マスター」

「よし、じゃあレコーディング再開だ」

「おー!! 」


 約1ヶ月振りに神Pとしての活動を再開した。手始めに昔の曲を1曲ミクに歌わせ、軽い気持ちでアップロードした。翌日、とんでもない事になるとも知らずに。

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