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90話 おや?どちらの国から?⑤

 -------------(タウロ視点)-------------


「それなら部屋を移動してもらった方がよくないですかね?士長」



 この会議室でも十分パソコンは繋がると思うが、何故か移動をすると言う。着いて行くしかない。



 この部屋を出て廊下を少し進み、また扉を入った。


 案内されたのはパソコンがズラリと並んだ部屋だった。しかもどのパソコンも立ち上がっており、画面にはゲームが映っている。

 ここは自衛隊員の娯楽施設か何かだったのだろうか。



 室内には数人の、自衛隊の制服ではない少し縒れた私服の男達がいた。


 其々が少し離れたパソコンの前に座り幾つかの画面を同時に操作しているようだった。

 画面に映し出されているのがゲームでなければ、何かの機関かと思うくらいだった。


 パッと見て多くがLAF(ライン・エイジ・ファンタジー)の映像であった。




「此処は、LAF東京のサーバー室なんですよ」



 濱家さんが部屋を見回しながら言った。その声に気がついた数名が席を立って此方にやってきた。



「ラインエイジファンタジージャパンの東京運営サーバーにようこそ」


「えっ、ここLAFのサーバーなん?」


「驚きました。LAFジャパンがこんな近くに、茨城県内にあったとは!」





 聞けば、LAFジャパンの東京運営サーバーは元々この茨城県の学園研究都市の地下にあったそうだ。

 なので災害時にもLAFジャパンは切れる事もなく動き続ける事が出来た。



「ではあなた方も異世界帰りですか? ステータス表示があると?」



 自衛隊員3名の他に、ゲーム会社の社員までもが異世界帰り!と驚き喜んだのだが、残念ながらそれは早とちりだった。



 彼らゲームの運営会社の社員達はもちろんゲームアカウントを持っていたし、それは高レベルのプレイキャラであった。

 しかし彼らは異世界に転移する事はなかったのだ。


 と言うのは、転移データの元になった『あの時間』帯に彼らはログインをしていなかったのだ。

 その時間に居ないと言うより彼らは入社してもいなかった。


 ゲーム会社の社員の入れ替わりは激しい。現在の社員はここ数年に入った者達だという。


 ふと思う。

 それなら5年前の『あの日』にログインしていた社員は異世界に転移したかもしれない。エルアルシアでは見かけなかった。尤も本人が隠していたのかも知れないが。


 10年前にゲームをやめ、たまたま『あの日』にインをしたカオるんが異世界転移をしたのだ。5年前に勤めていたゲーム会社の社員が転移しないわけがない。


 いや、違う。俺は大事な事を忘れていた。

 カオるんは10年前(5年前)にゲームをやめても、IDやキャラは削除していなかった。


 社員なら、辞めた時に削除をしたのかもしれない。辞める理由が何であれ、残して辞めるだろうか?……いや、わからない。今となってはどうでもいいか。



『タウさん、LAFの社員さん達も巻き込もうぜ、GMさんとか居てくれたら有り難い』


『そうですね、それにシステムを弄ってもらえるかもしれませんし』


『わかりました。自衛隊の方にも話してみます』



俺は濱家さんに向かい確認を取った。



「異世界転移のこと、ゲームと関係があるかも知れない事をLAFの社員の方々に話しますがよろしいですか?」



濱家さんに限らず3人は予め決めていたのか、頷きあっていた。



「はい、自分らも知りたい事だらけです」


「えっ、今、不穏な発言出なかったか?異世界何ちゃら……」



 先程俺たちに「サーバーへようこそ」と言った男が期待の篭った目で見てくる。

 

 LAFの社員という者達が俺とミレさんの周りに集まってきた。




「あんな大災害があったのにここ数日マースにログインしてるヤツらが増えているから気になってたんだ」


「災害関係なくログインを続ける猛者もいたけどな」



「信じる信じないはあなた方の好きにしていただくとして、俺たちは異世界転移をして戻って来ました。そちらの自衛隊のお三人もそうですよね」



 LAFの社員は驚愕の表情を浮かべる者、疑惑の眼差しを向ける者、嘲笑した様に鼻で笑う者、それぞれであった。

 だが、瞳には何故か期待のような輝きが見て取れた。



「異世界転移の話は今は省くとして…」



 そこで「それが聞きたい」とか「マジか」などと小声だが様々な反応があった。



「転移した先でも、戻った地球でも、ステータス画面が表示されているのですが、それがLAFのゲームに大いに関係しているのです。ステータス画面に出ている名前はLAFでのキャラ名です。職もスキルもゲームでのソレです」


「何だって!」

「ホントかよ!何でLAFなんだ」

「あのっ!その画面見せてもらえますか!」


「ステータス画面は他者が見る事は出来ません」


「何だよ、それじゃ嘘だかなんだかわからないじゃないか」

「見せられないって、本当はステータスなんて無いからだろ」



「ステータス画面は見えませんが、テレポートして見せましょうか?」



 そう言って中指に嵌めたテレポートリングを見せた。



「えっ、ちょ、待ってコレコレ」



 俺の指に食いつく様に見ている青年がいた。



「これ、LAFのテレポートリングですよ! と言うかそっくりだ。リングのような小さいアクセサリー類はパソコン画面じゃあ潰れてよく見えないでしょうが、原案の作画のまんまですよ」


「どんなにデカいパソコン画面でも、ここまでは見えないはずです。だって画面上は作り込んでませんから。俺はアクセサリー担当で当初のアクセサリーの作画を舐める様に見たんで知ってますが……」


「単に情報が漏れてただけじゃあ?」



 LAFの社員達が揉めていた。



「あの、使ってみますから」



 そう言って俺は先程扉を入った位置でブックマークしたので、そこまでテレポートをした。ほんの5メートル程の距離だ。

 そして再度さっきの位置へテレポート。



 LAFの社員達目と口が、これでもかと言うくらい開かれていた。だが、誰も言葉を発さなかった。



「あ、自分も出来ます」



 そう言って自衛官のサンバさんが別な位置まで歩き、ブックマークをしたようで、こちらとあちらのテレポートを2回往復した。



「「「「「! ! ! !」」」」」



 まさに言葉にならないとはこの事だ。



「LAFではテレポートリングは必須ですよね」


「自分らは職務上、いつもは外していますが」



 そう言ってフジさんも同じように飛んでみせた。

 そこまでくるとLAFの社員達は呆けていられないようで、フジさんにしがみついて一緒にテレポートをしようとしたり、サンバさんへリングを貸して欲しいと懇願していた。



 困ったな。話が全然進まないな。



「すみません、とりあえず話を進めてもよろしいですか?」



 濱家さんも困り顔で頷いた。



「ええ、お願いします。我々も聞きたいのです」


「あ、すんません、士長」



「私たちが学園都市のシェルターを探していたのは、通信状態が良好な施設が、学園都市の地下にあるのではと思ったからです。異世界転移のお仲間、しかも自衛隊の方がいらっしゃるとは思っていませんでした。が、それはたまたまでした」



 ようやく静かに皆が聴いてくれている。念話の向こうも静かだ。



「異世界転移にLAFと言うゲームが深く関わっているように、戻ったこちらの世界にもLAFと言うゲームが深く影響しているようなのです」



「何だって……」


「先程、話が中断しましたが、血盟を利用して遠方の者と連絡が可能になります。ただし、どうも全ての血盟ではないようなのです。濱家さん達は血盟がブランク、あ、リアルのステータス画面の事ですが、血盟はブランクなのですよね」



「そうです。我々は三人ともステータスに血盟は表示されておりません」



「それは、ゲームもですか?ゲームでも未加入でしたか?」



「移転前、と言う事でしたらゲームでは加入しておりました」


「戻られてからはゲームにログインはされていらっしゃらないのですよね? 今、ログインをして確認していだただけますか? 恐らくゲームの血盟も脱退しているはずです」



 その部屋にある沢山のパソコンのひとつに濱家さんがログインをした。



「……本当だ。血盟が外れている。移転前に脱退はしてなかったぞ。フジ、サンバ、お前らも確認してみろ」



 そう言われて近くのパソコンを借りてふたりがログインをした。


「自分も血盟未加入になってます」

「自分もです」



「どうも転移の弾みで外れたみたいなんです。ただ、戻りの時は外れると言うより非表示なのかもしれません。その辺りは情報が不足していまして……」



 『転移のたびに血盟が外れる』のではない、と思ったのは、カオるんのケースがあったからだ。


 異世界転移の時、血盟は外れた。問題なく新しい血盟に加入できた。しかしカオるんは異世界戻りの時、ステータスに表示が無かったが、ゲームにログインするだけで血盟が表示されたのだ。『月の砂漠』と。


 俺たちは向こうの世界で血盟を抜けたせいか、ゲームでも完全未加入状態だった。ゲームで血盟に加入して初めて、リアルステータスにも表示された。


 そこが未解明な謎部分だ。

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