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48話  白鳥に乗って

 翌朝になり、ミレさんとタウさんが戻って来た。俺たちは家族との合流方法について打ち合わせをした。


 津波の水が完全に引かないまま、瓦礫の山の中を家族を連れて移動するよりも、家族はとりあえず安全な場所に待機させておくのがベストだ。となるとやはり動くのは俺を含む誰かだ。

 魔法のエリアテレポートが使える俺は必須メンバーだ。


 ここMAMAN東京を仮拠点として、俺を連れてミレさんとタウさんの家族を迎え行く、あちらに着いた時点で家族ごとエリアテレポートでここまで戻る。


 ふた家族をこの仮拠点に置き、今度は茨城のカンさん宅へ向かう。

向こうをブックマークした後、テレポートでここ戻り全家族を茨城へとテレポートで移動させる。これが大まかな作戦だ。



「僕やミレさんは現在家族がいる場所をブックマークしてありますが、カオるんには初めての場所なので、そこまでは徒歩(とボート)移動になります。カオるんには申し訳ありませんがお願いします」


「おう!」



 埼玉と千葉、どちらを先に行くかで、幼い子供(ミレさんの姪10歳)がいる方を優先する事になった。ミレさんの妹と姪だ。

 俺とミレさんは埼玉方面へ向けて出発した。


 埼玉へは都内を北上する。都内の半分くらいは海に沈んだ感じになってるそうだ。水が多いところはミレさんの操縦でモーターボートを走らせる。

 瓦礫もかなり浮いていたが、ミレさんのボートの操縦は上手かった。とても覚えたてとは思えない。


 水の浅い地帯や、高台で水が無くなっている所は足で瓦礫を超えていく。


 実は今回マルクはホテルに置いてきた。

一緒に行くと俺にしがみついてグズるマルクを説き伏せるのが大変だった。

 一度は置いて行った俺を信じられない気持ちはわかる、今度は置いていかれまいとコアラ状態のマルク。


 だが俺は、見せたくなかった。水に浮く沢山の遺体、陸地でも瓦礫からはみ出ている数々のご遺体。

 12歳の子供が見ていいものではない。


 何とか大人3人でマルクを説得した。

 マルクは不貞腐れていたが、LAINEをずっと繋げておく事、1時間ごとにテレポートで戻る事を約束して漸く俺の背中から離れた。



マルク]父さん、いるー?


カオ]おう、いるぞー

カオ]そっちはどうだ?何か変わりはあったか?


マルク]ないー。不通ー。


 おお、スマホの入力で、横棒と句読点を覚えたか?

 漢字変換は惜しい。「普通」と打つつもりだったんだろうな。

 けど、うちの子は天才だな。



 東京の北部に入ると地面が増えてくる。が、所々は水没地だ。

 そんな場所はモーターボートよりスワンボートの方が小回りがきいて移動しやすい。


 スワンの運転席にミレさん、助手席に俺。

 ふたりでスワンを漕ぐ。

 足で漕ぐので手は空いている。勿論スマホ(LAINE)をポチポチしている。


 どんどんとLAINEの入力が上手になるなぁ。うちの子マジ天才だ。

「うちの子天才すぎる」

 ニヤニヤニヤ……


 となりでミレさんが何故かため息をついていた。

 どした?ミレさん。


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