表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/282

30話  夕方ようやくLAINEに集合①

 ----------(タウロ視点)----------


 デスティニーランドホテルの18階のスイートルームに避難して一夜経った。昨夜は何度も揺れに襲われた。地震ではなく津波によって押し流されてきた物がホテルの建物に打つかる衝撃か。それとも隕石落下に伴い地震も発生しているのだろうか?


 今朝はだいぶ揺れは収まった。スマホの通信は回復した。ホテルの照明も部分的に回復しているが、電気が完全に回復したのではないようだ。トイレは相変わらず水が流れないし、水道も出ない。


 昼過ぎくらいまで家族でこのフロアの部屋を回り、使えそうな物を集めた。


 他のフロアが気になったが、家族を置いて調べに行くのに躊躇した。俺がいない間に何か起こるのが恐ろしい。10年待って漸く逢えた家族だ。今は離れたく無い。


 このホテルは19階建てだった。上の19階はレストランフロアで360度ガラス張りだ。最初の衝撃波で恐らく大変な事になっているだろう。だがレストラン階だ、食べ物を拾いに行きたい。


 時間が経てば腐る物も早目にアイテムボックスに収納しておけば腐らない。

 先々の事を考えると集められる時に集めておきたい。しかし悲惨な場所に家族を連れて行きたくない。


 上からこのフロアに誰も降りてこない、と言う事は、上はかなり悲惨な状態になっているのだろう。もしかするとレストランに居た人は全員死亡か?厨房にいたシェフはどうしただろうか。それとこのフロアに居た清掃係の女性スタッフ、上に上がっていったまま降りてこない。何かあったか。


 上は兎も角、午後にでも下、17階へ降りてみるか。もちろん家族を連れてだ。


 朝と似たような昼食を2時頃に済ませた。下へ様子見に行く話を家族にして全員で部屋を出る。

 階段を降りていると上がって来た人と出会った。ホテルの制服を来た若い男性だ。



「お客さま、ご無事でしたか」



 こんな時でもキチンとした言葉遣いとは、ホテルマンの礼儀作法の教育はすごい物だと感心した。



「下はどんな感じですか? 昨夜は18階の空いている部屋に泊まらせてもらいました。18階では誰にも出会わなかったのですが」


「そうですか。私は17階にいたのですが、17階にはふた家族の方がいらっしゃいました。下の16階には私どもホテルの従業員とひと家族がいらして17階で休みました。15階から下のお客さまがどうされたかはわからないのですが。上はどうでしょう」


「19階のレストランは私たちが出た時にはまだ結構賑わっていたと思います。18階の清掃の方が上に上がったきり戻ってきていません。私達も見に行ってはいないのですが……」


「そうですか。確認して参ります。……19階はガラス張りだから、もしかすると」


「ええ、そうですね。あ、今先程、照明が付いたのですが、電気は復旧したのですか?」


「いえ、恐らく緊急用の発電機が自動で動き始めたのかと。ただ発電機は地下にあるのでいつまで保つか。水タンクも地下ですが水道が出ないところを見るとタンク部屋はやられているのかもしれません」


「なるほど」


「水が引けばいいのですが……助けは来るのかな、こんな、こんな大災害がくるなんて……、ワイ浜一面が海に沈むなんて…」



 俺の後ろで口を開かずに聞いていた妻達と顔を見合わせた。下の娘の美咲にはいつもの元気はなく、何か言いたげな顔で俺と妻の顔を交互に見ていた。



「あの……おとん、お母さん、お姉ちゃん、ごめんなさい! 私がデスティニー行きたいって言ったから! こんな、知らんとこでこんな事になって、ごめんなさい……ひっくっ」


「何言ってるの! 美咲のせいではないですよ」

「そうだよ! 私だってデスティニーに賛成したし、そもそもうちが退職して時間が出来たのが最初だし」


「誰のせいでもない。隕石がいつ落下するなんて何処からも発表されていなかった。それにデスティニーに来た事で家族が一緒にいられたのは逆に幸運だったぞ?」


「そうよね? いつもの生活だったら、みんなバラバラだったかも知れないんだから」



 泣き出した美咲を皆で慰めた。普段通りにスマホを弄ったりしていたので、美咲がそんな事を気に病んでいたなど、全く気が付かなかった。


 特に目新しい情報もなく、部屋へと戻る事にした。

 情報と言えば、ホテルの15階以下が水に沈んでいると言う事。今は緊急用発電で電気が来ている事。このくらいか。



「そうだ、部屋へ戻ったら電気が来ているうちにスマホを充電しておきなさい」



 部屋に戻ると有希恵がTVを付けた。辛うじて映るチャンネルがあった。どうやらテレビ局やスタジオも津波にやられたようで、無事な局からの中継で放送をしているようだ。


 情報が交錯する中でひとつだけ共通しているアナウンスがある。それは……。


『世界中に隕石が落下した模様です』



 ああ、それは知っている。俺達は神からそれを聞いていた。この先日本はどうなるのだろう。とりあえずカンさんの所は無事のようなので身を寄せさせてもらう。茨城県でも沿岸部は大変だろう。カンさんは内陸部と言ってたな。


 茨城までどうやって行くか。いや、その前にカオるんを回収しなくては。そもそもこのホテルからの移動をどうするか。考えなくてはいけない事が山ほどある。


 ふと時計を見るともう17時半を回っていた。そうだ。18時にはLAINEに集合して欲しいとメールを出した。果たしてカンさん以外も読んでもらえただろうか?

 


 18時になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ