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263話 困った時の②

 朝食が済むとまずはトマコ拠点のアナウンスで血盟員にゲームログインを促した。


 俺らはゲーム内で血盟員がログインしてくるのを待つ。


 そう、俺は、ここで重大な事態に遭遇したのだ。

 ただ、狩りをしているだけの時は殆ど気がつかなかったゲームシステムのあれこれ。

 俺がゲームをやめた後の5年でかなり変わっていたのだ。


 ゲーム自体は見た目も操作もさほど変わっていない。そりゃあ、狩場が増えたり、武器装備や魔法がどんどんと実装して行ったりとかはあるだろう。

 5年間全く同じなわけがない。


 1番の変化は、文字チャットよりも音声チャットが重きになっていた。

 ……そう、昔から、あった、のかな?

 使った事は無かったけどマイクのアイコンはあった。



「カオるん、カオるんが居た頃にあったマイクのアイコンって、チャットランの右下だろ?それは単に音声を文字変換するだけだよ」



 うお、いつの間にかミレさんが来てた。



「いつだっけかな……、2年くらい前か。スマホでもディスコが普通になってきて、パソコンのオンゲもそれを取り入れ始めたんだよ。今時の若いやつは文字入力はせんよ」


「そうなん?」


「いや、俺の世代は文字と音声の狭間か。音声の波に乗ったやつと、乗れないやつにわかれる。知らないやつと音声で話すのは緊張するとか言うやつも結構いるなぁ」


「うっ……俺は完全に文字世代だ。文字だって初対面のやつに挨拶する時は緊張するぜ」


「カオるんのは文字世代前に単なるコミュ症だろ」



 ミレさんにディスられながらも、その新しいシステムを教えてもらう。

 線の無いミミフォン……、本当にこれイヤホンなの?それを突っ込まれて、ミレさんが俺のパソコンに何かをした。


 すると耳元からザワザワと周りの声が、……あれ?前にもこんな事があったよな?

 確かこの世界に戻って来たばかりの頃、皆で耳栓をしてゲームをした覚えが。



「今はこのスタイルが普通だからな」



 ミレさんが笑いながら言った。つまり皆が文字チャットを使ってくれていたのは、もしかして俺に合わせてくれていたのか……。

 スマン。



「大丈夫。お父さん。誰にでも初めてはあるの。僕も最初は耳の中がモゾモゾしたの。すぐに慣れるよ?」


「そ、そか、うん。」



 気を取り直し、俺はキヨカが作ってくれた書類を持ち声に出して読み始めた。

 あーあー、練習は必要だ。



『あの、カオさん、聞こえてますよ』

『あ、もう始まってる』

『すみません、最初から……』


『あ、あ、すまん、練習だ、テステス』



 目の前の春ちゃんからGOを出されて、俺はゆっくりと読み出しだ。



『………と、以上になる。わからない事はネットの血盟サイトの質問コーナーに書き込んでくれ。あ、ええと鍵付きのコーナーだ。ゲーム内での質問は受け付けません。何故なら』


『何故なら?』

『何故なら?』


『話しながらゲームが出来ないからだ! 聞きながらも出来ない』


『カオさんはながらが苦手だからなぁ』


『そうだ!俺はただ歩くのみ!』



「父さん、凄い!」



 横でマルクが輝く目で俺を見ていたが、別に凄く無いからね。


 その後は慌ただしく引越しやら何やらで走り回り(飛び回り)、何とか大雪山拠点の地下一階、ハケンの砂漠アジトへと落ち着いた。


 思ったよりも混乱はなく、血盟員もそれ以外の拠点員も従ってくれていたようだ。

 俺らはアジト(大雪山)で、早い夕飯を摂った。と言うか、昼抜きだったので昼夕一緒の食事か。


 俺よりもタウさんとカンさんの方が大忙しだった。

 と言うのも大雪山拠点という一括りだった大きな拠点に複数の拠点が入った事で、拠点内の色々なシステム関係の変更が必要となったからだ。


 大食堂は地上の南棟にあったのだが、各血盟でも必要と言う事で東西西のそれぞれに大食堂を設置、同じように地下1階にも大食堂の設置、それ以外にも会議室やらゲームルームやら、とにかく急ぎ必要な場所の作り変えを行うそうだ。


 ミレさんは何度かパソコン集めに飛び回っていた。



「いやぁ、カオるんのブックマークが役に立つわー。流石だよ」



 ブックマークの共有で使える場所が結構あったようだ。良かった良かった。俺様の迷子力よ!



 ハケンの砂漠の血盟員は、手が空いた者からゲームにログインをして、さっそくエルフの森へパルプ材を取りに行っているようだ。

 俺たちもさっそくログインした。


 おっと、危ない。いつもの調子で『ウィズのカオ』でログインしてしまった。

 エルフの森へ行くならキャラをチェンジせねば。『エルフのカオリーン』にチェンジした。


 俺はウィズは男キャラだが、セカンドのエルフはふざけて女キャラにしたんだ。今となってはちょっと恥ずかしい。

 まぁ、リアルでないだけマシだがな。


 エルフの森が混んでいるなぁ。うちの血盟員も多いがタウさんや皆の血盟員も大勢来てる。

 それと自衛隊の血盟だろうか。キチンと整列している。

 チャット欄に文字が流れていない事を見ると、自衛隊でも当たり前に音声チャットを使っているんだな。


 が、俺のカオリーンが近くに居るのに気がつくと、ちゃんと文字で挨拶をしてくれる。

 俺も、モタモタしつつも挨拶を返す。


 一緒に狩りに行く予定のマルク、キヨカ、春ちゃん、それに翔太が近寄って来た。

 今日のパーティメンバーは5人だ。カセ達は8人でパーティを組んでいる。



「香、僕らも8人にしましょう。パルプールを1匹倒せば8人にドロップがある。今回はパーティメンバーをマックスにした方が効率がいい。あと3人、募集しましょう」


「あ、うん。どうやって? 血盟から?」


「いえ、もうここで募集を叫びましょう」


「春ちゃんにお任せで、よろ」



 春ちゃんの『パーティ3名募集、先着順』という文字がチャット欄に流れると、チャット欄に『はい』と言う文字がズララララと流れて言った。


 俺には追いきれないし、誰が先着かもわからん。パーティリーダーが春ちゃんで良かったー。



『締め』


 春ちゃんの文字がチャットに流れて少しだけはみ出た『はい』があったが、止まった。



『よろっす』

『よろしくおねがいします』

『どもー』



 知らない3名から挨拶が流れた。

 春ちゃんが俺に横からパソコンを操作して、全体チャットをパーティチャットに変更してくれた。



『音声もパーティチャットに絞ってありますが、音声に入れていない3名がいらっしゃいますので、パーティ内の会話は基本入力でお願いします。独り言は音声でいいですよ』



 俺たちは8人で森の中を進む。森の中はそこそこ混んでいた。



「ここら辺にしましょう。混んでいる時は下手に移動せず1箇所で魔物のリポップを待ちましょうか」


「そうですね。出たら全員で殴りますが、案外弱いので1人一回殴ったら全員が殴るまで待ってください」


「武器はしまったかぁ?持ってたら大変な事になるからな」


「はーい」

「大丈夫、素手です」


「あ、あれ、パルプールじゃないか?」


「よし、行け! ヒットアンドステイだ! ぶって、待つ」


「わぁ」



 全員が一発ずつ殴り様子を見る。



「良かった。パルプールは2〜3発で倒せると言う話でしたが、それは高レベルの話ですね。僕らだと8発は行けますね。止めに翔太君殴ってみてください」


「うらぁ、出せ出せぇ」



 翔太が2発殴ったところでパルプールは倒れて消えた。



「どうですか? ドロップは入りましたか?」


「入ったー」

「もらった」

「もらいました」



 うん、俺もパルプ材3本貰った。春ちゃんが聞いたところ全員に3本ずつ入ったそうだ。

 そうしている間に多少ズレた場所にパルプールが湧いた。


「よっし、次!」


 同じように皆で殴って行く。最後にトドメは好きにしてもらった。


「パルプくださいなー」

「うらぁ、出せぇぇぇ」


 誰がどう殴っても、パルプールは公平にパルプ材を3本ずつくれた。

 自分達を中心に前後左右と、パルプールが湧く。中々良い場所をゲット出来た。

 コンスタントにゲット出来る。


 しかし、あれだな。

 魔物が湧かないのもつまらないが、こうコンスタントに沸き続けるのも、作業っぽくて飽きるか?

 いや、作業なんだよ。これは作業だ。スクロールを作るために必要な作業なのだ。



「30分経ちました。休憩を挟みましょう。トイレや飲み物タイムです。5分休憩」



 俺たちも、キャラはそのままでコーヒータイムだ。



「まだ30分なのか」


「単調なので長く感じますね」


「そっちどんな感じっすか?」



 同じ部屋でやってたカセ達もこっちが気になるようだ。



「こっちはコンスタントに採れてるぞ?」


「そうなんすか? こっちはパルプールの取り合いですね。見つけると皆が走り寄るけど、せいぜい3〜4人しか近寄れないでしょう?」


「そうそう、それで誰かに取られたら他を探す感じです。叩くより移動してる時間のが多いなぁ」


「うちは場所固定だな。他の人が来たら交代制にすっか?うちだけで独占すんのもな」


「カオさんはまた遠慮深いっつか、他人に優しすぎつか」


「それなら加瀬さん達のパーティと交代にしますか?」


「それいいな。近く居たエントを叩きたくてしかたなかったんだよ。パルプールと無関係だから我慢した。俺、ナヒョウエやってた時からエント見ると叩くのが癖で」


「どんなエルフですか」


「いや、エルフってそんなもんだろ?エントの実も欲しいよな?」


「ではパーティ内の3人にも話して交代で叩きましょう」


「あのさ、パルプールってほぼ10発エンドじゃん? 俺ら8人の他にもう1人そっちから叩けば、そっちにもパルプ3本入るじゃん」


「別に最後の一発を取らなくてもドロップは入りますよ。こっち8人そっち2人で10人がドロップを貰える」


「そっかそっか、その辺もシステムが変わったんだっけ。うん、効率的に貰っていこうぜ。そして近場のエントも」



 そうして俺らが狩っていた場所にやってきたカセらと、順繰りに叩いていく。

 15分交代で8:2のメインが代わる。

 待っているパーティはエントを狩る。



「ここ結構良い狩場だな。エントも少しすると湧くぞ」


「出せ出せぇ!エントの実ぃ! あ、間違えた。パルプ材を出せぇ!」


「なんかちょっと可愛そう……」


「マルク君、エルフの森に居る木は死んだりしませんよ? ぼくらにドロップを与えるための試練を課しているのです。倒してみろと。だからすぐに復活しているでしょう?」



 なるほど、そうだったのか。実は俺も、その、何か殴るのが心苦しくなってきていた。

 うん、これはエルフ森がエルフに課した訓練か。よし、その胸を借りるぜ!



 その後2時間程パルプを集めて、解散する事になった。子供は寝かせないとな。


 参加してくれていた3人は自衛隊の人だった。しかも空自だそうだ。俺らは陸自と親しくしていたので、空自の人は初めてだ。

 凄くフレンドリーで今後も遊ぶ事を約束してフレンド登録をして別れた。


 空自は、その、勝手なイメージなんだが、自衛隊でもエリートっぽくて、とっつきにくそうだと思ってた。と言うか今まで関わる事も無かったからな。

 でも想像よりもずっとソフトで話しやすかった。あとラノベ好きなのも気が合った。

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