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261話 採って作って

「集まってもらったのは、もうひとつお願いがあります」



 タウさんが仕切り直しをした。騒ついていた空気がピタリとしまる。



「ゲーム内のゴンザエモンで作成したスクロールをリアルに持ち出せると言うのは、大変な僥倖と言えます。現在のテレポートスクロール不足、アジトスクロール不足を補えます」


「確かに」


「テレスクがあれば血盟員にも配れるな」


「自衛隊も欲しがるだろ……あ、どっかの奴らもか。ゴンちゃん大丈夫か?」


「はい。今回の件は勿論自衛隊にも情報をあげてあります。どうせ直ぐに漏れるでしょうから。ですので岡山でゴンザレスさん及びお身内の周りをしっかり護衛で固めるそうです。それから、カンさんと私も岡山のゴンザレスさんの拠点の強化を早急に行う予定です」


「なるほど、そうだな。ゴンちゃんが今どんなとこにいるのか知らんけどガッチリ固くしてもらった方がいいぞ?」


「私達が留守の間、皆さんは各血盟員にも協力を仰ぎ、ゲーム内でスクロールの材料集めをお願いしたい」


「ゴンちゃん、スクロールの材料って何だっけ?」


「パルプ材です」


「それはどの魔物が落とすんだ?」


「植物系の魔物からもドロップしますが、確率が低いですね。それよりもエルフの森のパルプールなら倒すと100%でパルプ材を落とします」



 流石ゆうごだな、ゲームの情報量が半端ない。ゆうご自身はDEだし店舗もやっていなかったのに詳しいな。



「注意点がふたつあります。ひとつは狩場がエルフの森という事です。エルフ以外のキャラで侵入するとフルボッコにあいます」


「まぁ現在は日本全エルフ化計画で、皆さんエルフをお持ちでしょうから、それは大丈夫ですね」


「ええまぁ、うっかり別のキャラで入らない限りは」



 ゆうごくん?何故、俺を見る?



「もうひとつは、森では武器の使用が禁止です。パルプールを見つけたら必ず素手(叩く蹴る)で戦う事。素手なら反撃は無いです。けどウッカリ武器を使うとパルプールのみならずそこら中のエルフの森の精霊が襲ってきます。気をつけてください」


「素手……そうだったんだ。てか、素手で倒せるん?」


「はい、パルプールはそこまで強い魔物ではありません。2〜3人で組んで叩けば倒せます」


「ドロップは全員に?」


「はい。なので複数で組んだ方が速く確実にドロップを貰えます」


「パルプ材は各血盟でまとめておいてください。ゴンザレスさんに個人的に渡す事のないように。ゴンザレスさんには暫く店舗を閉めていてもらいます。恐らくあちこちからスクロールを求めて店舗に来るでしょう」


「ああ、そっか。店を閉めたまま製作するのか」


「はい、それで渡した材料に見合ったスクロールを頂戴します」





-------------



 それからタウさんとカンさんとゴンちゃんは岡山の拠点へとテレポートしていった。

 俺らも拠点へ戻り、血盟員を集めて説明を行う事にした。



 そう言えば、引っ越しの話し合いをしていて緊急で呼び出しされたんだった。

 かなり遅い時間になっている。マルクは寝かせたい。が、俺に引っ付いて離れない。


 アジト登録は終わっているので、ハケンの砂漠のアジトは『大雪山拠点地下1階』だ。

 明日には引っ越すが、今夜は苫小牧の今まで通りの部屋で過ごす。


 全員が俺の部屋へ来てそこで会議の続きを行う。マルクはベッドに寝かせた。俺はその横に腰掛けている。

 春ちゃん、キヨカ、カセ、クマ、ナラは適当に空いてる場所に腰を下ろした。ミレさんとカンさんは自分の部屋へと戻った。



「苫小牧に残すと言っても大雪山のアジトには血盟員全員の部屋を用意した方がいいでしょうね」


「そうだな、トマコに長期出張するイメージだな。基本の住まいは大雪山地下1で、交代でトマコ出張か」


「苫小牧の部屋は各自そのままで、出張中はその部屋を使えばいいですね」


「キヨカさん、大雪山地下一階の案内図はお持ちですか?」


「はい。以前にいただいた物ですが、変わっていないか確認をしてきましょうか」



 そう言ってキヨカが消えた。テレポートをしたんだな。



「テレポートリングは羨ましいですね」



 春ちゃんが苦笑いをしていた。ごめんな、春ちゃん、リングは一個しかないんだ。

 代わりに春ちゃんにはテレポートスクロールを多めに渡してあるんが勿体ないと言ってあまり使わないんだよな。


 でも、ゴンちゃんの店で作れるようになったらバンバンとテレポートが出来るからな。


 キヨカが戻ってきた。



「大丈夫でした。以前の案内図と変わりありません。一部廊下の通路が繋がっていました」



 ああ、そうか。東西南北を繋げたと言ってたな。

 キヨカは拠点の地図を広げた。……建物内と言えど地図は地図。ああ、やだな。


 せめて2LDKくらいの家の図面だったら……、ほら、あの不動産屋のガラスによく貼ってあるやつ、あんなんだったらまだ理解出来るんだが。デカ、広っ、無理。

 フェリー内の壁に貼ってあった船内案内図もよくわからんかったし。



「けっこう部屋数はありますね。血盟員50名とその身内だけなら、東の一画で足りますね」


「血盟員を東西南北に散らすか、それとも1画に集めて他の3区画に血盟外の苫小牧から連れていく者達の居住にするか、どうします?カオさん」



 うーん、どっちでもいいんだよな。



「えと、じゃあ血盟関係を東で、それ以外を南北西で」


「そうですね。出来ればとりあえず割り振ってしまい、引っ越して問題があった時に部屋替えをしても良いですね」


「ですね、では、大雪山に連れて行く血盟外の選出ですが、どうしますか?」


「うーん……、それさ。本人に選ばせないか? ええと南北の2画分で何世帯入れるのか数えて、その世帯分を募集する。集まらなくてもよし。トマコに残るもいいし多かったら抽選にする」


「西区画はどうするのですか?」


「西は今後のための予備」


「なるほど」


「明日の朝、募集の件を拠点内に通達だな。それとゲームログインでパルプ材を集めて欲しいと言うのも通達しよう」


「スクロールの件も?」


「そこが悩む。いずれ耳に入るだろう事を隠すのもなぁ」


「しかし話したらゴンザレスさんの店に殺到するでしょうね」


「だろうなぁ。入れないけど、あの小道がぎゅう混みになりそう」


「それとエルフの森の狩場もかなり混み合うでしょうね」


「だよなぁ。それとドロップしたパルプ材を渡さないやつもいそう」



 俺は、こんな世界でも良い人でいたいのか。誰に対しても良い人。みなに平等に良い人でいたい?

 違う、俺は、俺の仲間に良い人でいたい。 



「うん、決めた。発表はゲームの中、血盟チャットでの告知のみにする。スクロールは入手出来たら分配するが、狩場が混む事も伝える。血盟員としてまずは無償でパルプ材集めをして欲しい事、それが嫌な者は血盟から脱退してもらう」


「パルプ材収集の割り当てを決めますか?」


「いや、決めない。多くても少なくても関係ない。ズルい事をするやつはいずれわかる。頑張ってるのに結果が出ない子を省きたくない」


「ふぅ。香らしい。わかりました。周りでも目を光らせておきます」


「うん、ありがとう。まぁ、ズルするやつは居るだろうし血盟員から漏れるだろう。それも込みで明日から頑張ろう」


「はい」

「ええ」

「おっす」


「じゃあ今夜は解散で」


「泊まっていきますね」

「俺もいいっすか」

「あ、俺も」

「自分も……zzz」


「……チッ」



 ん?今、誰か舌打ちした。



「では、私は自室へ戻ります。おやすみなさい、カオさん」



 キヨカが部屋から出て行った。うん、女性を泊めるのはね。

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