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257話 アジト④

 春ちゃんとキヨカで既に話が通っていたらしく、カセ達が誰かを呼びに部屋を出て行った。



 直ぐに知った顔知らん顔…見かけた事はあるかもだが、が、数人連れて来られた。



「ハケンの砂漠の血盟員は現在全員がリアルステータス持ちですので、先程ゆうご君がおっしゃった第三段階の検証は不可能ですね」



 キヨカの指示…実際は春ちゃんかタウさんからの指示だが、それに従って俺はそこに居たメンバーを拠点の外でブックマークがある先へと連れて飛んだ。

 そこでアジト帰還スクを使ってもらう。


 と、まずは俺が1番に使った。



『おーい、苫小牧拠点の地上1階のフロアに飛んだぞ? ええと、入口のドアを入ったとこだ』


『とりあえず、少し場所を空けてそこで待機していただけますか?』



 タウさんの指示でその場所から慌てて移動した。上から誰かが降ってくるかもしれないからな。

 俺がさっき立っていた近辺に現れたのは春ちゃんだった。俺に気がつきこちらに寄ってきた。



『成功しました。苫小牧拠点地上1階の入口内です』





 少し間が空きキヨカから念話がきた。



『ハケンの砂漠の血盟員以外として自衛隊の方にお願いしましたが、スクロールは使用出来ませんでした。一応リアルステータス有りの方です』


『なるほど、やはりアジト帰還スクロールは血盟員に限りですね。他にどなたが試しましたか?』


『苫小牧に在住しているリアルステータス無しの方もダメでした』


『わかりました。参加していただいた方は解散していただいて、皆さんは本部へ戻っていただけますか?』



 タウさんに言われて俺は春ちゃんを連れて本部へ戻った。直ぐにキヨカも戻ってきた。



「お疲れさまでした。やはりアジト帰還スクロールは血盟員に限り使用が可能でしたね」


「僕らもアジトを認定に行きましょう」



 ゆうごは今すぐにでも飛んでいきたい様子だったが、タウさんは考え込んでいた。

 それはミレさんもカンさんもだった。



「あの……僕は今、ここ苫小牧にお世話になり生活の基盤もここになっています。旭川が『筑波の砂漠』の拠点ではあるのですが、僕も翔太も正直ここが生活の基盤になっています」



 カンさんの旭川は現在どうなってるんだ?……確か自衛隊に預けていると聞いたか。



「うちの親戚は茨城から離れたがらなくて、兄のとこも茨城のままです。あっちはあっちで家族も奥さんの親戚も居る。無理に北海道には連れて来ませんでした。なので、旭川に居るのは誘った仕事仲間だったのですが今はその……カオるんを浴びてほしくてこっちで仕事をしています。『筑波』の血盟員は仕事仲間と自衛隊員が殆どです」


「お兄さん一家は血盟を抜けたんか?」


「そうなんだよ、カオるん。兄貴達はあっちで元からの仲間同士で血盟を作ったとかで、早い段階で抜けてたんだ」


「なんとなく……カンさんの考えてる事がわかる。うちも似たもんかな」



 今まで黙ってたミレさんが複雑な顔をしてカンさんを見ていた。すまん、カンさん、俺は頭が悪いからカンさんの考えがわからん。



「うちは元から家族は妹と姪だけで親族とか居ないしな。同じく昔の仕事仲間を引っ張って苫小牧に来てた。真琴は富良野を気に入ってたんだが、芽依は苫小牧っつかカオるんに引っ付いてたから真琴だけあっちにおいていくわけにはいかないからなぁ。旭川と同様、血盟も自衛隊を増やして拠点を守ってもらってた」



 うんうん……って、芽依さんが俺に引っ付いてた???

 全く気がつかなかったぞ?誤解じゃないか?

 たまぁに見かけた事があるくらいだ。何か小説を書いてるとかで食堂でパソコンを鬼のように打ってるとこを見かけたな。



「カンさんとミレさんの言いたい事はわかりました」



 タウさん…………?今のでわかったのか?……くぅ、俺にはさっぱりわからん。うちに下宿してるって話しかしてないよな?あと血盟員が自衛隊?



「それは私も考えました。うちは身内も多いですが、仕事関係者も多い。苫小牧には交代で入らせてもらっています」



 ……!わかったぞ。

 つまり、トマコ拠点で下宿屋をやれ、という事か?



「違いますよ、香」


「ええ、違います。カオるん。まぁ近いと言えば近いのですが、私達はウィズから漏れる魔素のようなものが、ファンタジー化に欠かせないと考えています」



 ふぁっ?ふぁんたじぃか?



「リアルステータスだったり、生活魔法だったり、まさにファンタジー化ですよ」


「確かに」


「ウィズから漏れる、と言いましたが、最近それは違うのではと思い始めました。春さんやマルク君から聞いて気がつきました」



 あ、俺から漏れる加齢臭の話か?

 えっ違う事がわかった?

 よし、よっし!そうだろ?最近匂いには敏感で常にシューシューしているからな。



「カオるんは頻繁に魔法を使っていますよね。ライトやヒールはしかり。マルク君も真似ていますね」


「あ、うん。だけどちゃんとMPは気にしてるぞ?青いバーが常に満タンになってるように、レベル1程度の魔法を使いまくってる。その……不安症と言うか、本当は毎朝カンタマしたいくらいなんだが、アレは魔石を使うからなぁ」


「ああ、ゲームでもカオるん、いつもカンタマしてたよな」


「カウンターマジックはともかく、小さな魔法でもかけまくる事、それがカオるんの周りに魔素を溢れさせている原因でないかと思いました」


「そうそう、ソレ。ソレをタウさんから聞いて俺も岡山で小さい魔法の乱発を始めた」



 ゴンちゃんも来てたんだ?



「ええ、カオるんの…ウィズの周りに魔素が溢れているならゴンザレスさんもそうだと思い聞いてみました。ですが、そんな事はないと」


「ああ、別に俺の周りでリアルステータス表示が頻繁に発生するとか起きてなかった。俺はそっちこそ異世界帰りが多数いるので起きてるのかと思ってた。異世界帰りが謎のパワーを持ち込んでるってな」


「拠点をバラバラにした事でハッキリとソレは違うと結果が出ました。私達が集まっているから起こったのではない。ウィズだからでもない。カオるんが頻繁に魔法を使う、それが魔素ダダ漏れに繋がっている。まぁ、検証もしていないし確証もないですが」


「検証と言うか、俺が岡山で頻繁に使い始めた事で今後明らかになるかもな」



 うん。………うん???何の話だっけ?俺の加齢臭の話をしてたんだっけか?



「違いますよ。アジト認定の話です。つまり、ミレさんもカンさんも、現在の手持ちの拠点でのアジト登録に悩んでいるのですよね」



 つまりがどこでつまってたのかわからんが、カンさん達、そんな事で悩んでいたのか。



「私もそうなので気がつきました。今後も小樽を拠点として小樽をアジト登録すべきか」


「はい、そうです。旭川をアジト登録しても盟主が苫小牧に居るのでは拠点の意味がないかなって」


「そうなんだよなー。富良野アジトでもトマコに寝泊まりだからなぁ。かと言ってあそこを誰かに譲るのもなぁ。譲ってもいいくらい親しいやつが血盟員の中にまだ居ないからなぁ」


「交代で苫小牧に行かせるくらいなら仕事仲間や親族全員を引き連れて苫小牧に来たいくらいです。が、そこまで苫小牧拠点も広くはないでしょう。それに、茨城の洞窟から道内に分散した意味も……」



 タウさん、ミレさん、カンさんが顰めっ面で考え込んでいる。うーん、うちももう空いているのは地下4階だけだ。

 3拠点から引越してくると結構手狭だよな。そうだよなー。洞窟拠点が人が増えて手狭になったから北海道に来たんだよな。




「面倒くさい男どもね。それならカオるんが広い所に引っ越せばいいじゃない」


「えっ、俺? 広いとこ……どこだ?いや、北海道はどこも広いが1からまた拠点造り?」


「あの、タウさん。アジト認定って検証出来ませんかね。その、例えば苫小牧よりずっと広い大雪山拠点。あそこの一画をアジト認定可能かとか」


「なるほど。例えばアジトの申請が区画ごとに出来るか、例えば、地下1階フロアがハケンの砂漠、2階が筑波の砂漠と言う感じですね」


「もしも、それが可能なら、大雪山本部に各血盟のアジトが揃う。現在持っている場所はサブの別荘的になるかな」



 おおう、なるほど。さすがゆうご君、若者は頭が柔らかくて発想が凄いな。

 北海道に別荘、湾に大型客船……、地上の草原に馬やポニー太達、ええのう。めっちゃ良い。


 アカン、アカン。今は大災害の最中だった。



「問題はそういった登録が可能かどうかです」


「まずは検証にいきませんか? 椿大神社へ」

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