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254話 アジト①

 -----(春政視点)-----


 最近の苫小牧の定例会議は、開始前30分で裏会議を開くのが恒例化している。

 メンバーは、私、ミレさん、キヨカさんの3人だ。



「香のアイテムボックスもだいぶ整理されましたね」


「とは言え掃き出したのは津波以降拾ったもんだけだろ?」


「はい、そうですが、カオさんがゴミと言っていた物はほぼ出せたと思います。それと知らずに入っていた御遺体も」


「あれだけ出してもまだ香のボックスには物が残っているのですよね。このアイテムボックスとはいったいどのくらい入るのか、恐ろしいですね」


「あー、自衛隊でも大きさの検証はしてるみたいだな。戦艦とか入れてみてるみたいだ」


「日本に戦艦はあるのですか?」


「知らんが、検証で使ったのはどっかから流れてきたやつだと言ってたな」


「外国の………。中に遺体も多かったのでは?」


「ハマヤンも仲間経由で聞いただけだから詳しくは知らんが、結構出てきたらしいな、死体が。かなりデカイ戦艦だから沈む前はそれなりに乗ってただろうよ」


「……そのご遺体は?」


「自衛隊でまとめて火葬したそうだ」


「まぁ妥当ですね。現在この災害で国交など無いに等しい。国まで遺体を送り返す義務はないですね。火葬して成仏させただけでもありがたく思っていただきたいですね」


「カオさんが呼び出されたりはしなかったですね」


「当たり前です。何で香がそんな事をしなくてはいけないのですか。他所様の国の兵士までは頼まれてもリザレさせませんよ!例えどっかの国の王様や大統領に頼まれても、です!」


「そうですね!耳に入らないようにしましょう。あ、余計なネットを見せないのは今後も強化していきましょう」


「そうだなー。まぁでも人助け大好きカオるんだからな。救助で忙しくしてやればそっちに気をとられないんじゃないか?」


「そうですね。救助は週一回の予定でしたが増やしますか?」


「旅行や苫小牧内の拠点行事を増やしましょう!LAF内のイベントでもいいし、カオさんは子供が参加する行事は好きそうです」


「ふむ。この会議前会議にマルク君も巻き込みますか。地下2階の子供フロアは彼の管轄ですからね」


「そうですね。それに、カオさんを守ることにかけては揺るぎのない信念を持ってますから、マルク君は」





「おはよー。みんな早いな」



 香が入って来た。良かった。今日も元気そうだ。



「おはようございます。私も今来たところですよ、香」




-------(カオ視点)-------


 トマコの定例会議の部屋へ入ると、いつのもメンバーが居た。春ちゃんとキヨカ、そしてミレさんだ。

 春ちゃんとキヨカが時間より早く来るのはいつもの事だが、最近はミレさんも早い。………解せぬ。



「はよっす。カオるーん。暇なのよ。何か面白い事あったか?」



 解せなくなかった。ミレさんはただの暇人だったのか。



「うーん、いつもと変わらない、と言うか、最近牛久大仏ツアーが激混みなんだよ。牛久は今って週一だろ?参加希望者が集中してるらしい」


「他のツアーでも来てるみたい」


「ああ、それと近所の人は自力で参拝してるみたいだな」


「牛久大仏ツアーは茨城拠点で仕切っているのですよね。道の復興もあちこちで始めているようですね。道路が復活したら完全に手放していいかもしれません」


「手放すって?」


「バスツアーなり車ツアーなりを茨城拠点で考えていく、という事です」


「そうだよなー。いつまでもカオタクシーを当てにされてもなぁ。今やカオるんはトマコの星だからな」


「ちょっ、ミレさん、星とかやめれ、恥ずかしい」



「では期限決めて茨城拠点の牛久大仏ツアーから手を引きましょう」


「スケジュール調整は後で相談させていただき、先方へ報告いたしますね」


「牛久の大仏様に、もう行かなくなっちゃうの?」


「いえいえ、マルク君。牛久大仏ツアーは苫小牧拠点でも行事にしますから大丈夫ですよ」


「伊勢神宮もツアーを組みたいけどさ、お伊勢参りは年一回にしよう。神様の家をあまり騒がせたらいけない気がするんだ。勿論必要な時はいつでもお参りに行くけど、何となくはダメだ」


「そうですね。牛久大仏様のツアーは毎週で、お伊勢参りは年一回。苫小牧拠点年間スケジュールに組み込みますね」


「せっかく北海道に居るんだから、道内の大仏や神社も訪ねようぜ」


「そうだな、それいいな」


「あと、招かれない神社仏閣も調べようぜぇ。女神像っぽいご利益のある場所が発覚するかもだし」


「おう!……でもなぁ。招かれても招かれなくても俺にとって初めての場所は難易度が高いな」


「初めてでなくてもカオるんは難易度高いだろw てかさ、こないだカオるんなんで着けたん? どうした……、いや、どうやったん」


「こないだ? 椿大?」


「ちゃうちゃう、サムハラんとき。カオるんがナビだったって聞いたぞ?」


「……? あっ! あぁ、あれな。地図を見なかった。適当に行ったら…適当っつか大体の方向は聞いたので、あっちの方かー?とか進んだら着いた。神さまありがとうございます」


「ふむ、よくわかりませんが、香はこまかく考えずにザックリとした方が神様に導かれるのでしょうかね」


「ウィズに神様探知機能なんか無かったよな?」


「ふふ、父さんはねー、凄いの」



 なんかわからぬが、皆に誉めて(?)もらえた気がして嬉しいぞ。



「では、行事の話はこれくらいで、次は物品についてです。現在の苫小牧拠点で不足している物資について、何か問題はありますか?」


「作物や酪農は、拠点周りがだいぶ上手くいっているようです」


「あのね、大雪山の養老の爺ちゃんから連絡が来て、バナナ園も上手くいきそうなんだって」


「バナナ園が出来ているんですか? 大雪山に?」


「いや、名前が大雪山なのにバナナ農園とかどうなってるんだ? 雪国バナナとかおかしいだろ、バナナは南国のイメージなんだが……」


「ダンジョンバナナを目指すって爺ちゃん達が言ってたー」


「ええとまぁ、頑張っていただき成功したら大雪山からうちへ定期的に買い取りますか」


「春ちゃん、ダンジョンバナナはまだまだ在庫あるぞ?」


「どれくらい、とは聞かないでおきましょう。ですが、香のボックスに入っている物資もいずれ尽きるでしょう」


「そうなんだよなー。ダンジョンB2のテナントの品なんて食い切ったら終わりなんだよなー」


「ミレさん……どこかにマッツやスタガの店員居ないん? その人らに頑張って同じ味を……」


「いや、そもそも店舗では作ってなかっただろ」


「だったら元の品…材料はどこから来てたんだ?」


「…………どこだ?海外か?」


「じゃあもう二度と同じ味には出会えないのか…………。って俺、そんなに普段から食ってなかったわ。無くなっても困らんな」


「確かに、そう言われるとそうだな。俺もそこまでマッツしてなかった。スタガなんて殆ど入った事なかったわ」


「だろ? ミレさん」



 そう言えばキヨカのような都会でバリバリみたいな女性はいつも片手にスタガのコーヒーを持ってるイメージだな。



「……キヨカ、今あるスタガの在庫は全部キヨカのボックスに入れておくか?」


「結構です。カオさん、誤解です。私もそれほどスタガにお世話になっておりません。それにスタガは甘いから太るし」



 うお、キヨカに怖い顔で怒られた。女性=スタガなイメージだっただけなんだが。ど、どうしよう、よくお茶タイムにスタガを出していたが、あれ嫌だったのか。



「いえ、好きですよ? はい、甘い物は大好きです!……ただ、摂取後に10キロ走るのが……、正直に言います。好きです。いただけるのでしたらアイテムボックスにしまっておきます!」


「わ、わかった……」



 俺は頷きながらキヨカに向かいトレード画面を開き、スタガで検索した物を移して行った。



「オトーサン……、ボク、マッツの、パッピーセット欲しい。いっぱいクダサイ」



 ん?マルクのおねだりか。うんうん、わかった。マルクに向かいトレード画面を開いてパッピーセット関連を全て移した。



「か、香……、ぼ僕もマツドマルドをいただけますか? 和歌山の家の近所には無かったので珍しいです。毎日食べたいな」


「春ちゃん、毎日は流石に身体に悪いぞ? 朝マッツなら大丈夫か?  とりあえずマッツの残り全部渡すから、好きな時に食べて」



「カオるーん、俺も欲しいなぁ。あ、マッツじゃなくてセボンのホットスナックな。それと、タバコとお酒も頂戴。カオるん、どっちもやらないだろ?」


「ん? うん、酒とタバコね。……あと、ホットスナックと」



 ミレさんのトレード画面に移していった。

 それにしても皆がこんなに欲しがるのは珍しい。そっか、今まで他人にばかりあげてたからなぁ。やっぱまずは身内の欲しがる物は身内にやらんとな。




------(少し前に遡る)-----


 春政が、カオを除いたメンバーに念話を送った。



『キヨカさん、香にスタガを強請ってください。香が持っていても知らないところで全部ばら撒いてしまう。それなら我々が預かっておきましょう』


『そ、そうですね。……強請るの、うまく出来るかしら……頑張ってみます』


『マルク君はマッツのパッピーセットを、僕は残りのマッツをねだります。ミレさんはセボンの煙草とお酒……それとホットスナックを』


『お、おう……』


『わかったー』


『とりあえず、預かりましょう!皆さん』

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