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252話 持っててよかった④

 ゆうごが言った最低5冊が必要……、シールドは7冊ある。もうこれ使って検証すればいいんでは?


 俺はチロチロとタウさんを見た。おっさんのチロチロ見なんて気持ち悪いだけだと思うが、さぁ、決めてくれ、タウさん!



「わ……かり、ました。カオるん、5冊を頂戴できますか?」


「はい、喜んでー。あ、いいよね?いいよな?春ちゃん」


「ふぅ、はい。では5番目に立候補します。リアステ、ファーストウィズです。45を超えています」


「一応ゴンザレスさんにも連絡しました。やはり魔法書はお持ちではないそうです。それと、お伊勢参り一緒に行くって言ってたのに誘ってくれないでカオるん酷いぃぃぃ!と言ってました」



 や、やばっ、そうだった。忘れてたぁぁぁ


『ゴンちゃんすまん、ゴンちゃんごめん、すみません。今迎えに行く。家族揃ってる?』



 慌ててゴンちゃんに念話を入れた。



『もう!しょうがないなぁカオるんは、忘れっぽいんだから。今日は俺だけで行くけど、厳島神社は絶対絶対絶対に一緒に行こうぜ!』


『おう、忘れないようにてか忘れても大丈夫なように、マルクと春ちゃんとキヨカに言っておく』



 俺は忘れないうちに厳島神社参拝にゴンちゃん一家も同行する事を皆に伝えた。よし、これで大丈夫だ。

 そしてゴンちゃんを迎えに行った。



 少ない魔法書を使用する事から、1〜5番目の選択は苫小牧から抜擢する事になったそうだ。

 が、苫小牧ではセカンドウィズ選択者が多く、2番を見つけるのが面倒くさそうでそれだけは小樽拠点から連れてくる事になった。





 検証の結果。


 リアルステータスの無い者でゲームではセカンドウィズ45超えだったが、魔法習得は起こらなかった。


 次にリアルステータス所持者でゲームではWIZを選択していない者、魔法習得は失敗した。


 3番目に、リアルステータス持ち、セカンドがウィズでレベル43の人だったが、魔法習得ならず。



 4番目、リアルステータス有り、ファーストELF47、セカンドWIZ45の人、………残念。


 そして春ちゃんの番が来た。リアルステータス有り、ファーストWIZ、レベル48。



「のおぉぉぉぉぉぉぉ…………」


 春ちゃんが、orzになった。


 皆もショックを隠せない顔をしていた。そうだよ、俺もだ。春ちゃんなら魔法習得が出来そうな気がしていたんだ。

 俺も春ちゃんの横で一緒にorzした。マルクとゴンちゃんも同じ後に続いた。


 ……ん?甲子園で負けた高校球児みたいだな。地面の土、持って帰った方がいい?



 タウさんもゆうごもこの結果は予想外だったようだ。



「どう言う事でしょうか。……マルク君だけ?」


「カオるん、他に魔法書はありませんか? マルク君にもう一度試してもらいたい」


「え、いや……残念ながら持ってるのはみんなもうマルクは習得済みだ」



 ふと思い出した。

 マルクをあっちに置いて行くと決めた時、俺、魔法書を包んだよな?


 俺と言うか綺麗に包んでくれたのはあっちゃんだが……、そうだよ!マルクの誕生日ごとに毎年一冊ずつ、マルクが未習得の魔法書をプレゼントとして渡してもらうつもりだったんだあぁ。


 失敗したぁ。あれは今、あっちゃんの所かぁ。



「あっちゃんのところとは、異世界という事ですか?」



 タウさんに聞かれて慌てて頷いた。



「そうなんだ。マルクが未習得の魔法書なのに、俺、あっちゃんに預けたんだ。マルクが追ってくるとは思わなくて……、確かキュアポイズンとかイラプだったかな。ごめんな、マルク」



 俺はマルクに謝った。本当ならマルクが覚えるはずだった魔法書。俺が持ったままなら、マルクは今、覚える事が出来たのに。



「む、ダメ! 言っちゃダメ、まだ内緒なんだから!プレゼントの中身を言ったらダメなの」


「あ、うん。だからええっと、プレゼントはあっちの世界においてきちゃったんだ」


「持ってるけどまだ秘密なの!」



「待ってください? 話が少し食い違っていますね」



 何故かタウさんが間に割って入ってきた。



「マルク君、カオるんからの誕生プレゼントをお持ちなんですか?」


「うん。ある。父さん追ってこっちに来た時誰かが飛ばしてくれた袋に入ってた。うんとあつ子おばさんのタブレットと一緒に」



 な、なんだと!

 魔法書があった事を喜ぶべきか、自分の過去を恥ずるべきか。どちらにしても、あっちゃん、流石だな。ありがとう。



「ヨシヨシ。うん、恥ずかしいけどヨシとしよう、マルク、それを出してくれないか?」


「ダメぇぇ! 僕が貰った僕のプレゼントなの! 今開けたらダメなの。毎年誕生日に一個ずつ開けるんだから!」



 えぇぇぇぇ………、そりゃ、そのつもりであっちゃんに渡したし、俺が地球に帰った後、毎年、一個ずつ開けて欲しかったけどさ。

 今は一緒に居るんだし、誕生プレゼントは別にちゃんと毎年渡すぞ?



『マルク君の誕生日はいつなんですか?』



 タウさんから念話が来た。



『あっちの世界は誕生日って概念がなかったから、やまと屋の子らと全員年末に祝ってた。明日から新しい年がくるなって。その時にプレゼントを渡して、年を越したら皆プレゼントを開けていたな』



「ふむ。マルク君、一冊だけ、少し早いですがプレゼントを開けませんか? 地球……この世界では、皆一緒ではなくひとりひとり生まれた日を祝うのです」


「…………僕は、生まれた日……わからないもん」


「はい。ですから、カオるんと初めて会った日、その日を誕生日にすればいいのです。だとしたら今年の誕生日はもう過ぎていますよね?一冊開けていいと思います」



 タウさん、流石だ、何という策士よ。



「そっか。………わかった。一個開けるね。………どれかな」





 マルクの目に涙が浮かんだ。



「うりゅ……。13歳のマルクへって、書いてある。まだ13じゃない」


「大丈夫です。日本では12歳の子供を数えで13歳と言うのです。だから中学1年とよく言われているでしょう?」



 タウさん、よくわからないが俺も納得させられてしまったぞ?そうなの?ニッポン。



「そうだよ、マルクは中1で俺は中3って話してるじゃん」



 翔太が横からフォローを入れた。

 それで納得したのか、13歳おめでとうの包みを開けたマルクだった。


 中から出てきた魔法書を嬉しそうに俺に見せる。うんうん良かった。あっちゃん本当にありがとう。


 タウさんとゆうごが魔法書をさわる。本当に開かないようだ。異世界のフロッピーだからな。

 そして皆が見ている前でマルクはさっきと同じように魔法書を脇に挟んで両手を前で合わせていた。


 皆の目の前でマルクは光……いや、光ったのは魔法書だ、そして消えた。



「父さん、覚えたあー」



 振り返ったマルクは嬉しそうだった。



「ここで魔法書を習得出来るのは確かなようです。が、それは異世界帰りのウィズだけなのか」


「それともまだ条件が揃わないのか」


「スキルに『魔法』が表示されていないからでしょうか」



 ゆうご、タウさん、春ちゃんが頭を抱える。俺は連れてきた人を一旦元の場所へと送っていった。


 俺のいない間にあれこれ話したそうだが、俺が聞いてもわからないからな。

 条件が足りないのか、異世界転移者だけなのか揉めたそうだ。



「……俺は、わからないし何の確証もないけどさ、条件が足らんに1票だ」


「それは勘ですか?」


「いや。転移者以外にもリアステが出てるんだぜ? 俺らだけのわけがない。」


「そうですね、そうでした」


「だとしたら条件かぁ。何が足りないんだろう」


「そのうちわかるんじゃないか?」


「そうですね。では、もう一度伊勢神宮へ行き、そこで魔法書習得可能かを検証しましょうか」


「僕もう開けないからね」



 マルクからハッキリと拒絶され、伊勢神宮での検証は却下になった。


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