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250話 持っててよかった②

 -----(カオ視点)-----



 待望のお伊勢参りに行く事が決まった。


 ブックマークは伊勢市駅付近だった。伊勢市駅近辺は多少の津波はあったようだが水は引いていた。船で近くに上陸してそこでブックマークをしたのだ。


 そこに全員を連れて行き、ブックマークが無い者はブックマークをした。

 周りの状況を見て、何とか車が走れそうだとカセが判断をしたので、一度トマコに戻りキャンピングカーを準備した。


 現在は皆、アイテムボックスの所持者なのだが、やはりキャンピングカーに色々と積んで行くのが楽しいようだ。

 嬉々として冷蔵庫に飲み物を入れたり、お菓子を棚に積んだりしていた。


 2台に分かれて出発する。あ、ブックマーク先に飛んでからだ。いくらなんでも苫小牧から伊勢まで車では行けない。





--------------


「ここからどのくらいなん?」



 走り出した車の運転席へ向かって話しかけた。



「ええと、まずは外宮なのですぐですよ。ちょっとぐるりと回りますが5分くらいじゃないかな」


「え、そんな近いん?」


「はい。外宮は伊勢市駅前から参道が伸びていて徒歩でもすぐです」


「それなら歩けばよかったか」


「まあでもこのご時世なので、参道脇のお店は閉まってるでしょうから」


「だよなぁ。って事は赤福も食べられないのか」


「そうですねぇ。伊勢市駅の売店とかに置いてあるんですけどね」


「香、あれは日持ちしません。あの日から売店に置いてあるとしたら確実に腐ってますよ」


「だよなぁ……。食えないと思うと尚更食いたい。ってか俺、人生で一度も赤福食った事なかったわ」


「あんころ餅みたいなやつだよな?」


「ミレさんは食った事あるん?」


「ああ、確か職場の誰かが伊勢に行った土産とかで持ってきたな」


「いいなぁ……」



「到着です」



 本当にあっと言う間に着いた。

 人っこひとり居ない。車も走っていない。


 大きな鳥居の向こうに見える緑。何だろう、緑が鮮やかだ。

 火山灰の被害は受けなかったんだろうか?精霊に灰を飛ばしてもらおうと思っていたが、何か大きなお世話な気がした。


 俺たちは車から降りて、鳥居を潜った。

 俺に付いて来ていた精霊が鳥居の前で止まった。…………何だ?どうした?

 何かオロオロしているように見える。俺は精霊を収納した。


 精霊を収納したら俺も鳥居を潜れないかと思ったが、そんな事は無かった。

 もしかして他所様の精霊の家……か何かなのか?まぁいいや。



 俺たちは何事もなく普通にお参りを済ませる事が出来た。お願い事はしない。今までの無事のお礼を言う。

 人は居ないのに、やけに綺麗だ。神事に携わっている人達がどこかに避難して通っているのだろうか。


 そして外へと戻り次は内宮を目指す。内宮は少し遠いそうだ。

 道は通れるが雑草は結構生えていた。他の車は通らない。そこかしこに住宅はあるが人の姿は見えない。避難所が近くにあるのか?


 たまに、倒れている塀や古い家屋も見かける。全く被害がなかったわけではないようだ。

 30分は走らなかった。思ってたより早くに着いた。



「道が想像してたより走れたので20分程度で着けましたね」



 車を降りた先に大きな鳥居、やはりその向こうは青々とした緑の大木が見える。

 内宮は外宮より広いようだ。


 入って少し行くと川があり綺麗な水が流れていた。そこで手を洗うそうだ。手を清めた後は皆の後をついて太い木々を横目に進んで行く。

 砂利道も誰かが手入れしているのかゴミや枯れ葉もなく整っていた。



「あそこ、人が居ますね」



 カセが指差した方を見ると木々の間に道があったのか、箒のような物を持った男性が出てきた。

 向こうもこちらに気がつき頭を下げて会釈してきた。


 話を聞いたところ、どうやら普段からここで暮らしていた神職の方らしい。どうやらあの災害を生き抜いてきたらしく、奥にはもっと沢山の人が暮らしているそうだ。



「私たちは元から自給自足を目指した生活をしておりましたので、今までやってこれました」



 それでもやはり生活用品で足りないものはあるそうだ。マルクがお守りを欲しがったので、頂くことは出来ないか聞いてみた。

 快く受けてくれた。代わりと言ってはなんだが困ってる生活用品について聞いてみた。キヨカが聞いてくれた。


 案内されて、社務所なのかわからないが決して騒いではいけないような場所に連れて行かれた。

 色々と乗せた木のトレーのような物を運んで、巫女さんのような服の女性が入ってきた。


 お守りを色々持って来てくれたようだ。マルクや翔太が幾つか選んでいた。



「お父さん、緑のと青のとどっちが好き?」


「カオるんのは厄除けにしとけよ」



 俺が答えるより先にミレさんがマルクへ向かって答えていた。



「ただの厄除けじゃ無理じゃないっすかね、大厄災避けとかありますか?」



 いつの間にかクマ達も加わっていた。

 全部で幾らかとカンさんが聞いていたが、お金は結構ですと断られた。



「こんなご時世ですのでどうぞお受け取りください。皆さまの安全を祈念しております」



 と、おっしゃって廊下へと下がっていった。キヨカが後を追ったので生活用品を渡しているだろう。



『足りない物あったら念話くれ』



 キヨカに念話を送っておいた。



 伊勢神宮の外宮と内宮での参拝も済ませて、俺たちは伊勢を後にした。



「さて、どうしますか? 例の鈴鹿市の……椿大神社でしたっけ、そこに向かってみますか?」



 そうだ、せっかく三重県まできたんだ。例の『招かれてないと辿り着けない神社』に行ってみるか。



「行ってみるか。招かれてないから辿りつけないけどな」


「カオるんはいつも辿りつけないだろ」


「一緒の車だからカオるんがダメなら全員辿り着けないですよ」



 カンさんまでソレ言う?酷い。



「カオさんが運転するわけじゃないし、あ、でもこの中で1番行いが良いやつの運転で行きます?」


「そうだな。着ける確率が上がる」



 俺たちは窮屈だが一台のキャンピングカーに乗った。



「着けるなら全員で。………まさか、カオさんだけ飛ばされないよな?」


「僕、お父さんと手を繋いでおくね!」



 マルクは手を繋ぐと言いながら俺の腰にしがみついた。シートベルトが出来ん。カセ、安全運転で頼む。





 そして俺たちは着いた。椿大神社に。

 着けてしまったのだ。俺も一緒に。



「招かれてたのか?」


「誰だ? 誰が招かれた?」


「昨日神様の夢見なかったよ?」



 うん、誰かはわからんが、招いてもらった以上はお参りをしていこう。

 入っていくとかなり大きな神社だった。



「こんなに広くて立派な神社なのに、辿り着けない人っているんですかね? 普通に皆、参拝に訪れそうですけど」


「そうだよなぁ?観光地っぽいよな」


「よっぽど悪い事をしたやつが辿り着けないんじゃないか?」



 良かったぁ、俺も辿り着けて……。

 とりあえず順番に皆、手を合わせていった。



「ここは何の神様がいるの?」



 マルクの問いにはキヨカが答えた。予め調べていたようだ。



「みちびきの神さまですって。諸願成就や平穏を導くそうです」


「しょがんじょーじゅってなぁに?」


「色んなお願い事を叶えてくれるんです」


「お願いしてもいいの? 僕さっき、ありがとうは言ったけどお願いはしなかった!もっかい行ってくる!」



 おお?ここはお願いをしてもいい神様なのか。

 そう言えばゲームでも験担ぎを神殿で祈ったりしたな。強化スクを使う前にOEが成功するように祈ったっけ。


 そうだ!と、思いついた。強化はしないが、マルクに魔法書を持たせてお祈りをさせよう。

 もしかしていつかは習得出来るようになるかもしれん。


 マルクが未習得でアイテムボックスにある魔法書……魔法書、あ、ミストスリープはどうだ?



「マルクー、ちょっと待て。これ持って祈って」



 不思議そうな顔で戻ってきたマルクに魔法書を渡した。

 マルクはそれを脇に挟んで両手でパンパンとお参りを始めた、と、その途端にマルクが光った!


 光は一瞬で収まった。

 収まったが、光ったよな?


 皆、大驚愕で固まっていた。という事は皆もマルクが光ったのを見たんだ。



「何だ? 今の……」


「カオるん、マルクに何させた?」


「マルク君、大丈夫ですか? 何がありました?」


「マルク、平気かっ」



 皆がマルクに集まり、マルクもオロオロしながら俺の顔を見ていた。

 そして俺は気がついた。マルクが手を合わせる時脇に挟んだ魔法書が消えている事に。

 地面を見ても落ちてはいなかった。


 マルクが祈った。魔法書が消えた。


 つまりはそういう事だろう。



「どう言う事です? 香?」


「あ、すまん。マルクに魔法書持たせたんだ」


「まさか魔法を習得したんですか? ここで? ここで祈れば魔法を習得出来るんですか?」

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