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247話 国外②

 ディテクション:隠れている敵を見つける

 ゲームでは、地面の下にいる敵をディテクションを使う事で地面の上にと出す事が出来た。


 しかしディテクションをしたウィズに敵が群がってくるので、この魔法は諸刃の剣、うっかり使うとぽっくり死ぬ……から滅多にと言うかほぼ使った事がない魔法だ。

 使い勝手の悪い魔法なんだ。



「地面の中かぁ……」


「待ってください、注釈は『隠れている敵』ですよ?『地面の中』とは書かれていない」


「って事は、もしもこの部屋にスパイが隠れていたとして、ここでディテクションをしたらスパイが出てくるって事ですか?」



 皆が俺を注目する、知らん、見られても知らん。使った事ない。と言うかスパイが居たかどうかも知らん。



「カオるん、ちょっとこの部屋でディテクションを使ってもらえますか?」



 タウさんに言われて頷いた。が、本当に出てきたら怖いな。



「……デ…デテクション」



 何も起こらない。魔法が失敗したのか、敵がいなかったのか。



「これは、試すのは難しいですね。カオるん、ディテクションは魔石を使いますか?」


「いや、使わん。MPも大して使わんかった」


「ふむ。……では、今後は会議前にディテクションをしていただきましょう。それと苫小牧の拠点でも使ってみてください」


「スパイが敵にあたるって事か」


「どうでしょうね。マップに赤く映れば、……!そうでした、私達にはマップがありました。スパイがマップに赤く映ればそれで確認できましたね」



 え、じゃあ俺デテクションしなくていいのか?


 まぁ念のため、地面の下にゾンビがいないか発見のために拠点周りで使ってみよう。



「けどさぁ、ゲームじゃ地面下の敵はマップに映らないよな」


「そう言うシステムなんで」





 そもそもLAFというゲームは、20年前に隣の国で始まったゲームだ。人気が出てあっという間に主要国の15カ国で追いかけるようにサーバーが出来た。日本もそのうちのひとつだ。

 

 ゲームはアカウントを作成するとまず最初に国を選択、そこからサーバーを選択するのだ。


 たとえば、日本に住んでいれば、まず『日本』を選び、言語を選び、そして次にPK(プレイヤーキラー)が可能か不可能か、人気か閑散としているかでサーバーを選択、そしてキャラクターの職業を選択、名前を付けるといった感じだ。


 一度サーバーを決めるとそのキャラはそのサーバーでしか動かせない。複数のサーバーにキャラを作成する事は可能だが互換性はない。

 スタート当時は無料ゲームでやりこめばやりこむほどレベルが上がるシステムだった。


 それが10年も過ぎると飽きられたのか、離れるプレイヤーも多く、サーバーの数もどんどんと減少していった。完全撤退する国もあった。

 大災害前は日本国内でも4サーバーまで減っていたが、根強いファンもいたようで日本からの撤退はなかった。


 あの大災害の最中でも日本ではサーバーが動いていたのだ。筑波の地下シェルター内にサーバーがあった事やキングジム達が暇を持て余していたのもあるが。


 海外においてはゲーム元であった隣の国は元より、あの災害時に動いている海外サーバーはひとつも無いようだった。






「予想外に荒れませんね」



 大雪山の定例会議ではLAFの話題で盛り上がった。



「まぁ国外からの接続が想像以上にラグいのもあるだろうがな」


「それにしても海外勢は狩りには出ず、街でチャットですよ?」



 うん、そのチャットが日本語じゃないから俺は読まないようにしている。

 たまに、日本語か?と思うと、漢字だらけだったりよくわからないひらがなやカタカナだったりする。


 英語は読めん。英語じゃないっぽいアルファベットの羅列もある。

 これはもう狩場荒らしではなく全チャ荒らしだ。



「俺、全チャは閉めてクラチャだけ開けてる」



 チャット欄は、全チャと呼ばれる全体チャット、クラチャと呼ばれる血盟チャット、それとウィスパーと呼ばれる個人の内緒話チャットがある。


 現在の全チャはカオスだ。



「血盟申請がうぜぇ」



 ミレさんが嫌そうな顔でテーブルに突っ伏した。


 わかる。何て読むのかわからん名前の奴らからの血盟加入が後を絶たない。

 誰だよ、お前ら。



「みんな、どーしてる?」



 一応、聞いてみた。



「即効却下だな」

「放置です」

「入れませんよ、拠点の仲間だけでいっぱいです」


「血盟員募集してないって書いてあるのに」


「他の血盟でも揉め事が発生してるみたいですね」


「他の?」


「ええ。転移者でない普通の血盟です。血盟員が少なかったので加入を了承したり、絆されて申請受けたとこがあるみたいですが、言葉は通じないし、クレクレだったりで血盟解散したところもあるみたいです」


「カオるん、絶対に申請承認したらいけませんよ」


「大丈夫だ。春ちゃんに任せてる」


「そう言えば、聞こう聞こうと思って忘れていたのですが、カオるん、ゲーム内のお金ってどうなっていました?」


「そうだよ、異世界じゃGのままだったんだよな?」


「ああ、うん。アプデで通貨変わったの知らんかったからな。でもゲームじゃ、青い通貨に変わってたぞ?」


「やっぱそうなんだ。そうだよな。システムは一緒だもんな」



 血盟加入の話から別な話題に移ったのだが、俺は確認したい事があってまた血盟の話に戻した。



「あのさ、猫の止まり木の事なんだけど」


「猫の?何だそりゃ」


「ゴンザレスさんの血盟ですね」


「うん。元の血盟員は居なかったから今はゴンちゃんが繰り上げで盟主なんだけど、スペイン人を加入させてるって言ってた」


「現地の情報を得るためですね」


「そっか、ゴンちゃんの両親とか兄弟はあっちか」


「まぁ、こっちの家族のが大優先だけど気になるからって話。それ聞いて、俺ふと思い出した。大地の兄さんって海外じゃなかったっけ?」


「……そうです。実は、うちも若干の海外勢を承認してます」



 やっぱそうか。ゆうごが大地の家族を放っておくわけがないと思ったんだ。



「大地の兄さんってどこに行ってたん?」


「イギリスだそうです。大地は何も言わないんですが、北の砂漠はイギリス在住に限り血盟加入を許可しています」


「そうですか。あちらの情報は入りましたか?」


「本当にイギリス在住かの確認も出来ないし信憑性もないのですが、とにかく酷いみたいですね。イギリスは日本同様島国なので隣の国からゾンビが攻めてくるとかはないみたいですが……」



 キヨカが世界地図を広げて俺に見えるように指差した。

 あれ……、イギリスとスペインって近いな、フランスを挟んで……、で横にイタリア。


 何だ、俺が区別つかない顔のイギリス、フランス、イタリア、スペインってほぼ一緒のような国じゃないか。

 どうりで区別がつかないと思った。


「カオるん、そんな事を言ったら怒られますよ」


「そうだよ、向こうからすりゃアジア人は同じに見えるって」


「中国、韓国、日本は一緒に見えるって言うよな」


「ミレさん、それはもう古いですよ。最近は3国の違いを判る欧米人が増えてきているそうですよ」



 ええぇ……、凄いな、欧米人。俺でさえ区別つかないのに。派遣先が日比谷だったから皇居が近くて外国人に話しかけられる事が多かった。


 辛かった、目があったら終わりだとひたすら下を向いて駅まで足早に歩いてたよ。

 だってさ、駅から職場の間に大帝国ホテルがあったんだ。あそこ外国人が多いのなんの。


 いつだったか職場を出たとこで後ろから「すみませーん」って声をかけられて振り向いたら外国人グループだったんだ。

 油断した、日本語で話しかけられたからうっかり振り向いちまった。


 そんで「なんちゃらかんちゃら、ぺ〜らぺら」って英語だかなんかじゃん、もう、何言ってるか俺「ワカリマセーン」だよ。(大泣)

 マシンガンの如く流れる外国語の中で唯一聴き取った「インペリアルホテール」………ホテルを聞きたいのか?


 そこで俺は脳みそフル回転で推理をした。

 この外国人グループは迷子だ。ホテルへの行き方を知りたいのだ。

 そしてホテル名は『インペリアルホテル』。


 問題はふたつ。

 まずひとつ目、それは現在地に近いホテルがふたつある。『第二ホテル』と『大帝国ホテル』。

 第二、大帝国……どちらも日本語だ。『インペリアル』ではない。


 だが見た感じ金持ちっぽい家族だ、このどちらかのホテルに違いない。第二……大帝国……どっちがインペリアルっぽいか。

 インペリアルはなんか高級っぽい響きだ、となると大帝国の方かもしれん。


 そして問題ふたつ目は、俺は英語を話せない。………大帝国ホテルは俺の帰り道の途中だ。

 これは言葉で説明よりも有無を言わさず連れて行こう。


『カッモーン だ!』


 全身で『俺について来い!』を醸し出した。笑顔でついてくる一行。違ったらすまん。

 そうだ、連れて行けば後は(英語が話せる)ホテルマンが何とかしてくれるはずだ!

 頼んだぜ、ホテルマン。


 と言う事があった後は、その後は話しかけられないように気をつけていた。なのに、俺は同じ過ちを繰り返した。


 だって「すみませーん」でチラ見したら日本人だったからつい、「はい?」と振り返ったら、見た目日本人なのに英語をべらべらべらべら話す中国人か韓国人だったんだ。


 やられたぜ。だが俺は例の奥の手の「カッモーン」で、ホテルへ速攻案内してホテルマンさんへ押し付けた。



「カオさん……大変でしたね…」


「カオるん、頑張ってたんだな」


「僕は多少話せるから、香、外国人に話しかけられたら直ぐに呼んで」



 春ちゃん、英語出来るんだ。凄いな。……いや、周りを見回すと俺以外みんな話せそうだ。

 いいんだ、俺にはゴンちゃんが居る!『日本語仲間』だ!



「あ、すまん、俺の変な話で話題が逸れた。うちもイギリス人かスペイン人に限り血盟に入れるか?」



 春ちゃんに聞くと、春ちゃんが加入希望と話してから判断したいと言うので任せた。

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