242話 念願のゴミ整理③
俺のアイテムボックスゴミ整理、初日は会場に出した3分の1ほどを残して終了した。
その日は千歳に泊まった。祭り終了までは千歳宿泊になる。
【火曜日】
今日は昨日の血盟員に加えて自衛隊の関係者達も来る。道内はもちろん、茨城や広島、それ以外の地域からもだ。
広島や各地域からはゴンちゃんが運び屋をやってくれる。俺は道内の各駐屯地を周り、参加者を運ぶ事になっている。
10時開催なので9時半から『ウィズタクシー』が始まる。
俺はその前にゴミを並べないとならない。タウさんやキヨカと共に『千歳会場』に飛んだ。
昨日のゾーンに、今日は壊れた乗り物を出していく。昨日残った物には『正常稼働』の札が付いていた。
それぞれのゾーンに、車、バイク、自転車、船、飛行機を出す。
車は多かった。あの津波で海水に飲まれて流されていた車。鉄は材料として使えるのでカンさんは喜んでいた。海水を落としたいとの事で生活魔法で水を出して、車にかけて回っていた。
意外と少なかったのがバイクと自転車だ。特に自転車は多少濡れても問題がなかったのか昨日の『壊れていない』検索条件で出た物がほとんどだったようだ。バイクは津波で流れてきた物は少なかったのだろう。うん、浮かぶ要素がないな。
驚いたのは船だ。あの日、ひっくり返った鉄壁と思ったのは船底だったのか、転覆船は結構出てきた。
しかも大きい物がいくつかあり、タウさんは急遽ゾーンを広げた。
飛行機は皆無だった。
俺は知らなかったのだが、隕石落下の数日前から閉鎖する空港が増えたそうだ。
それって、やはり隕石落下を事前に知っている者達が居たって事だよな。
予定の物を出し終えた時は9時半を回ってしまい、慌ててタクシー業務を開始した。
テレポートした駐屯地には参加希望者が既にスタンバっていたので、直ぐに千歳へ送るを繰り返した。
ゴンちゃんも頑張っているみたいで、会場前は自衛隊員で大混雑になっていた。
あちこちで再開を喜びあっている姿が見えた。
キヨカに言われた地点から、全てのピックアップを終えて休憩所へ向かった。
今日は壊れた物がメインなので俺には興味がない。いや、元々出したかった物なので、要らないのだ。
カセ達は自分で修理が出来るそうで、車ゾーンを周るそうだ。翔太はカンさんと廻っている。
俺のタクシー業務は見終わった人達を送っていくので、忙しくなるのは夕方だ。
それまでは休憩室でパソコンを開いてLAFでもやっていようと、マルクや春ちゃんと遊んでいた。
ゴンちゃんにも声かけたのだが、ゴンちゃんのタクシー業務の範囲は地域がばらついている上に、道内の駐屯地のように整理されていない。
遅刻者や集合場所に迷って付けない人待ちで、かなり遅れが出ているようだった。
手伝おうかと聞いたが断られた。これ以上迷子を出したくないと言われた。どう言う意味だろう。
「何かあったら呼んでくれ」
「サンキューな」
ゴンちゃんは忙しそうに去っていった。
俺たちがまったりとLAFをしていると、タウさんから念話が入った。
『カオるん、至急船ゾーンへ来ていただけますか?』
俺たちは顔を見合わせた後、LAFからログオフして船ゾーンへとテレポートした。
今日は会場を廻っていなかったが自衛隊員で結構混み合っている。まるで自衛隊の祭りか何かのようだ。
俺達は船ゾーンの端っこでキョロキョロとしているとタウさんが先に俺たちを見つけた。
「カオるん、こちらです」
「どした? タウさん、何かあったん?」
タウさんに呼ばれた先には、小振りな潜水艇?海上を走る船ではなく水に潜る系の物が横倒しになっていた。
俺は車も船も種類には疎いのでハッキリとはわからない。ただ自分のアイテムボックスから出してゴロンと横になった様子が、小さい潜水艦とか潜水艇とか呼ばれる物っぽかった。
ええと、水中に潜る仕事で使われるっぽい?その周りに自衛隊達が集まっていた。
近づいて行くにつれて、転がったその船のドアだか窓が空いていた。
そして、横にはブルーシートが敷かれて人がふたり横たわっていた。
どうした?何か事故でも起こったか?ウィズのヒールが必要なのかと思ったが、タウさんは何も言わない。
シートに横たわった人の横にしゃがんでいたフジが俺を振り返ったが、フジも口をつぐんでいる。
「あの……タウさん?」
「潜水艇から出てきました。……亡くなっているのですが、一応ヒールをしてみてもらえますか」
ああ、そっか。
俺はあの日、亡くなった人を入れたまま、アイテムボックスに収納していたんか。
すまん……、気がつくのが遅れて。
俺は両手を合わせて拝んでから、そのご遺体、今さっき死んだばかりのように綺麗な遺体の横にしゃがみ込んだ。
その胸元に手を触れてからそっと唱える。
「ヒール………フルヒール……」
身体を光が包むが何も起こらない。
うん、死んでるんだもんな。ヒールしても無理だよな。
あ。
「リザレクション……」
ダメ元でかけた。ウィズの持ってる復活の魔法。ゲームだとキャラが生き返る。ゲームだと………。
「ゴホッ、ゲッホッ」
「カオるん! ヒールを!」
タウさんの声に驚いて振り返るとタウさんが何かを指差している、そっちを見るとリザレした遺体が咳き込んでいた!!!
「ひ、ひひひーる!」
「ゲボっ、ハァハァハァハァ」
「大丈夫かぁっ!」
隊員が生き返った死体を揺さぶっている。
「カオるん、カオるん、こっちもだっ!」
サンバに言われた方を見た。もう1人の遺体。
「あ、え、あぁ、うん。あの、リザレクションン?」
疑問のような詠唱だったがそちらの遺体も蘇った!
どゆこと?ウィズって何だ?これはリアルなのか?俺は夢を見てる?まだムゥナの街に居るのか?
いや、異世界転移した事もそもそも夢だったのか?
「カオるん、現実ですよ!」
「ゴンちゃんも呼んだ」
「そうですね、ミレさん、ナイスです。カオるんが出来るならゴンザレスさんも」
俺がボォっとしている間にゴンちゃんが呼ばれてやってきた。
一旦千歳の本部へと移動した。
タウさん、ミレさん、カンさん、ゆうご、俺とマルクとキヨカ、春ちゃん、それからサンバ、フジ、ハマヤン、そして将軍と官房長官だ。
「ウィズがリザレクションを使える事が知れ渡ったら大変な事になります」
「カオさんとゴンザレスさんが拉致されるかも知れませんね」
「さっきの場所には目撃者がわんさか居たぞ?」
「す、スマン、俺考えなしで……」
「いえ、私も全く考えていませんでした。リアルの世界でこれだけ魔法やスキルが使えるんです。ウィズのリザレクションが使えても不思議じゃない」
「ショーグン、カオさん達を守れないか?今日来てるのは自衛官ばかりだし、あの場に居たのも自衛官だ。箝口令をしけないかな」
「勿論です。箝口令はキッチリと敷きましょう。だが自分の口から言うのもなんですが、自衛官と言えど所詮はひとりの人間、どこまで抑えられるか」
「カオさんとゴンザレスさんにはしばらく護衛もつけましょう。怖いのは国内だけではありません。外に漏れる可能性もある」
俺が拉致されるのは構わないが、マルクや仲間を盾にとられたら無理だ。
いっその事、海外にメテオを………。
「そうだな、カオるん。そんときゃ俺も一緒にメテオるぜ」
「待ってください、早まらないで。海外にも日本人は居ます」
「けれど知らない日本人より、身内の香。どちらを取るかは一目瞭然ですね」
「そうですね……」
「待ってください、タウロさんまで! 皆さん冷静に話し合いましょう」
将軍は焦っていた。俺は自分のミスから周りを巻き込んだから周りを守るためなら何でもする。
「ええ、カオるん。何でもしてもらいましょう」
タウさんが怖いぞ?俺に何をさせる気だ?
「隠すから余計に探られる。秘密を知るために拉致に走るかもしれない。ならば、秘密が無いといいのですよ」
タウさんが悪そうな顔で微笑んだ。
あ、春ちゃんもタウさんの考えがわかったのかニッコリしている。
「私達に手を出すならそれ相応の覚悟がいる事を、予め知っていただけば良いのです。ウィズの凄さを、我々のスキルを、隠さず拡散していきましょう」
「そうですね。いずれ世界はそっちへ動いていると思う。異世界から香達が戻った。不思議な力を持って。その力は徐々に周りへと広がっている僕らは新しい世界でテッペンに居ればいいんです。手を出すと痛い目にあうと知らしめればいい」
「だよな。自衛隊だってリアステ持ちは増えてる、生活魔法も使えるようになり始めている。海外になめられるな、ですよ、将軍!」
「そうだな、少なくとも現在の自衛隊にはレベル90超えのナイトが2名と火エルフがいる。カオさんだけに目が向かないようにオープンにするか。濱家、光丘、藤野、出来るか」
「はい!」
「出来ます!」
「お任せください」
みつおか……誰? 濱家はハマヤンだよな?藤野……も、フジ。としたらサンバがみつおかなんか。
「サンちゃん、フジ、ハマヤン、俺のせいでスマン。だが一緒に死んでくれ!」
ちょっとノリで言ってみた。
「ダメぇ! 死んじゃダメ! 父さん死んだらダメだから!」
「カオさん……俺らは死なんし」




