241話 念願のゴミ整理②
【月曜日】
少し早いが俺たちは千歳へ向かった。俺と春ちゃんとキヨカ、カンさん、ミレさんの5人だ。
朝の4時すぎだと言うのに、タウさんはもう動いていた。……まさかタウさんも枕投げに?千歳でも枕投げが開催されたんだろうか?
「おや、お早いですね。……隼人さんは?」
「あ、今連れてきた方がいいか?あとで迎えに行こうと思ってたんだけど」
「ふむ、まぁいいでしょう。ゆうご君も今食堂で食事をとっています」
みんな早いなぁ。俺のゴミ整理に申し訳ない。
食堂に行きゆうごと合流、今日の流れを説明された。
今日は血盟関係者のみの参加で、千歳拠点の側の草原が会場となる。全員の食事が終わるとまだ開けてない暗いなか、会場地点へと歩いて移動した。
「ここをブックマークお願いします。『千歳会場』で。これから7日間、ここにテレポートする事が多くなるでしょう」
ほんの少しだけ、東の空が明けてきた気がした。
「ゴンザレスさんが到着しました。カオるん、迎えに行ってもらえますか?千歳の正門前です」
「わかった」
俺は『千歳拠点正門』のブックマークを選び、そこへ飛んだ。そこには先日会ったばかりのゴンちゃんが立っていた。
「おう、はよー、カオるん。寒いなー」
「ゴンちゃん、ご苦労様、朝早いと寒いなー、昼でも寒いけどな」
軽い挨拶の後、『千歳会場』へゴンちゃんを連れて戻った。
「すみません、ゴンザレスさん。そちらもまだ大変なのにお呼びしてしまって」
「いえいえ、カオるんのアイテムボックスの中身放出と聞いたら来ないわけにはいきませんよ」
ゴンちゃんは俺と同じウィズで異世界戻りだ。つまり魔法が使える。しかも俺よりも高レベルウィズなのでMPも多い。
今回はタクシー役、エリアテレポートでの人運びをやってくれるそうだ。
ただ、勘違いしてないか?俺のアイテムボックスの中身放出?ゴミ整理って内緒なのか?だとしたらゴンちゃんを騙して使う事になっちまう。タウさんがそんな事をするとは思えない、ゴンちゃん勘違いしてるぞ?
「カオるん、大丈夫ですよ? ちゃんと説明はしました」
「相変わらず心配性だな、カオるんは。ちゃんと聞いてる。地球に帰還後にカオるんが拾いまくったもんを出すんだろ?」
「そうだぞ、ゴミだゴミ。津波で流れてきたゴミだ、ゴミ」
「ふはは、どうせカオるんの事だから意識せずに良いもん拾ってんだろ、出せ出せ、貰ったるわ」
えぇぇぇ、いいもんなんて無いぞ、知らんからな。
俺はブツブツ言いながら、タウさんの先導でアイテムボックスから地面へと出して行った。
キヨカも書類を見ながらチェックを入れたり書き込みをしている。
草原が少し明るくなってくると、細い紐で区画が仕切ってあった。と言うか、区画も広くて最初はなんの紐かはわからなかった。
種類ごとに出していくたびに紐を越えていくので種別で区切っているのだと気がついた。
「本日は乗り物ですね」
検索の頭に『壊れていない』を付けているので、今日出したのは使える乗り物だ。
『車ゾーン』は案外広かった。こんなに拾ったっけ?栃木に向かって茨城で迷子になってる時だろうか?
『バイクゾーン』バイクを拾った覚えはないがアイテムボックスに入ってたって事はどこかで収納したんだな。
『自転車』ゾーンで自転車を出している時に思い出した。そうだ、自転車屋さんと思ったがバイクも置いてるところが結構あったわ。自分は乗らんが、津波が来たら錆びるだけだから勿体無いと思い収納したんだ。
『船ゾーン』は大きくとられていたが、北海道の港拠点が完成した時にタウさんやゆうごにも分けたし、うちのトマコにも浮かべているので、案外少なかった。
「壊れていない縛りだともう幾つも残っていませんね」
「多少壊れていても直せるんじゃないか?」
「そうですね。明日は自衛隊も参加しますし、壊れていても欲しがると思いますよ。今日はこの程度でいいのでは?」
うん、意外と小型が残ってた。遊覧船とか屋形船とか釣り船……か?わからん。
『飛行機ゾーン』があった。
流石に飛行機は持ってないぞ?羽田から流れて来たとしても日比谷のあのビル群は狭くて入って来れないだろう。
それに飛行機は鉄の塊だし直ぐに沈みそうだ。海の底に沢山ありそうだ。
飛行機は検索にヒットしなかったと伝えると、ヘリコプターで検索するよう言われた。
いや、ヘリも一緒だろ。
『壊れていないヘリコプター』で検索した。一機出てきた!ヘリなんて収納しとらんぞ!いつ入った!
出してみると俺の想像と違うヘリが出てきた。丸っこいフォルムだった。あー……どこかで触ったかもしれん。
しかし、これ欲しい血盟あるん?誰か免許持ってるんかな。
「無いと思っていましたが、まさかあるとは」
「いや、俺もビックリで……。誰か運転出来るん?」
「どうでしょうね。カオるん、これは出さずにハケンで所持しますか?」
「うーん、うちは要らんかな。警察庁と海保と陸自はおるけど飛行機の免許持ってるやつはいないだろ。欲しいやつが持ってけばいいさ」
横に居た春ちゃんも特に反対していなかった。
『コンテナ』と書かれたスペースがあったので検索すると、想像以上に沢山ヒットしたのでそれをタウさんに伝えた。
「コンテナは別日にしましょう」
そうして9時半にはトマコへ戻り、準備万端で待っていた者達を連れて千歳へと飛んだ。
10時になり、ゴミ祭り初日がスタートした。
皆一斉に会場内を走り回り、欲しいものに名前のタグを貼っていく。2時間後には締め切りになり、被った者はクジで選ばれた。
草原の各区画に置かれていた数々の乗り物が消えていく。所有者と決まった者が自分のアイテムボックスへと収納していった。
俺は合間にマルクと自転車ゾーンを巡り、何台かを選んだ。
2時からはそれらの関連小物を各ゾーンに置いていった。そして3時からは小物の争奪戦だ。
俺とマルクは自転車に取り付ける買い物カゴや、サドルカバー、タイヤの空気入れなどを選んだ。
「カオさん、チェーンロックも必要ですよ。かけないと盗まれますからね」
俺はママチャリと言われる自転車を選んだが、マルクはママチャリの他に、翔太と一緒になんか格好いい自転車も選んでいた。マウンテンバイクとか何とか。バイクと言っても自転車らしい。
それと小さい子達用に、子供用の自転車や三輪車も幾つかチョイスした。
3分の1くらいを残して終了した。




