240話 念願のゴミ整理①
念願のアイテムボックスの整理日が決まった。
長かった、長かったよ、俺のアイテムボックスがゴミ箱と化してから。
場所は千歳拠点の側の草原だそうだ。かなり広い場所を確保したので大きな物を出しても大丈夫だそうだ。
「明日の月曜日から1週間を予定しています。カオるんにはご面倒でもこの1週間は千歳につめていただく事になります」
そうなのか。……1週間も?
「明日は血盟関係者のみの開催になります」
「血盟関係者ってぇと? 元ツキサバか?」
「いえ、私たち以外の血盟でもリアルステータス持ちがいらっしゃるところはご招待いたしました。ハケンの砂漠、筑波の砂漠、埼玉の砂漠、北の砂漠、王家の砂漠、そして私の地球の砂漠。それから養老の砂漠、熟れ過ぎトマト、ドクター達の医療の砂漠でしょうか」
「他の血盟はまだリアステ出てないん? 茨城の洞窟には結構血盟が出来てたよな」
「それと自衛隊は?」
「我々と友好関係にある血盟のみのご招待です。他の血盟でリアステ持ちが居たとして現在報告にあがっていないところは無関係としました」
タウさん、流石だ、割り切ってるな。
そうだよな、俺たちに手の内を見せないやつらに俺たちの物資を分けてやる義理はない。
「それと自衛隊の方は火曜日からの参加にしました。自衛隊は恐らく貰える物は貪欲に持っていくでしょう。その前に私達が、まず欲しい物をいただく」
うんうん、……って、あの?ゴミアイテムだって事、忘れてないよな?
俺、出したらもう二度としまわないからな!北海道の美しい草原にゴミ山が出来ても知らんからな!
「大丈夫ですよ、カオるん。最後の最後まで残った物は私の精霊に焼いていただきますから」
あ、なるほど。焼却処分だな。
「皆さんの血盟からリアステ持ちの方が千歳に集まる、つまり各拠点にステータス持ちが居なくなる。留守になった拠点の管理はくれぐれもしっかりお願いします」
「お、おう」
「うちの旭川は自衛隊が管理してくださってるのでそのままでいいかな」
「俺んとこの富良野もだな。今はトマコ下宿中だからな。自衛隊の奴らに留守はしっかり守るように言っとくか」
「僕ら函館は、交代で参加させてもらいます。タウさん、血盟関係者は月曜だけですか?」
「いえ、血盟関係者は7日間通しで参加可能です。というより出来るだけ参加をお願いしたい」
「あ、じゃあ、月曜の午前午後に分けなくて曜日で交代にしようかな」
「うちは自由ー。札幌は来たい日に行く」
「アネさんだけは一応7日間の参加をお願いしたいのですが」
「えー、興味ない日も出ないとダメなのぉ? 私、鉄屑とかプラゴミは要らないんだけど。隼兄でもいいかな。タウさん」
「ええまぁ。では札幌拠点からは隼人さんが全日参加と言う事で」
「あ、隼兄は今トマコだから、カオるん一緒に連れて行ってね」
「お、おう。わかった」
隼人さんも大変だな。こっちに下宿させられたり、本当なら盟主が全員参加のゴミ拾い(?)なのに代理で参加させられたり。
まぁ大変と言いながらも楽しそうだからいいのか。アイツも大概イモコンだからな。……いもこん?
マザコン、ファザコン、ブラコン……妹を可愛がるのって何コンって言うんだっけか?
妹コンプレックス……イモコンでいいんだよな?
頭の中で考えがそうまとまった瞬間、首に剣が突きつけられていた。
目玉だけを動かして剣先から刃を辿っていくと剣を握っていたのはアネだった。
「……誰が、芋、ですって?」
「カオるん! シスコン、シスコンだから!」
「シスコンだぞ、カオるん!!!」
「シスコンですよ!」
いつの間にかマルクが膝に乗り俺にしがみついていた。そのマルクの頭のすぐ横をアネの剣が俺の喉に向かって伸びていて慌てた。
心臓がバッコンバッコンなりながら、刃から守るようにマルクの頭を手のひらで覆う。
レベル90越えのナイトにかなうウィズがいるわけがない。
「す、すすすすすみません。い、いもと、妹だから、芋じゃないからっ!」
「あらそ。芋じゃなくてもシスコンじゃないのよ。隼兄はシスコンじゃなくて単に私の下僕だから」
そう言いながらアネは剣をアイテムボックスにしまった。
「もーしわけございません!」
俺の横ではキヨカが俺に土下座していた。
激しいな、この姉妹……。隼人さん、同情するぞ。
会議が解散になると俺たちはトマコへと戻った。
春ちゃんがタウさんから書類を受け取っていた、アイテムボックスの検索条件や、検索の順番、日程などが書かれているらしい。
キヨカからアネの事を何度も謝られた。ビックリしたが気にしていないと答えた。
アネがあの程度の事で本当に仲間を斬るわけがない、ゲーム内でもナイトはふざけてよくああいう事をよくするのだ。昔パラさんにもよくやられたっけ。パラさん、元気かなぁ。
マルクがビックリしすぎたのか、あれから俺にビッタリくっついたままだ。
まるで2歳の頃に戻ったようだ。
地球に来てから色々とありすぎたから、気持ちが戻るのに時間がかかるかもしれないと思い、したいようにさせておく。
キヨカが本当にしょげていたので、夕飯の時にゲームの話を聞かせた。ゲームの話をすると何故か自分の失敗話が多くて嫌になるな。
でも皆が笑っているからいいか。
その日はベッドではなく床に布団を敷いて寝た。部屋いっぱいに布団を敷き詰めた。
マルクだけでなく、翔太や洸太、カンさん、ミレさん、春ちゃんも居る。みんなで一緒に寝た。隣は女子部屋だそうだ。キヨカや芽依さん、真琴や他の女子も居るらしい。
「修学旅行みたい」
「しゅーがく旅行ってなに?」
「んとな、小6の時と中2の時に、同じ学年で一緒に旅行に行くんだ」
「あれ?中3じゃないんだ?」
「今は2年で行くんです。3年は高校受験で忙しいとかで」
「うへぇ、今の子は大変だな。俺らん時って中3だったよな?」
「ええ、僕も中3でした」
翔太らが話していたのに、いつの間にか大人の話になっていた。
マルクが静かだと思ったらいつの間にか寝ていた。
俺も寝るか、そう思った瞬間、突然入口のドアが開き、枕が飛んできた。
枕を持った女子軍団の襲来だった。
そこから枕投げが開始された。
両者の間に布団を積み上げ壁を築く。匍匐前進で枕を背中に乗せたカセが入ってきた。
「カオさん、枕をお届けに参りました」
って、誰だよ、カセらに連絡をしたやつ。
「僕ですよ」
春ちゃん!いつの間に押入れを本部基地にぃ?そこから念話で指示を出してる?
うわぁ、あっちには何故かママさん軍団、保育士軍団、食堂軍団が加わっている!
もの凄い量の枕が飛び交っている。
楽しいからいいけどさ、枕投げの落とし所ってどこ?勝ち負けは何で決まるん?
ビィィィィっ!
笛がなり、皆がピタリと止まった。
えっ、何?審判がおったん??? 誰? 外の自衛官?審判の依頼を受けた?
そして運動会の玉入れのように、玉(枕)の数数えが始まった。
枕投げは玉入れの逆で、陣地内の枕が少ない方が勝ちだそうだ。
知らんかった、そんなルールがあったとは。
そして俺たちは項垂れている。あちら側の女子は喜んでいた。そうだ、俺たちは負けたのだ。
「あー、すっかり目が覚めたぜ」
「ですねー」
クマとナラも参加してたのか。
「香、もう4時です。このまま起きましょう。今日から待望のアイテムボックス整理ですよ、今から寝たら遅刻します。子供達はちゃんと寝る事」
眠くなーいと言いつつ、マルクは頭コックリさせていた。
「だーめ、マルクも翔太も9時まで寝ろよ?」
「ちゃんと起こしに来ますから。祭りは10時からです」
待って待って?春ちゃん、祭りって言った?
「あー、ゴホン。ボックス整理は10時からです。大人は事前準備がありますので、千歳へ向かいます。今週は牛久ツアーも中止にしてあります。9時起床、朝食をしっかりとって迎えを待ってください」
少し早いが(めちゃくちゃ早いが)大人は千歳に向かった。




