239話 広島から岡山へ③
ゴンちゃんとお互いの情報を交換した結果、やはりスマホやネットが繋がらない事で各地域の孤立感が凄いとわかった。
俺たちは比較的近い場所で早い時期に集まる事が出来た。そのおかげて色んな事に取り組めた。
しかし岡山でゴンちゃんはひとりだった。
元からゴンちゃんの血盟から帰還する者は居なかった。ゴンちゃんが身を寄せた倉敷でもLAF関係者は居なかったようだ。
隠している者も居るのかも知れないが、知りようがない。
とりあえずゴンちゃんに北海道の大雪山拠点のブックマークをしてもらう。
それから現在小型基地設置に動いているので、数日もあれば岡山でもLAFに繋がる事を説明していた。
「どうしますか?ご家族や知人も北海道に運んでLAFのアカウント作成、エルフの作成をしてもらいますか?」
「んー……、いや。あと数日なら待てる。今までも何とかなってきたんだ。今焦らなくてもこっちで繋がれば大丈夫だ」
「そうですね。では、ブックマークの主要な場所を共有しておきましょうか」
俺はタウさんが書き出した紙を見ながらゴンちゃんを連れてブックマークの旅に出た。マルクも一緒だ。ブックマーク済みをマルクが紙に記していく。
江田島のブックマークに飛んだ時は自衛隊の大歓迎を受けた。ゴンちゃんが。
ゴンちゃん、運び屋に使われるんだろうなぁ。
「大丈夫! それはウィズの使命です!」
ゴンちゃん、カッコいいぞ。
俺たちはゴンちゃんと繋がり、お互い行き来が出来るようになった。今回の旅の第一目標の、ハマヤンとゴンちゃん合流はクリアだ。
次は第二目標の、茨城と西側を小型基地で繋げる、だ。
俺たちはゴンちゃんと別れて、東へ向かい基地設置とブックマークを続けた。
実は、帰りは早いものだった。
と言うのも、ゴンちゃんが神奈川から岡山へ向かう途中ブックマーク箇所が、俺たちが予定していた向かう先とかなり被っていたのだ。
ゴンちゃんは、神奈川から山梨、長野、岐阜、京都、兵庫、それらの途中も幾つかブックマークをしていた。
俺らの予定は、山梨、長野、愛知、三重、大阪、兵庫、岡山だ。
多少の違いはあれど、通信が通じるポイントであればオッケーだ。
そしてゴンちゃんもウィズなのだから当然エリアテレポートは出来る。
それらのブックマークポイントへ俺たちを連れて飛んで貰ったのだ。その後にゴンちゃんと別れてから設置ポイントの割り振りの多少の変更を経て、小型基地を設置した。
広島のハマヤンから念話が入った
『タウロさん、LAFが繋がりましたっ!ありがとうございます』
ゴンちゃんからも念話が来た。
『タウロさん、皆さん、カオるん、ありがとうございます。こっちでもLAFが繋がりました。ビックリだなぁ。ログイン者が結構居て驚きました。こっちでも順次ログインをしてもらってます』
自衛隊も、とりあえず北海道から山口(広島寄り)まで通信が繋がった。個別で奮闘していた各地の駐屯地でも官房長官や将軍の言葉を聞けて英気が養えたと言っているそうだ。
しかし問題も色々と発生した。
特にネットが繋がった事で、緊急の救助依頼があちこちで書き込みされて大混乱になった。
窮地に陥っている日本中で、今まで繋がらなかったスマホが繋がったのだ。
何らかの充電方法を持っていた個人はここぞとばかりにヘルプを書き込むだろう。それはわかっていた。
現在地上で活躍している自衛隊や警察、消防も、動ける限りは動くはずだ。
俺たちは十分動いた。
まだ動けるはず、もっと助けられるだろう、俺を助けろ、
そんな声は無視だ。
目の前で死にかけていたら助ける。それだけだ。と言うかトマコ(拠点)では、周りの者が俺に気を遣って、そんな声が俺に届かないようにしてくれている。俺はそれを知っている。ありがたいと思ってるから、俺はそれに甘える。
タウさんが、トマコにやってきた。今、トマコにはカンさんとミレさんも居る。
ゆうごは函館拠点に、アネさんは札幌拠点だ。
「カオるん、マルク君、お疲れ様でした。ゆっくり休めていますか?」
「タウさんもご苦労様」
「ミレさん、カンさんも本当にお疲れ様でした。小型基地設置でゴンザレスさんと繋がって本当に良かった」
「だなぁ、帰りがラクだった」
「ええ。ゴンザレスさんとカオるん、ウィズに感謝ですね」
「いや俺は大して役に立ってない、今回はマルクの馬とかカセの車で運んで貰ってたからなぁ」
「残念だったのはゴンちゃんでもスクロールはそんな持ってなかったんだよなぁ」
「そう、それ。俺ちょっと期待してたんだよ。ゴンちゃんってあっちの世界でスクロール屋をやってただろ?だからもしかしてと思ってたんだよなー」
「ゴンザエモンが無かったのは残念でした」
「だよな。カオるんのナヒョウエも無いもんな」
「スクロールの入手が出来ず、テレポートリングも入手不可能、残る手はLAFでウィズのレベル上げをしてスキルを出す」
「けどそれも、仮にウィズのスキルで『魔法』が表示されてもテレポートの魔法書が無いからなぁ。さらにの仮定で魔法書があってもそれを習得する方法がない」
「現在テレポートが出来るのは、ウィズのカオるん、マルク君、ゴンザレスさん、それからリングを持っているタウさん、ミレさん、僕、ゆうご君、アネさん、サンバさん、フジさん。あ、カオるんのリングを持ってるキヨカさんもですね」
「それ以外のテレポートは厳しくなりますね。スクロールが無くなったらお終いだ」
「残ってるのは帰還スクとアジト帰還スクか。帰還スクは近場の駅だったか。まぁ何かの際に使えなくも無い」
「しかしアジトスクロールはアジト自体が無いですから」
「あ、変身スクもあるぞ?」
「ゾンビにバフォは効かないからなぁ……」
「まぁ、無い物は仕方ないのさ。最初から無いと思えばどうって事ないだろ。テレポ出来る俺が言う事じゃ無いかも知れんが、歩け!足があるじゃないか!」
皆がうんうんと頷いていた。
「随分と先延ばしにしていましたが、カオるんのアイテムボックスの整理をしようと思いまして、今日はご相談に伺いました」
うおぉぉぉ!とうとう来たぞ、俺の収納が綺麗に片付く日がぁっ!
「何だって! カオるんのカオスボックスの討伐か!」
「タウさん……、それは思い切りましたね。勇気がいったでしょう。出来る限りお手伝いします」
ミレさん、カンさん、何気に酷くないか?
まぁ、確かに、俺も覗くのが嫌になるゴミ屋敷……いや、ゴミボックスだけどな。
「アネやゆうご達は呼ばないのか?」
「勿論当日はお呼びします。今日は相談で来ました。どう進めるか事前に話し合っておかないと本当にカオスになります。カオるん、春さんとキヨカさんをお呼びいただけますか?」
「おう」
俺は念話でふたりに連絡を入れた。春ちゃんもキヨカも直ぐに来た。
「まず、カオるんのアイテムボックスの中身はカオるん個人の物であるという大前提の元、カオるんが提供してもいい物のみを出していただきます。その際、出した物に対しての代価は無いと考えていただきたい」
「つまり無料で提供する、と?」
春ちゃんが反応した。
俺は黙って聞いている。春ちゃんやキヨカがタウさんと色々と決めてくれるからな。
「カオるんが持っている物に対して代価を払える者は少ないでしょう。ですからカオるんが要らないと判断した物を無料で提供していただく事になります」
「そうですね、カオさんがゴミと呼んでいる物を出してしまう良い機会ですね」
「例えばカオるんにとって価値がなくとも、壊れた車などは鉄屑として利用できます。プラスチックでも木屑でも、私やカンさんにとっては材料になります」
うんうん、出したいぞ。
「出す物の選択はどのように?」
「こちらで検索条件を表示いたします。カオるんがアイテムボックスで検索をして、残したい物を外してから出していただく」
「なるほど。出した物を受け取る側はどのようなメンバーで?」
そうだな、大勢が居てもケンカになったら困る、いや、ケンカするような物はないか。逆に誰も要らないとなったら俺のボックスに戻すのは嫌だなぁ。
「ガレージセールは数回に分けて行います。出す種類によってお呼びするメンバーも変える事を考えています。受け取り側のメンバーは予めカオるんにお見せして、了承を得た者のみの参加になります。勿論カオるんが呼びたい人は呼んでいただいて結構です」
「欲しい方が被った場合は?」
被らないだろ……どっちかと言うと、欲しい人が居ない場合のが多そうだぞ?何しろ津波で流れてきたゴミだからな。
「その時は当事者間での話し合いになります。平素ならオークション形式でと言いたいところですが、今の世の中、金額をつけられて現金を貰っても仕方がないですからね」
金など要らん。そもそも俺も勝手に頂戴した物だからな。
それからタウさんは何かの資料をそこに居たメンバーに渡していた。
「一応、1週間の期間を設けていますが、それで終わるとは思えません」
タウさんが大きく息を吐き出した。うん、俺もそれは思う。1週間で終わるかなぁ。
「参加者は基本アイテムボックス持ちになりますか? 持って帰れなければ意味がないのでは?」
「そうですね。メインの参加者は勿論そうですが、知り合いのボックス持ちを連れて来ても良しとしましょう」
「そうですね。香に運んで欲しいとかの図々しい参加者は退場願いたい」
「タダで貰って、かつ、うちまで持ってきてとかダメ! 父さんはそんな事しないからね!」
マルクが何気に会議に参加しとった。何か俺より理解してるっぽいぞ。
ぼぉっとしている俺をよそに色々決まり、早速あちこちに連絡を入れたようだ。




