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233話 西へ①

 俺たちは小型基地を設置しにいよいよ西へ向かう。


 アネとゆうごは北海道に残る。何かあった時の緊急要員だ。それからカンさんも仲間と一緒に苫小牧に籠り作業を続けている。

 今回西へ向かうのは、タウさん、ミレさん、俺、マルクの4人がメインのメンバーだ。


 そこにサブの移動班が加わる。走れそうな地上を移動の時は車班のカセが、海上の時は河島を呼ぶ手筈になっている。




 茨城から西で、小型基地を既に設置してあるのは埼玉、八王子と名古屋の3ヶ所らしい。



「どうすんだ、タウさん、どこから置いて行く?」


「千葉、神奈川、静岡はかなり削られてしまっています。津波の被害が酷い。置く場所が難しいかもしれません」


「となると、茨城と繋げるとしたらもっと内陸の山梨、長野、岐阜あたりか」


「12個あんだよな? それ全部が茨城と繋げるのが目的か?」


「そうですね。LAFを繋げたい、それもありますが西側と連絡を取りたい。岡山のゴンザレスさん、広島の濱家さんと繋げるのが最優先でしょうか」



 ミレさんが日本地図を眺めて何かを数えていた。



「うん、ギリギリ足りそうだな。山梨、長野、愛知の端、三重、奈良、大阪、ここまでで6。兵庫、岡山、広島もデカイから兵庫に2、岡山1の広島2で5個か。11で何とか茨城と繋がるだろ」


「そうですね。余ったひとつは途中で考えましょう」


「問題はどう進むかだ。道は3つ」


「ええ、①八王子から西へ向かって内陸を進む。②愛知へテレポートをしてまずは西を目指して、帰りに東へと繋げる。③船で一気に島根を目指して上陸、そこから山を越えて広島へ、その後に東へ向かう」


 タウさん、ミレさん、マルクは地図を睨んでいた。俺は地図は見ない。だって地図というやつは一見すごくわかりやすく見えるが、実際にそこに立つと全く合致しない。(あくまで俺にとってだ)


 紙の上の道と目の前の道、どうやって合致させればいいのか俺にはわからん。

 スマホのマップもだ。アイツはぐるぐるまわりやがる。ジッとしてくれ!


 なので俺は①②③のどれが進みやすいとかはわからない。

 どれがいいか、ふぅむ。茨城のLAFと繋がればエントの危機からは免れる。エルフになれるからな。


 でも今はエントによる危機よりもゾンビや獣からの危機の方が深刻だろう。

 それに俺らは、見た事も会った事もない国民よりも、やはり知り合いを優先したい。


 つまり、ハマヤンやゴンちゃんを探したい。助けたい。

 としたら、取るべき道は…、



「そうでした。3番ですね。まずは広島に、そして岡山へ。そこで友人を救いそれから茨城のLAFへ繋げる。確かにその通りでした」


「そうだな。となると船で島根へ一直線か。苫小牧から出港して日本海側を通り島根だな」


「日本海側は他国からの脅威もありますが、あのスピードのフェリーなら大丈夫でしょう。ミサイルが来たら私の精霊に落としてもらいます」



 え、ミサイル来るの?どこの誰だよ!こんな災害時にミサイル撃ってくるやつは!



「そんときゃ俺もメテオ落とすぜ」


「だな。カオるん、俺が許す。やっちまえ」


「す、凄いねぇ。日本海には魔王が居るの?」



 マルクが変な勘違いをしていた。



「違うぞ? 魔王なんてカッコいいもんじゃねぇ。こんな状況にも関わらず攻撃してくるバカはさんしたのチンピラだ」


「そうなんだ。サンシタってなぁに? 父さん」



 え、困った。何だろ?さんした?さんした……3下?



「3つ下、つまり魔王の位より3つ下の部下の事だ(たぶんだが)」


「魔王の三つ下……魔王の下って何だろう……」


「魔王、副魔王……、魔王…補佐? 魔王係長、魔王代理。うーん、何だろうな?魔王に知り合いが居ないからな。父さんわかりません」


「そっか」



 俺はわからない事はちゃんとわからないと言う事にしている。偉ぶって嘘を教えてはいかん。



 俺たちは苫小牧へ向かい、そこで河島らを拾ってフェリーで日本海側から島根へ向かった。

 もちろん、酔い止めを飲むのを忘れなかった。



 河島は顔見知りになった精霊に海図を見せて行き先を説明していた。

 精霊が俺を見たので俺は頷きつつ告げた。



「最速で島根へ頼むぞ」



 ひぃぃぃぃえぇぇぇぇぇぇいぃぃぃ

 嘘です、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃ

 空飛んじゃダメ、飛ぶの無し。フェリーって飛ぶ機能付いてないから!せめて海面スレスレでお願いします。



「カオるん、中へ入った方が酔わないですよ。それにこのくらいスピードがあった方が上下しなくて酔わないと思います。景色を見てはいけません。どこか窓の無い個室に居てください」



 タウさんが言うのと同時にマルクに腕を引っ張られてどこかの部屋に入った。

 窓がない。良かった。見えない。あと、上下しないからうん、大丈夫っぽい。



「スマンな、父さん、島根に着くまでここに居るからな」


「うん、僕も一緒に居るね。キヨカお姉さんがね、乗り物酔いって人によってなる人とならない人がいるって言ってた。そんで酔う人は大変なんだって。身体の中身がグルグルになって、口から内臓が出ちゃうんだって。怖いね。父さん大丈夫?内臓出ちゃいそう?」



 マルクがヒールをかけてくれた。ありがとう。

 ベッドに腰掛けて酔いが治まっていくのを待つ。マルクも隣に腰掛けていた。



「退屈じゃないか?」


「大丈夫。最近父さんと一緒の時間が少なかったから、たまにはいいの!」



 そう言われるとそうだな。作業もゲームも仕事のようなものだからな。純粋に休暇を楽しむ事はなかったかも知れん。

 うちはホワイトとか言いながら、息子にとって父親の俺が1番ホワイトではなかったな。反省。



「何か音楽でもかけるか?」


「ううん、音楽はかけない。ミレさんが言ってたんだけど、酔ってる時って音楽は頭にガンガン響くからダメだって」



 ん?……それは酒酔いでは?



「あとね、本読むのも小さい字を見てると気持ち悪いのが悪化するって。それから、ええと、そだ、翔ちゃんがね、酔ってる時はオレンジジュースはダメなんだって。小学校の遠足バスでジュース飲んで余計に吐いた子が居たって言ってた。カンタおじさんは梅干しが良いかもって言ってた。父さん梅干し食べる? 僕、持ってるよ?」


「ああ、ありがとう。もらおうか」



 マルクがアイテムボックスから取り出したのはカリカリ梅だった。想像と違ったが、まぁこれも梅干しだからな。

 ふたりでカリカリカリカリした。



「種はちゃんと出すんだぞ?」


「はーい、ふふ、難しいね、種噛んじゃうね」



 いつの間にかベッドに転がってふたりで昼寝をしていたようだ。上下に激しく揺れて目が覚めた。



『スマン、寝てた』



 タウさんらに念話を送った。



『大丈夫ですよ、そろそろ島根なので着水していただきました。この先は海を走るので揺れます。もう少し寝ていてください』



 そう言われたが目が覚めてしまったらもう眠れない。そして揺れをダイレクトに感じる。

 酔わない酔わない酔わない……。


 酔うと思うから余計に酔うんですよと、前に誰かに言われた。それで酔わないと自分に言い聞かせているのだが、言い聞かせている時点で『実は酔います』と思っちゃってる自分がいる。


 しかし酔う前にどうやら到着したようだった。助かった。


 島根のどこそこに俺たちは上陸した。ブックマークをしてから河島達を苫小牧へ送り返した。

 ここからは馬で行くようだ。



「かなり削れているがこの先が186だと思う」


「そうですね、186号を広島方面へ移動しましょう」


「父さん、この火山灰溶けるよ?」



 空からチラチラと落ちてきていた白いものは火山灰ではなく雪だった。そう言えば北海道に比べてかなり寒い。



「雪だが火山灰混じりだな、マルク、食うなよ?」



 ミレさんがマルクに注意をした。

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