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227話 噛まれておくべきか⑤

「やった!魔法でも成功ですね」


ドクターは大喜びしていたが、その日の午後に連絡がきた。ウィズ魔法のブレスドは4時間で効果が切れたそうだ。

 ああ、異世界でも確かそんくらいだったかもな。ゲームの15分だかに比べたら長いが、今回のリアルゾンビ対応には大して使えんな。


 

 ゾンビ出現の情報はあちこちから舞い込んだ。北海道でも茨城でも、その他の地域からもだ。

 と言ってもネットが繋がる地域からなので、実際はもっと発生しているだろう。



 ゾンビは『祝福』が受けられる拠点近くではなく、それ以外の地域で活発化していった。

 自衛隊はすぐに、建物から出ないようにネットに情報を拡散していた。


 うちの苫小牧も、自宅が近所にある人は自宅へ戻った。遠くから来た人はテント村に隠れている。

 テントって隠れられるもんなの?ホラー映画だとテントって全然ダメだよな?


 拠点にスペースがあるなら入れるべきか悩んだ。だが、不思議と誰もそれを言わない。「カオさん、中に入れてあげましょう」と1人ぐらい言ってくるかと思ったが、皆、口をつぐんでいる。


 拠点を預かる盟主として、俺の口から言うのを待っているのか?だが最初に口をきったのは春ちゃんだった。



「香、ここは僕らの拠点です。香は盟主ですが、領主ではない。彼らは香の領民ではないのですよ」


「そうだぞ。拠点の外にテント村が出来るのは勝手にさせてたが、あくまで勝手にやってたんだ。俺らがテント村を招いたんじゃねぇ」


「そうです。自分の身は自分で。今の時代、それは鉄則です」


「まぁ、カオさんの事だからあそこで襲われ始めたら飛んでいくんだろうが、それは止めねぇ。俺らも一緒に行く。だが、それとアイツら全員を拠点に避難させるのは別問題だ」


「それに自衛隊の方でも色々考えているようです」



 俺は皆が色々考えていた事に驚いた。俺は皆から冷たいと言われる事が怖くて、外の人達を拠点に入れるべきか悩んでいた。

 俺が考えなくちゃならないのは、どう見られるかではなく、仲間の安全だ。


 全てを救うのが無理ならば、どこかでの線引きが必要となる。その線引きを考えるのは俺の役目、その線引きの結果を受け入れるのも俺の役目だ。



「うん、そうだな。すまん、ありがとう。…………俺は、子供達は拠点に避難させたい、と思ってる。あ、反対意見も言ってくれ。俺はいつも考えが浅いからな」


「そうですね、事が起こった時に子供の避難は時間がかかるでしょう。ある程度の期間限定として子供の避難所を拠点内に作りますか?」


「ですが、親と離れたがらない子も居ると考えられます」


「それはそれでいいんじゃないか?無理に引き離して保護してやる義務はねぇ」


「妊婦さんも出来れば保護したいと思います。いかがでしょう?」


「そうだな、1番ちっせぇ子供だからな、腹に居んのは」


「自衛隊に協力を求めましょう。確かテント村の名簿を作成していたはずです」


「拠点で今空いてるのはどの区間ですか?」


「結構空いてるよな? この拠点は地下4階まであるが、使ってるのは地上と地下1までだ」



 そうだった。初日に見て回った時は確かに地下4階まであった。地下1階の奥から、例の湾に出る通路があるので、地下1で生活している。



「各班のメンバーの身内や知人はまだ連れてきてないんだよな?」


「拠点が落ち着いた来年あたりからピックアップして招いてもらう予定でした。次から次へと起こりますから中々……」


「香のエリアテレポートが必要となる。が、香の手が中々空かないのが現状だ」


「そうなんすよ、カオさんがもう2〜3人欲しいっすね」


「今回のゾンビ騒動でもまたカオさんの引っ張り凧になりますよね」



 そうだよなぁ。でも、各班のメンバーになった奴らだって家族や身内は近くに呼び寄せたいだろう。ましてや国内のあちこちでゾンビが発生し始めている今、気になって仕方ないはずだ。

 拾いに行ってやりたい。



「カオさん、俺らの事は置いておいてまずは目の前の火の粉です」


「そうですね、早速、自衛隊と相談して15歳未満の子供の受け入れを申し出ますね。夏休みのお泊まり会の感じにします。それと妊娠中の女性」


「あぁ、さっき親と離れたがらない子供は除くと言ったが、保育士としてお母さん方も募集しよう。ただし、全員ではない。そこは自衛隊の方で選別してもらう。文句が出るようならお子さん共々お引き取り願う。こちらは善意で行うのだから義務はない、ってとこでいいか?」


「はい。部屋は地下2階で大きそうな所をそれ用に解放しましょう」


「保育所とか幼稚園みたいなイメージだとわかりやすいな」


「もしも保育士の資格持ちが居たら率先して雇ってくれ。保母さんでも保父さんでもだ」


「教師も雇いますか?」


「そうだな、先生も居てくれるとありがたい。が、小学校までにしてくれ」


「何故ですか?」


「別に授業をしてもらうわけじゃない。子供の相手が得意な者を望む。学校を創りたいわけじゃないからな」




 苫小牧拠点は外の自衛隊と協力の元、着々と態勢を整えていった。他の拠点も其々『ゾンビ対応』を考えているようだ。

 ミレさんは拠点の近くにゾンビが出た時に、バフォ変身を試したそうだ。



「いや、だってさ、あっちの世界ではバフォ変身有効だったじゃん、だから俺変身して向かっていったんだけどさ、全然ダメだった」



 え、そうなん?

 地球のゾンビはバフォメットを怖がらないのか?うわぁ、ショックだ。俺もゾンビワキワキになったらバフォ変身だぁ!と思ってたのに………。



「……で、どしたん? ゾンビ倒した?」


「ああ、普通に剣で斬った。縦に真っ二つ。俺魔法つかえないからさ、ダークエルフだから。最初に心臓に穴開けたけど全然効果なかった」


「そっか……、元から死んでるからな。心臓は止まってたか」


「で、脳天から真っ二つにした」


「死んだ?」


「それがさぁ、右半身と左半身がそれぞれうにょうにょと動いてやがるんだよ!キッショい」


「そりゃ、キショい。じゃあゾンビの弱点ってどこなん?」


「触りたくないし剣も汚したくないからさ、そこらに転がってたデカイ石を頭に落とした。右半身の頭に」


「うん、で?」


「右半身は動かなくなったけど左半身はまだウニョってたんだよ、いい加減にしろって感じだ」


「えぇぇぇぇ」


「で、左の頭にも岩を落としたった。左も大人しくなった」



 ミレさんはその情報をタウさんは勿論、棚橋ドクターや自衛隊にも流したそうだ。


 結果、ゾンビに1番有効なのが『火』、火だるまにする事。

 ただし、それもウィズ頼みになってしまう。


 火の精霊が使えるタウさんやサンバだが、ゾンビが大量に集まっている時にはその力を発揮するが、人とゾンビが入り乱れているような場所では使えない。

 火の加減が難しいと言っていた。


 では『火』の次に有効なのは、と言うと、ミレさんの戦いが役に立った。

 ゾンビウイルスは死体を動かしているようなのだが、全身に回ったウイルスに指示をだしているのは、脳に取り憑いたウイルスらしい。


 ただし、脳を半分に切っただけでは問題なく動いてしまう。と言っても身体半分では歩くと言うバランスは取れない。

 だが、死んだ(消滅した)わけではないので、転がった状態で通りかかったものに噛み付く。


 首を落とした場合も、頭と身体、それぞれが動いているが、身体は人に噛み付く器官がなくただうろつくだけ。

 落とされた頭もその場で口パクだ。



「脳を潰せば攻撃は無くなりますが、結局身体は燃やさないと体内に侵入しているウイルスが無くなりません」



 ドクターの結論だった。



「しかし、それは恐ろしい結果ですね。もしも海外でも同じ事象が起こっているとしたら、『燃やす』のを得意としている国は多いです」



 タウさんはいつも以上に深刻な顔つきになっていた。



「タウさん……それって」


「ええ、核を使うでしょうね。持っている国は多い。一気に焼いて掃討する、某国達がやりそうな事です」


「そりゃマズイな。ここまで荒れてる地球に、本格的に核の冬がやってくるぞ?」


「それって放射能の雨が降るって事ですよね」


「いや、氷河期だ」




 ミレさんもカンさんもゆうごもドクターも皆、難しい顔になってしまった。

 日本が核を使わなくても地球上のあちこちで使われたらアウトだ。そして恐らく100%使うだろうとタウさんは断言していた。 



 日本は使わなくとも……、地球は。

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