225話 噛まれておくべきか③
苫小牧拠点で、リアルステータス持ちは、俺、マルク、キヨカ、翔太、カセ、クマ、ナラの7人だった。
そこに、春ちゃん、河島、ウカワ、洸太、朝陽、湊斗の6人が加わった。
良治や芳樹達はまだ出ていない。最近加わった人達もだ。
「香、政治兄さんもステータスが表示されているそうです。気になったので今スマホで連絡してみました」
春ちゃんにとっての『政治兄さん』は、俺にとっては政治叔父さんだ。政治叔父さんは今、大雪山拠点にいる。
叔父さんは『養老の砂漠』に入り、養老のメンバーと共に大雪山拠点で作業をしているのだ。
養老の砂漠は現在加入している全員がリアルステータス持ちだ。
……何故だ。納得が行かない。
子供らは、成長期で身体も柔らかく吸収しやすい……から、祝福を吸収出来たと思った。
なのに、身体はカチコチで成長期も遥か昔に終わったジジ達が……?謎すぎる。
納得はいかないがとりあえず、会議が終わったら俺と春ちゃんは大雪山へフレンド登録に飛ぶ事にした。
「本日の会議はこれで終了といたします。が、各班で生活魔法の訓練とステータスの詠唱をこまめに行う事を推奨します」
「そうだな、いつの間にか出ていそうだし」
「それから、現在既に生活魔法が使える皆さんも、積極的に使用する事をお薦めします。目に見えませんが生活魔法にも確実にレベルや経験値は存在すると思います」
そうか、そうだよな。マルクも風は使えなかったが訓練して使えるようになったしな。
俺も胡座をかいていずにスキルも生活魔法も使っていかねば。
他の拠点からもポツポツと生活魔法が使える者が増えていった。リアルステータスは中々思ったように増えない。
何がキッカケで増えるのだろう。自衛隊員のステータス持ちはどうやって増えたのだろう。
そんな事をゆっくり考えられる時間も減っていった。と言うのも、各拠点の近くや、自衛隊が管理している地域でも『点滅者』が増えてきたからだ。
呼び出しはネットで受けてキヨカが管理してくれている。ブックマークで飛んで清掃をするだけ、と気楽に考えていたが案外そうではなかった。
と言うのも、ブックマーク先で点滅者が待っているわけではない。点滅者の待機場所は、ブックマーク先から近くても移動に数分はかかるし、遠い時は車や徒歩で1時間とかもあった。
救急車が通れる道がある場所ならともかく、発熱や倦怠感の患者を歩かせるわけには行かない。俺が歩く事になる。
勿論、検問所で引っかかった場合でも、俺は全ての検問所のブックマークがあるわけではなかったからだ。
自衛隊の車での移動が多かったが、思った以上に時間は取られた。そして点滅者の発生もどんどんと増えていった。
「他に清掃を使える方、居ませんかぁぁぁ」
そう叫びたくなった。
各拠点でも点滅者は出始めた。
俺は呼び出される都度、『清掃』を行っていた。
タウさんは俺の苦労を見て、他に何か手がないかを探っていたそうだ。
そこで発覚したのがムゥナの死霊の森ダンジョンのボスドロップだった。
「え? ネックレスとイヤリング?」
「そうです。ダンジョンボスへは僕らも何回か通いました。カオるんほどではありませんがドロップを持っていましたので試しました」
「でも、あれ、ネックレスがアンデッド浄化で、イヤリングが祝福だったよな? 俺ちゃんと詳細を読んだぞ?」
「はい、そうです。アンデッドの浄化と、味方に祝福、その通りです」
「どっちも使えないよな?点滅者はまだアンデッドじゃないからターンアンデッドをしても仕方ないし、味方にブレスドをかけたからって戦うわけじゃないんだから……」
「そこです」
どこ?
「私達はちょっとゲーム脳になりすぎていました。ゲーム脳と言うかLAF脳かな」
LAF脳?どゆことだ?
「アンデッドの浄化と詳細にあったのをLAFに当てはめて、アンデッドのモンスターを浄化すると考えました」
浄化出来ないん?
いや、俺普通に魔法で『ターンアンデッド』あるからネックレスは使った事ない。
「勿論、それとしても使えるでしょう。ですが、モンスターとは書かれていません。アンデッドの浄化です。もしもあのゾンビウイルスがアンデッド系のウイルスなら……、そう思い、点滅者に使ってみました」
マジか……、で、どうだった?
「使えました。ウイルスのアンデッドは浄化されました」
マジかマジか、すげぇ。ネックレスも凄いが、タウさんもすげぇ。いや、あのネックレスをくれた死霊の森のボスも凄え。
「イヤリングですが、祝福では点滅は治りませんでした。ただし、面白い事が判明しました。人間では実験が出来ませんので、茨城の棚橋ドクターに協力をお願いしました。マウスを使った実験ですが、祝福をかけたマウスがとゾンビ化したマウスに噛まれてもゾンビ化しませんでした。と言ってもまだ数日の確認なので現在様子を見てもらっています」
「イヤリング……祝福は、ゾンビウイルスを弾くって事か。でも、あれ5回しか使えなかったんだよな? 祝福がどんくらい保つかわからないけど、圧倒的に足りなすぎるな……残念だ」
「それがそうでもないんですよ、カオるん。私達はそこもまたLAF脳で考えていました。ゲームではブレスド系は30分、異世界では数時間。このボスドロップの祝福をかけたマウスは、現在もまだ祝福中だそうです。かなり長いです」
「……何日? てか、マウスに祝福がかかったままってどうやって判断したんだ?」
「6時間毎に、ゾンビ化したマウスに噛ませてます。既に72時間は経過しました。」
72時間…3日か。つまり祝福は3日は保つ。勿論マウスの実験だから人間だとどうかわからない。
だが、魔法よりだいぶ長く保つ気がする。
それと、何度でも弾く。一度アンデッドウイルスを弾いて終わり、ではないのか。
「人に使えるとしても、1日に5回…5人が限度。ですが、ないよりはマシです」
ここでタウさんが俺に深く頭を下げた。
「いつもいつもカオるんに頼ってばかりで申し訳ない。カオるんはこのアイテムを幾つお持ちでしょうか? 苫小牧拠点で使う分を除いて、提供出来る物はありますか?」
あ、やめて、頭を下げないでくれ。ええと、えと、幾つあったかな。ネックレスが10個、イヤリングが16個だ。




