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217話 洞窟で③

 茨城の拠点から『点滅』の連絡がとうとう来てしまった。



「拠点の外じゃなくて中にか? 拠点の中に? 中に?」



 俺は同じ質問を3回繰り返した。それくらい驚いた。

 なんとなく拠点の中は安全と思っていた自分がいた。もしも『空気感染』なら拠点の中も無事ではすまない。

 だって拠点は完全密封ではないからな。


 だが、シェルターは完全密封っぽいイメージだったが、地上より先に感染者が出て一気に拡大した。

 つまり『感染源』はシェルター内に居た?



 とにかく直ぐに茨城洞窟シェルターへ向かうように言われた。茨城洞窟拠点の本部へとテレポートをするとそこにはタウさんとミレさんのふたりが居た。

 俺はマルクとキヨカはおいてきた。



「余計な感染者を増やしたくないですから。少人数で行動します」



 本部を預かっていた血盟の者も数名がそこに居た。



「黄色点滅者は、一定のエリアに居てもらってます」


「まだ意識はあるのですか?……その、人としての」


「はい。一見全く普通の人と変わりません。若干の体調不良を感じているそうです。タウさんに言われて『マップ確認エリア』を通ってもらった時に発覚しました」



 マップ確認エリア?

 俺が不思議そうな顔をしたのに気がついたタウさんがわかりやすく説明をしてくれた。


 リアルステータスがある者がマップを展開して拠点内を見回るには広さ的にも無理がある。

 そこで1箇所にマップを展開した者を配置して、拠点内の住民にそこを通過させる案を出したそうだ。


 タウさんの小樽拠点でも現在試しているそうだ。

 メリットは、リアステ持ち一名がマップを展開して座っていればいいので、確認がラクだ。


 デメリットは、住民全員がどのくらいの頻度で『確認エリア』を訪れるか。それとエリア通過を義務にしても確実に全員が行ってくれるかわからない。


 そうだな、その確認エリアが近ければ毎日通れるが、遠くて面倒になり行かない人も出そうだ。

 そして行かなかった人の中から感染が広がったりするんだよな。



 タウさんの小樽拠点で行なっているそうだ。

 北海道の拠点は小さいからこの確認エリア方式は有効だろう。毎日の通過もそこまで不便ではない。


 と、そこまで考えた時にヒヤリとした。

 うちの苫小牧拠点……外が拡大しすぎだ。やばいぞ。

 いや、拠点自体のサイズは変わらんが、外周のテント村がやばすぎる。



 とりあえず1箇所に集められた『点滅者』に清掃かけて黄色の点灯戻ったのを確認後、俺達は大雪山拠点へと移動した。

 そこにはタウさんから連絡をもらった他のメンバーも集まっていた。



 集まったのはタウさん、ミレさん、カンさん、ゆうご、アネさん、そして俺と、マルクとキヨカも来ていた。

 マルクとキヨカは盟主ではないのだが、キヨカはホワイトボードへの書記として、マルクはパソコンへの書記として議事録を残す係になっていた。いつの間にか……。



 タウさんから茨城の状況が伝えられた。



「とうとう洞窟拠点でも『点滅者』が出てしまいました。とりあえず正常に戻しましたが棚橋ドクター預かりにしています。今後の状態を診てほしいのと、感染への要因も探ってくださるそうです。それとご家族の感染状態も診ていただくため、家族ごとに病院の大部屋で隔離になるそうです」


「病院だと他の患者に感染したらまずいんじゃないか?」


「そこは大丈夫だそうです。重篤な、と言ってもそこまで重篤な患者は現在居ないそうですが、その方達は地下の病室です。シェルターの反乱の時に病室を移してまだそのままだそうです」


「じゃあ、今回の点滅者は地上の病室に?」


「ええ、最上階だそうです。もしゾンビ化した場合、そのフロアより下へは移動できないだろうと」



 俺のゾンビのイメージは、屋上からでもぼとぼとと落ちてきそうだ……。大丈夫なのか?



「で、今のところ点滅者って何人出たの?」


「3人です。それぞれ近しい関係の方ですね。拠点の外に実家があり元から茨城に住んでいらして、洞窟拠点に来た3家族です」


「3家族で3人って事は、それぞれの家族に点滅者が出たんか。家族内で感染はしなかったのか?」


「そこはこれからドクターが気をつけて診てくださるそうです」



「……3人の共通点は、同じ村の同じ地区出身」


「カオるん、洞窟拠点は半分以上が同じ村同じ地区出身ですよ、僕も翔太もです」



 そうだった。元はカンさんちの村にあった洞窟に拠点を作ったんだからな。



「それ以外の共通点か……」


「年齢、性別はまちまちです」


「俺らそこまで村の人と親しくしてなかったからなぁ」


「しょーがないじゃん。私ら忙しかったんだから」


「そうですね。私達は自分の出来る最大限の事を行ってきました。それは責められる謂れはないです」


「アネさん、ミレさん、だいじょーぶだ。誰も俺らを責めてない」


「そうです、カオるんの言う通り。村のもんはみんなに感謝こそすれ、恨む者はひとりもいませんよ」


「自分が出来なかった事を挙げ連ねても意味はない。俺に出来ない事は山ほどある! ……昔は出来ない自分が恥ずかしかったが、今は出来る事をちゃんとやれる自分を、俺は誇りに思ってる。ミレさんもアネさんも、俺よりずっと色んな事が出来るしやってきてる、俺は凄いと思うぞ?」


「僕も、ミレおじさんもアネッサお姉さんも凄いと思う!泣かなくていいの」


「な、泣いてないわ」



 アネさんが目元を擦りながら言った。

 アネさんは自分が出来ない事が悲しくて涙が出たんじゃなくて、きっとマルクの言葉に感動したんだと思う。さすが、我が息子よ。



「違うからねっ!カオるん!」



 アネよ、素直になりなされ。



「カオるんのくせに!カオるんの分際でぇ!」



 すまん、意味わからん。ふふふん。



「点滅者や赤、つまりゾンビへの感染源や感染経路はまだ不明のままです。各拠点でも新しい方を迎え入れているかと思いますので、マップ確認を怠らないようお願いします」



 ああ、そうだ。どうしようテント村……。あとでタウさんに相談しようかな、怒られそうだな。



「カオるん? 何か話があるのならどうぞ?」



 ぎゃーっ、見つかった。と慌てていたらカンさんが話してくれた。



「あの、苫小牧拠点なんですが、周りに現地の住民が集まり生活の場が出来始めています。確認エリアを作ってもそこに配置するメンバーがまだ足りなくてどうしようかと、カオるんと話しているところです」



 うおぉぉ、ありがと、カンさん!

 するとおずおずとゆうごも話始めた。



「あの……うちの函館拠点も、前は僕らが居たロープウェイ避難所に居なかった地元民が集まって来ちゃって。まだ北海道にLAFが繋がっていないから人を増やせないし、リアステ表示も難しいでしょ?」


「ああ、だねぇ。うちんとこの富良野もボチボチ集まって来てるな。拠点は地下だから拠点を目指してと言うよりも火山灰の無くなった大地を目指してって感じだな」


「あ、スマン、俺が灰をはらったからか」


「ちゃうちゃう、カオるんの精霊には感謝してる。地面が出たおかげで今後の農業についても話し合いを始めてる。問題は寄ってくる避難民だよな。仕方ないんだがな」


「うちは大丈夫よ。札幌は結構都会だからカオるんのお陰で綺麗になったわ。車も通れるように道の整備もしてる」


「道の整備? 誰が?」


「自衛隊や地元民に決まってるじゃない。自分達の土地なんだから自分達の手で頑張らないとね」


「そうか、そうですね。各拠点の近場の自衛隊や警察、消防と連絡を取り利用……利用と言う言い方はおかしいですが、私達だけが苦労するのはおかしい。そこら辺もどんどんと活用していってください」


「そうだな。カンさん作の小型基地で道内は完全に連絡網が復活しているからな」


「あとは、なおさらLAFを復活させたいです。ネットは繋がるけれど、LAFのサーバーへの繋がりがまだ壊滅的な状態、以前の函館の時同様、画面フリーズ状態が殆どです」



 ゆうごのあの頃の苦労が今わかる。うちのトマコでもパソコンルーム(ゲーム部屋)は作ってもらったのに、使えない状態だ。


 茨城のシェルター反乱(実はゾンビ氾濫)がなければ、毎日茨城へ送迎してゲームをしてもらってもいいのだが、ちょっとなぁ。せめて感染源とか感染経路がハッキリすれば……。



「北海道と茨城の通信を繋げる事を最優先としますか。たしか現在は岩手までは基地を設置していますよね。カンさん、小型基地の作成はどのくらい進んでいらっしゃいますか?」


「完成品はまだ5基のみです」


「岩手と言っても岩手の最南端に設置したんだよな? それ以前に福島、宮城には設置してねぇから、茨城から岩手も通じんよ」


「山形、宮城、岩手、秋田の4県のちょうど境目あたりでしたよね、おいたのって」


「そう。本来なら県の中央に置かないと県内を網羅出来ない」


「しかも福島、宮城、岩手、山形、秋田の5県はいずれも広い。1基置いただけでは間に合わないかも知れません」


「でもさ、カンさん、今5基あるんだよな? それなら各県内よりも縦に繋げて先に北海道に届くようにしないか?」


「そうですね。日本中の通信を復活させる事が目的ではありません。いずれはそれが出来れば良いと思いますが、1番の目的は自分達の安全、自分達の身内の救助、自分達に必要、それが大前提です」


「俺さ、北海道を色んな理由で周った時にずっと思ってたんだけど、北海道ってさ、自衛隊も民間人もなんか元気なんだよ。いや、大変なのはちゃんと大変で……ちゃんと大変って言い方は変だな。ええと、そうだ、へこたれてない。うん、へこたれてないんだよ」


「そうですよ、カオさん。だって僕らは試される大地の民ですから!」


「うん、そうだな!試されて勝ち残る民だ。……でだな、何が言いたいかって、まずはへこたれてない人を助けてそこからやる気を感染させた方が人間が生き残りやすいと思う。大変で辛くて項垂れてる人を助けても俺ら……俺には抱えきれないんだ。だから一緒に頑張れる人をまず助けたい。……あ、俺の……考えっつか、その……」



 あぁぁ、独り言がデカい独り言になってしまった。そしてみんなが呆れている。大人の立派な発言が出来んかった。

 スマン……俺、モブだから。しかも精神年齢小学生くらいの…。



「そうです。私が言いたかった事をカオるんが言ってくださいました。私達は不思議な力を授かったからと言って神になったわけではない。大統領でも総理でもない。私は『全人類のために』などとは言いません。『自分のために』『自分の家族のために』『自分の友達のために』、私を動かすのはこの3つです」


「うん、俺もそうだ。だからタウさんに付き従って来た。同じ考えだぜ」


「私もよ。偽善とか大っ嫌い」


「僕もです。僕も翔太と自分のために、そして信頼できる仲間のために」


「僕もです。タウさんの月の砂漠に入って良かった」



 ゲームを途中でやめた俺はちょっと言いづらいぞ。でもきっと言わなくとも皆はわかってくれる気がする。



「では、まずは小型基地の設置、そしてここ北海道でもLAFが出来るようにしましょう」


「タウさん、茨城のLAFサーバーは大丈夫か?あそこで点滅が始まったらまずいぞ?」


「大丈夫です、キングジムさんらにも今回の件はしっかり伝えてあります。彼らはステータスが使えますので常時お互いに確認しあっているそうです。何かあったらすぐに連絡が来ます」



「と、まずはここ北から下へ向かって進んでいくか」


「そうですね。青森に一つ目、岩手の中ほどに二つ目、岩手の最下部には既に設置済み、宮城の中ほどに三つ目、福島の上部に四つ目、福島と茨城の境目あたりに五つ目、これで北海道と繋がれば良いのですが」


「距離的にどうだろうな、ちょっと難しいかも知れないな」



 ミレさんが顰めっ面になっていた。



「では、僕らがブックマークを進める間にカンさんには製作を続けていただきましょう。岩手にもう1箇所置く感じでつめて行きます」


「そうだな、そのくらいなら……」


「メンバーはどうするんですか?」


「カオるんは必須で、恐らく内陸の山間を進む事になるでしょうから馬持ちは参加必須ですね。私、ミレさん、マルク君、カオるんの4人で行きます」


「あの、私は……」



 キヨカが素早くタウさんに聞いた。



「今回マルク君の馬王にカオるんもタンデムしていただきます。申し訳ありませんがキヨカさんは留守番でお願いします。ゆうご君は北海道で留守の拠点を回っていただきたい。アネさんは茨城の洞窟と病院周りに赤が出た時の対処を。カンさんは拠点で作製を続けてください」


「キヨカ、トマコ拠点のあとを頼んだ。何かあったら直ぐに知らせてくれ。それと出来たらテント村もちょっとだけ頼む」



 悔しそうな顔をしていたキヨカだが、自分の中で折り合いをつけたようだ。


 俺たちは早速の出発になる。

 一応、各拠点内での引き継ぎ等も考えて1時間後に集合となり解散した。

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